自転車事故の損害賠償責任とは? - 交通事故 - 専門家プロファイル

高橋 裕也
大阪府
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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自転車事故の損害賠償責任とは?

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1 自転車運転者の責任

自動車事故の場合、運転者には自動車損害賠償保障法(自賠法)が適用され、運転者側で過失がなかったことを証明できない限り、損害賠償義務を免れることができません。

一方、自転車事故の場合、自動車事故とは違い自賠法が適用されませんので、被害者の側で自転車運転手に過失があったことを証明する必要があります(民法709条)。

このような違いから、事故の状況が明らかでない場合など、被害者側で自転車運転者の過失を証明するのに大変苦労する事件もあります。

2 使用者の責任

従業員が自転車事故を起こしてしまったときに、従業員を使用する事業主(使用者)が損害賠償責任を負うことがあります。

これは使用者責任(民法715条)というもので、①従業員に責任が認められ、②使用関係があり、③業務遂行中の事故であると認められれば、事業主(使用者)も、事故を起こした人と同様の損害賠償責任を負うことになります。

被害者にとっては、自転車運転者以外にも責任追及できる相手がいることになり、十分な補償を受けられる可能性が高まるといえます。

3 子どもの自転車事故における親の責任

(1)未成年者の責任能力

自転車は小さな子どもでも運転できるため、自転車事故の加害者が未成年者であることも少なくありません。

民法712条は「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と規定しており、未成年者に「自己の行為の責任を弁識するに足りるだけの知能」(責任能力)がなければ不法行為責任を負いません。

裁判所が責任能力を認める境界線は12歳~13歳程度といわれていますが、12歳7か月の少年の責任能力を否定した裁判例、11歳1か月の少年の責任能力を肯定した裁判例があり(これら裁判例は、それぞれ714条の責任、715条の責任を肯定する前提としての判断だとも説明されます)、事案ごとに個別に判断されることになります。

(2)未成年者に責任能力が認められない場合

未成年者に責任能力が認められない場合、民法714条1項が「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定してますので、基本的には親権者等が責任を負うこととなります。

また、民法712条1項では、監督義務者が監督義務を怠らなかったことを立証すれば責任を免れることもできるともされていますが、この立証は非常に困難であるとされています。

(3)未成年者に責任能力が認められる場合

未成年者に責任能力が認められる場合、未成年者が民法709条に基づき損害賠償責任を負いますので、未成年者に対して損害賠償請求を行うこととなります。

しかし、未成年者の責任を追及できるとしても、未成年者は資力に乏しいことが多いため、監督義務者の責任も追及できないかが問題となります。

裁判では、監督義務違反と結果との間に因果関係が認められる場合において、監督義務者にも民法709条に基づく不法行為責任を認めたものがあります(つまり、未成年者と監督義務者の両方に責任を認めたということです)。

さらに詳しい解説は

自転車事故の損害賠償を詳しく解説

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