
- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
措置命令対象も拡大?
(第1回目)廃棄物処理政策に関して検討されている論点(4)
(第2回目)監視活動は目的達成のための手段の一つにすぎない
(第3回目)立入検査可能な場所が拡大
の続きです。
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「不法投棄対策の強化・徹底」に関して、以下の5点に関して具体的な検討が行われています。
・監視を強化するべき
自治体による監視のみならず、衛星や自治体・警察OBを活用した、より効率的で密度の高い監視網を形成していくべきではないか
・罰則をもっと強化するべき
・立入検査の可能な場所を拡大するべき
・運搬車両・船舶、不適正処理が行われた土地の所有者の土地・建物
・措置命令を拡充するべき
収集運搬や保管基準の違反も、措置命令の対象にするべき
今回のコラムでは、「措置命令を拡充するべき」について解説いたします。
立入検査可能な場所が拡大 と同様に、行政の取締りを円滑に行わせることを主眼とした、法律改正の検討課題です。
環境省としては、収集運搬や廃棄物の保管行為の際にも、措置命令を発出できるように法律改正をしたいようです。
まず、措置命令とは
1.廃棄物処理基準に適合しない廃棄物の処分が行われ
2.生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる時に
市町村長や都道府県知事が期限を決めて、その処分を行った者などに対し、支障の除去や被害の発生防止措置を取るよう命じる
ことです。
上記のように、措置命令発出のためには前提条件が2つあるわけですが、具体的なイメージとしては、不法投棄などの不適正処理が現在行われている現場に対し出される命令、と考えていただくとわかりやすいでしょう。
環境省が言うように、収集運搬過程で措置命令が必要かというと、実際にはどうでしょうか。
収集運搬の途上で、生活環境保全上の支障が問題となる場合は、廃棄物の飛散・流出だと思います。
廃棄物がトラックの荷台から飛び散るなどの、飛散・流出をしているような場合、わざわざ措置命令を発出するまでもなく、「廃棄物処理基準違反」として、業の許可と絡めた指導を強力に行えば済む話です。
飛散・流出を犯している当事者が許可業者の場合は。
しかし、無許可業者の場合は、廃棄物を飛散・流出させたとしても、その事実だけでは罰則をかけることができません。
ただし、無許可で運搬をしている事実がありますので、「5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金」という最も重い刑罰が科されることになり、結局は法律によって処罰されることになります。
次は、廃棄物の保管についてですが、廃棄物が目に余るほど大量で、 今にも廃棄物の山が崩れそうだという場合は、「保管」ではなく、「処理の目処がないまま放置=不法投棄」と同視できる、悪質な違法行為ですので、現在多くの行政で、既に措置命令の対象とされています。
措置命令に関して環境省がやろうとしている法改正は、自治体の現場職員にとっては、至れり尽くせりの手厚いサービスとなりそうですが、それほど必要性が高くない改正であるとも言えます。
運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」