- 森岡 篤
- 有限会社パルティータ 代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
外部仕上を考えてみましょう。
建物外部は風雨にさらされ、季節や日照による温度変化を受け、とても過酷です。
少しのメンテナンスで済むことをメンテナンスフリーといいますが、全く手入れ不要、という材料はありません。
メンテナンスフリーの材料は概して高価です。
例えば、石(御影)やレンガ積みの壁は、経年変化が少なく、メンテナンスの楽な材料ですが、イニシャルは高いです。
タイルの外壁はメンテナンスフリー、とよく誤解されていますが、決してそうではありません。
タイル貼り工法は、古くから研究されてきましたが、現場で貼るタイルはどの工法でも、いずれはタイルは落下します。
浮きタイル調査・対策で、落下防止はできますが、浮きタイル処理にも高額の費用がかかり、タイルのメンテナンスコストは高いです。
金属系でメンテナンスの楽な材料は、ステンレス、銅板などです。
外部に使う金属でやっかいなのは、「鉄」です。
鉄の赤さびは体積が膨張するので、被膜のわずかなキズでもサビが発生し、膨張のため、被膜が剥がれてしまいます。
溶融亜鉛メッキした鉄は、亜鉛が錆びることで鉄を守り、高耐久となります。
皮膜だけの塗装と異なり、化学的性質(電食)でサビを防ぎ、少々のキズがあっても鉄が錆びることはありません。
住宅でもおなじみのガルバリウム鋼板、ZAM鋼板も同じ原理(より強力)で鉄を守ります。
メンテナンスコストは、納まりでも影響を受けます。
日本は雨が多く、屋根の軒の出が深い建物が汚れにくいです。
パラペットに笠木をつけるかどうかは、デザインにも影響しますが、外壁上部でほんの数cm水を切るだけで、外壁汚れも大きく変わり(軽減)ます。
このように、材料の選び方や納まりでイニシャルコストだけでなく、メンテナンスコストに影響が出ます。