- 寺岡 孝
- アネシスプランニング株式会社 代表取締役
- 東京都
- お金と住まいの専門家
-
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対象:住宅資金・住宅ローン
- 伊藤 誠
- (ファイナンシャルプランナー)
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50年返済の住宅ローン出現で億ションのタワマンも買えます!
50年返済の住宅ローン出現で若年層でも億ションに手が届くようになりましたが、50年ローンにはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
不動産価格の高騰から生まれた50年返済の住宅ローン
不動産経済研究所によれば、今年の1月から6月に東京23区内で発売された新築分譲マンションの平均価格は1億2962万円、前年同期で6割も上回る値動きとなりました。
住宅ローンも今までは1億円を上限としていた金融機関はこうした不動産価格の高騰を踏まえて上限を3億円まで引き上げるケースも出てきました。
このように、例えば共働きで世帯年収の多い、いわゆるパワーカップルでさえ手の届きにくい不動産価格になってしまい、資金提供をする金融機関としては借入金の上限を引き上げ、かつ返済期間を長期化せざるを得ない環境となっています。
借りる側のリスクと注意点
50年ローンは借りる側にとって月々の返済額が少なくてすむというメリットがありますが、借りる側のリスクはないのでしょうか。
ここでは、借り手側にある50年ローンのリスクについてお伝えしましょう。
一生住むつもりで購入した住まいでも、返済期間中に住宅を手放す状況にいたる場合があります。
例えば、結婚当初は新居を購入するために夫婦でのペアローンや収入合算してローンを組んでようやく住まいを買ったにもかかわらず、何らかの理由で手放すという事態が想定できます。
昨今、3組に1組は離婚すると言われるように、離婚や夫婦それぞれの転勤や転職、親の介護で実家に帰る必要になったなど、人生には様々な問題が起きます。そうした問題に直面すると住まいを売却せざるを得ない状況になる場合があります。
その際にローン残債額が多すぎて売却できないという「残債割れ」に直面します。これは長期間の返済になればなるほどローンの元金はなかなか減らないという点です。
住宅ローンの返済方法の大半は元利均等返済であり、返済当初から元金はそれほど減少せず、毎月の返済額の大半は利息払いという状態です。
したがって、住宅を買ってから5年も経過しないでやむを得ず売却することになった場合には、かなりのローン残債額が残っており、残債額が市況の売却価格よりも上回るとなれば、かなり厳しい現実が待ち受けていることになります。
売却価格でもローンの完済ができないとなれば、不足分を手元資金で埋め合わせしない限り物件の売却はできないということは認識しておく必要があります。
長期ローンを組めば当然ながら利息も多く払うことになりますので、借入金が大きいとその分の利息もかなりの額になります。
また、長期返済の場合は定年後もローンの返済を続けていくということが前提になります。
例えば22歳に50年ローンを組んだ場合、ローン完済時は72歳ということになります。
今では定年が延長されて比較的長く働くことはできますが、現役世代と同等の給与はもらえるわけではありませんので現実はかなり厳しい老後が待ち受けているということになります。
これでは50年ローンを組んでも将来、老後破産なりかねないというリスクが存在します。人生100年時代とはいえ、健康寿命は74歳といわれていますので、極論を言えば少なくともこの年齢までにはローンを終わらせておくことです。
このように、借り手には月々の返済額が減った分、将来のリスクが大きいということは認識しておくべきです。
貸す側にはリスクはないのか?
次に、貸す側にとってのリスクはないでしょうか。
金融機関側にとって借り手が毎月、滞りなく返済してくれればいいのですが、借り手が事故、病気、リストラで失業とか就労不能などの事態に陥った場合、貸し倒れになるリスクが高まります。
そうしたリスクを回避するために50年ローンの金利は高めに設定している金融機関もあります。
しかしながら、返済のペースが遅いため元金はなかなか減らないので、何らかの問題が起きて担保となる不動産が売却しただけでは貸金の回収ができないというリスクが金融機関には存在しています。
したがって、金融機関側は不動産価格が下落した場合も想定して貸し出しをすることが必然となっています。
返済期間と返済金額の比較
下記のシュミュレーションは35年返済と50年返済の住宅ローンで1億円の借入をした際に月々の返済額と総返済額、利息総額を計算してみました。
このシュミュレーションを見ると、月々の返済額が18万円となれば億ションも夢ではありません。
しかも、夫婦共働きで収入合算して世帯年収が970万円程度あれば、机上のローン審査でOKになる返済額です。
例えば、夫の年収が600万円、妻の年収が370万円程度であればOKになるというわけです。
★1億円の住宅ローンを組んだ場合
借入額:1億円 返済期間:50年返済 金利:変動0.47%
返済期間 |
月々返済額 |
返済総額 |
利息総額 |
35年返済 |
251,709円 |
105,717,830円 |
5,717,830円 |
50年返済 |
187,048円 |
112,229,277円 |
12,229,277円 |
返済期間を延ばすことで月々の返済負担は減額できる。(35年返済と50年返済の差額は月64,661円で大きい)
返済期間中に金利変動が起きると全ての項目で上記の金額よりも上回る。
★上記金利に1%プラスされた場合
借入額:1億円 返済期間:35年返済 金利:変動1.32%
借入額:1億円 返済期間:50年返済 金利:変動1.47%
返済期間 |
月々返済額 |
返済総額 |
利息総額 |
35年返済 |
297,443円 |
124,926,427円 |
24,926,427円 |
50年返済 |
235,450円 |
141,270,410円 |
41,270,410円 |
*返済総額、利息総額は返済期間中金利変動無とする
このシュミュレーションを見ると、金利1%上昇が起きた場合、借入金が大きいほど返済総額や利息総額が大きく変わってしまうのは恐ろしいことです。
50年ローンと変動金利のリスク
超低金利が続く日本では住宅ローンの7割は変動金利を選択しています。
特に首都圏の不動産価格の高騰を受けて長期返済とは別に、変動金利を利用することで当面は月々の返済額を抑えることができます。
したがって、億ションのタワマンでもパワーカップルであればローンを組んで買うことができます。
しかしながら、変動金利のリスクはいずれ訪れる金利上昇を踏まえておくことが重要で、長期返済でしかも変動金利という選択肢は残債割れを起こすリスクが高いとも言えるでしょう。
長期返済を組んだためにローンの元金が減らず、市場価格とローン残債額の乖離幅が大きくなると不動産市場は下落に転じ大きなダメージを受ける可能性を秘めています。
不動産価格の高騰で長期返済と変動金利は借り手のメリットが大きく不動産を買いやすくしています。
しかしながら、金利が上昇局面に転じてしまうとローン返済も滞り始め、不動産を売りたいという人が増えれば価格を安くしないと売れないという状況に陥ります。
過去来の不動産バブルの崩壊を繰り返ししている現実を見ていると、この状況は気がかりでなりません。
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メール:info★anesisplan.co.jp
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このコラムの執筆専門家
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