- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
取締強化が進行中の不法投棄対策
(第1回目)廃棄物処理政策に関して検討されている論点(4)
の続きです。
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「不法投棄対策の強化・徹底」に関して、以下の5点に関して具体的な検討が行われています。
・監視を強化するべき
自治体による監視のみならず、衛星や自治体・警察OBを活用した、より効率的で密度の高い監視網を形成していくべきではないか
・罰則をもっと強化するべき
・立入検査の可能な場所を拡大するべき
・運搬車両・船舶、不適正処理が行われた土地の所有者の土地・建物
・措置命令を拡充するべき
収集運搬や保管基準の違反も、措置命令の対象にするべき
今回のコラムでは、「監視を強化するべき」について解説いたします。
監視活動は目的達成のための手段の一つにすぎない
環境省の公式発表では、「大規模な不法投棄は減少傾向にある」とのことですが、全国各地で廃棄物の不法投棄が報道されない日はありません。
環境省の発表とは裏腹に、経済の落ち込みに伴い、零細建設業者などによる小規模な不法投棄が続発している印象です。
無くならない不法投棄に対し、行政などが監視活動を強めることは、単なる対症療法にすぎません。
確かに、行政や警察が監視している場所では、不法投棄が減少します。
しかし、その一方で、監視の目が届かない場所や時間に不法投棄が分散(ゲリラ化)してしまい、把握できない不法投棄件数は相当な数に上るものと思われます。
もちろん、監視なくして、廃棄物の適正処理はあり得ませんので、監視活動は絶対に必要な行動です。
重要なのは、監視が「目的」なのではなく、「廃棄物の適切な処理」という目的を達成するための「手段」の一つにすぎないということです。
「手段」を「目的」と勘違いして、監視カメラや人工衛星の利用で満足している行政ばかりなのが少々気がかりなところです。
監視を強化するのと同時に、「不法投棄を断じて許さない」という、自治体トップの断固たる意思の下、着実に指導や普及啓発を行っていくことが不可欠です。
そのためには、モニターを通じて快適な部屋から遠隔監視するのではなく、生身の人間を直接相手にした、対人交渉能力がものを言います。
こればかりは、機械の力を借りるわけにはいきませんので、自治体職員の方には、怠りなく現場に出てもまれていただきたいものです。
運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」