廃棄物処理政策に関して検討されている論点(5) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月19日更新

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廃棄物処理政策に関して検討されている論点(5)

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

処理困難廃棄物




 廃棄物処理法の定義では一般廃棄物に当たりながら、市町村の廃棄物処理施設では適切に処理できないものがたくさんあります。

 一例を挙げると、ベッドのスプリングマットがそうです。

 スプリングマットは、大人一人が横になれる大きさがあるため、市町村の処理場まで運搬すること自体が大変です。

 持ち込んでからがまた大変で、そのままの大きさでは焼却炉に投入できないため、切断処理をしなくてはいけません。

 しかし、マットの中に入っているスプリングは非常に硬いものなので、切断をする機械の刃がすぐ傷んでしまいます。

 本来なら、家電製品や自動車と同様に、リサイクル法を作って製造メーカーに処理を義務付けたいところなのですが、後述するように、スプリングマットの製造メーカーの半数以上は海外メーカーであるため、製造者責任を追及することが容易ではありません。 


 中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、現行の廃棄物処理制度の問題点として、「処理困難廃棄物対策の推進」が議論されました。

適正な処理が困難な廃棄物の対策の一層の推進
 適正処理が全国的に困難となっている一般廃棄物があるかを把握し、その処理方法を検討するべき



 その後、数回の会合を経ましたが、結局これといった解決策は出ませんでした。

 流通している製品の量と、市町村の廃棄物処理態勢を照らし合わせると、今すぐ問題の解決に取り組んだ方が良い課題なのですが、具体的な議論自体がまだできていないのが現実です。


 現状の把握と今後の方針という意味で、第9回の専門委員会では、下記のような論点整理の方向性が示されたようです。
 ※8月4日現在で、第9回委員会の議事録が公開されていませんので、当日の配布資料から該当する部分を抜粋しておきます。

 廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)
1.現状と課題
市町村において適正な処理が困難な廃棄物については、市町村が有する設備及び技術に照らして適正な処理が全国的に困難となっていると認められる一般廃棄物を環境大臣が指定する制度の創設、個別リサイクル法や広域認定制度による対応等が行われてきた結果、廃FRP船の処理体制が整備されたほか、廃エアゾール製品については、市町村と業界が協力し充填物を出し切る製品構造(中身排出機構)への転換が進められてきた。また、廃スプリングマットレスについては、全生産量の約6割を占めるといわれている海外製品の製造者及び輸入業者の関与の在り方等を含め、メーカー等による処理体制の構築に向けた議論が続いている。
2.見直しの方向性
適正な処理が困難な廃棄物については引き続き調査を行い、必要に応じて運用面で実効性のある対応が取られるよう、今後も議論していく必要がある。



 処理困難物に限り、一般廃棄物と産業廃棄物の垣根を撤廃し、専門の処理業者が処理困難物に特化した処理を行えるようにするなど、現実的な法律の運用が望まれています。 


 
 運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」