- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!介護経営コンサルティング・介護施設紹介「株式会社アースソリューション」の寺崎でございます。
以前もこのコラムでも書かせていただきましたが、今日は「介護事業者の倒産」について取り上げます。
介護事業者の倒産件数が過去最多になったとのこと。
すでに、過去最高だった昨年(111件)を上回っている(112件)そうです。
もちろん、コロナ禍が原因の中心だと思います。
しかし、倒産が増える原因はもっと根深いと思わざるを得ません。もっと言ってしまえば、コロナは非常に重要な原因ではあるかもしれませんが、もっと構造上の問題ではないか、と。
介護保険制度が始まって20年。20年も歴史を積み上げればいろいろな動きになるでしょう。
事業所の数は一気に増え、数えきれない程になりました。20年の間に何度も制度改正・報酬改定が行われてきました。
数が増えるのは、高齢者が増えているわけですから当然として、介護事業を運営するのは本当に苦労が伴います。
人材確保の問題、制度や報酬体系が変わるたびに振り回れ、経営の根幹が揺るがされる。
人材不足等のため、社長自ら現場に入り、ほとんど休めない。現場だけでも大変なのに、社長業は当然しなければならない。
本当に疲弊しています。
中小の介護会社で、現場に入っていない社長、ほとんどいないのではないでしょうか。
「社長が現場に入っているようではダメだ」「だから、介護会社は経営が杜撰なのだ」という方もいます。
しかし、そう決めつけるのはよくないと思います。そうせざるを得ない事業は、存在するのです。
実際問題、介護の業界でも、世代交代や事業承継といった話が聞かれるようになりました。
もともと、「介護事業者は黒字倒産が多い」とは言われています。
そこへきての、今回のコロナ禍です。
現場で懸命に踏ん張ってきて、ただでさえダメージは深刻なのに、今回のコロナ禍で精神的にも大きなダメージを受けています。
なにより、感染リスクの高い高齢者を相手にするサービス。自らも感染するリスクを抱えつつ、必要なサービスを止めるわけにはいかない。
今回の「倒産件数過去最多」というのは、確かにコロナが大きな要因になっていることは否定の余地はありません。
ただし、それは「人材不足」「制度変更リスク」等といった構造上の問題に対して、「コロナ禍」が追い打ちをかけたということだと思うのです。もともとの構造上の問題が、やはり根強いわけです。
今回の報酬改定において、感染症対策を事業所レベルで構築することを、運営基準にて定められる方向となりました。いわゆるBCP対策です。
これは確かに必要な取り組みです。日本は震災や台風といった自然災害が多い国ですし、前々からその必要性が叫ばれてきましたが、実際にBCP対策をしている企業はまだまだ少ないのが現状です。
今後、感染症にかかるBCP対策を講じない事業所は、基準違反に問われることになります。
同時に、基準を守らずにコロナ感染者が発生し、例えばご利用者様がそれが原因で亡くなったということとなった場合には、事業者が責任を取らなくてはならなくなります。
以前もこのコラムで紹介しましたが、少し前に広島県内の訪問介護事業所で、熱発したヘルパーが利用者宅へ訪問し、当該ご利用者様がコロナ感染しお亡くなりになったという話がありました。4400万円もの損害賠償を請求され、業界を震撼させました。
結局和解となったからよかったものの、私は、これでヘルパー・事業所が責任を取ることになってしまっては、介護業界は崩壊すると論じました。今でもその意見は変わりません。
確かに、杜撰な管理体制の事業所も存在しますので、対策を講じることを義務付けることは必要だと思います。
ただ、介護や医療の仕事は、サービスそのものが感染リスクを伴うものです。
感染リスクをゼロにするには、サービスをすべて止めるしかありません。しかし、それは不可能ですよね。
当然ながら、日頃から手洗いうがい、消毒、ディスポの活用等、当たり前に行っています。しかし、そこまでしても防げないことがある。
もともとの構造上の問題が根深くあって、そこにコロナ禍が追い打ちをかけて、倒産となっているケースが、私は多いのではないかと思うのです。
実際に、先の広島での損害賠償請求の一件で、お付き合いのある介護事業者の社長から事業撤退の相談を受けたこともあります。
このままでは、介護事業を行うこと自体がリスクになってしまう。
夢も希望もない。人材も足りないし、休めないし、大して生活も潤わないし、そして健康を害するリスクを背負っていかなくてはならず、訴訟リスクもある。
誰が、そんな危ない事業をやるのか、という話になってしまいます。
「おじいちゃんおばあちゃんが好きだから」とか、「ありがとうと言われる仕事だから」とか、「社会貢献度が高くやりがいがあるから」といった理由だけでは、もはや介護の仕事を続けるモチベーションにはなっていかない。むしろ「苦行」と言った方がよい。
非常に乱暴な言い方になってしまい申し訳ないのですが、私はそんな風にも考えてしまいます。
介護事業所の倒産、当分止まりそうにはない気がします。
介護給付費分科会の審議も大詰めになってきていますが、今回の報酬改定は非常に大きな、厳しいものとなります。
これが、介護事業所の倒産に拍車をかける要因とならないようにしてほしいものです。
そして、そういう厳しい運営をされている事業者を、私は本当に全力でサポートしたい。
一つでも二つでも、そういう事業者の力になりたい。私はそう考えずにはいられません。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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