
- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
近年、高齢化が急速に進む日本において、社会保障制度の持続可能性が大きな課題となっています。特に、介護保険制度における利用者負担の見直しは、高齢者福祉のあり方を大きく左右する重要な問題です。今回は、利用者負担の見直し、特に2割負担の対象者範囲拡大や金融資産の保有状態の反映、そして「利用者負担を原則2割」とする可能性について掘り下げて考えていきたいと思います。
●2割負担の対象者範囲拡大とその影響
現在、介護保険サービスの利用者負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は2割負担となっています。しかし、この2割負担の対象者範囲が拡大される動きがあります。これは、現役世代の負担を軽減し、制度全体の財源を確保するための措置と考えられます。
2割負担の対象者範囲が拡大されると、これまで1割負担だった方も2割負担になる可能性があります。これは、高齢者の家計に大きな影響を与えるでしょう。特に、年金収入のみで生活している高齢者にとっては、負担増が生活を圧迫する要因となりかねません。
一方で、2割負担の対象者範囲拡大は、制度の持続可能性を高める上で一定の効果があると考えられます。現役世代の負担を軽減し、将来世代への負担を先送りしないためには、ある程度の利用者負担の増加は避けられないのかもしれません。
●所得だけでなく金融資産の保有状態等も反映
利用者負担の見直しにおいては、所得だけでなく金融資産の保有状態等も反映させるという議論があります。これは、所得が少なくても金融資産を多く保有している高齢者にも、一定の負担を求めるという考え方です。
金融資産の保有状態を反映させることには、公平性の観点から一定の合理性があると考えられます。所得が少なくても、金融資産を多く保有していれば、生活に余裕がある可能性があります。そのような方にも一定の負担を求めることで、真に支援が必要な方に重点的に資源を配分することができます。
しかし、金融資産の保有状態をどのように把握し、評価するのかという課題があります。プライバシーの問題や、資産の評価方法など、解決すべき課題は少なくありません。
●「利用者負担を原則2割」とする可能性も
一部では、「利用者負担を原則2割」とする可能性も議論されています。これは、制度の持続可能性をより確実にするための措置と考えられます。
利用者負担を原則2割とすることは、高齢者の負担を大幅に増加させることになります。特に、低所得の高齢者にとっては、生活が困難になる可能性があります。十分な配慮が必要となるでしょう。
一方で、利用者負担を原則2割とすることで、制度の財源は大幅に改善されます。これにより、サービスの質の向上や、新たなサービスの開発が可能になるかもしれません。
●高齢者福祉の未来を考える
利用者負担の見直しは、高齢者福祉の未来を考える上で避けて通れない問題です。制度の持続可能性を高めるためには、ある程度の利用者負担の増加は避けられないのかもしれません。
しかし、利用者負担の増加は、高齢者の生活に大きな影響を与えます。特に、低所得の高齢者にとっては、深刻な問題となりかねません。十分な配慮が必要です。
利用者負担の見直しは、単に財源を確保するだけでなく、高齢者福祉のあり方を問い直す機会でもあります。高齢者が安心して生活できる社会を実現するために、どのような制度設計が必要なのか、国民全体で議論していく必要があります。
●まとめ
利用者負担の見直しは、高齢者福祉の未来を左右する重要な問題です。2割負担の対象者範囲拡大や金融資産の保有状態の反映、「利用者負担を原則2割」とする可能性など、様々な議論があります。
これらの議論を踏まえ、高齢者が安心して生活できる社会を実現するために、どのような制度設計が必要なのか、国民全体で議論していく必要があります。
このコラムが、その議論の一助となれば幸いです。
このコラムの執筆専門家

- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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