- 森岡 篤
- 有限会社パルティータ 代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
今回の坂倉展の展示内容は、坂倉が半世紀近く前に設計した設計図、模型、写真という地味なものです。
私の行った時の客のほとんどが、建築デザイン実務者、建築学課の学生、研究室メンバー風で解説し合うグループと、建築関係者ばかりで、一般のお客さんはほとんどいませんでした。余程の建築好きでないと、おもしろくないかもしれません。
展示の模型を見ていたら、中でも一際端正で美しい模型を見つけました。
この県立近代美術館の模型でした。
そうか、全体像で見ると、こんなにきれいなプロポーションなのか。図面を見てみると、平面図も立面図も、やはり美しい。
解説を読んでみると、この美術館は非常に予算が厳しかったそうです。
考えてみれば、竣工が終戦後6年目です。ということは、計画されたのは、戦後間もなくの時期、お金があるはずがありません。
この美術館は、鉄骨造です。
現在の鉄骨造は、H形鋼やボックス形鋼などが使われますが、昔は数量を減らすため、トラス梁が用いられました。
ここでは、全てがL形鋼によるトラスで構成され、経済設計が想像できます。
初印象で魅力の感じられなかったこの外壁材料も、きっと苦渋の選択だったのでしょう。
写真は、2階ホールから見た中庭