- 高橋 裕也
- 大阪府
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
1 通勤中の自転車事故については、労働保険法の「通勤災害」にあたる可能性があります。
通勤災害にあたると、①療養給付(傷病の治療費)、②休業給付(休業療養中の生活保障)、③障害給付(心身の後遺障害に対する給付)などを受けることができます。
2 保険会社が自由診療の治療費を支払ってくれるなら、治療費について療養給付を受ける必要はないようにも思えます。
しかし、被害者にも過失がある自転車事故では、過失相殺が行われるときに「費目拘束」というものがあり、療養給付の方が得をする可能性があります。
これは、過失相殺を行った結果、治療費を受けとりすぎていた(被害者が負担すべき治療費分がある)として慰謝料を削られたりする心配がないということです(休業給付、障害給付についても同様です)。
また、保険会社が治療費を支払う場合、納得のいかないタイミングで治療費を打ち切られてしまうことが少なくありませんが、労災であれば打ち切りについて緩やかな判断をされている印象です。
基本的には労災で治療費の支払いを受けた方がよいといえます。
3 通勤中の自転車事故で怪我をして、治療のため仕事ができず、賃金が支払われなければ、休業の4日目以降から休業給付が支給されます。
賃金が支払われないことが要件となり、有給休暇を取得している期間は休業給付は支給されません。
休業給付は、給付基礎日額の60%に、これとは別に休業特別支給金として給付基礎日額の20%が加わり、合計給付基礎日額の80%が支給されます。
休業給付の特別支給金については損益相殺の対象にならない(あとで差引計算する必要がない)ので、給付を受けないと損をしてしまいます。
また、保険会社から休業損害の内払いを受けていると、突然に打ち切られてしまう心配をしながら治療を続けないといけませんが、休業給付であれば打ち切りの判断については緩やかな印象です。
4 自転車事故の後遺障害については、迷わずに障害給付の申請を行いましょう。
通勤中の自転車事故で怪我をして、一定の障害が残った場合には、その障害の程度に応じて障害給付が支給されます。障害給付の内容は、障害等級1級から7級に該当するときは障害年金、障害特別年金、障害特別支給金が支給され、8級から14級については障害一時金、障害特別一時金、障害特別支給金が支給されます。
自転車事故では自賠責保険を使えませんので、基本的には労災で認定された後遺障害等級に基づいて損害賠償請求を行うことを考えます。
保険会社も交渉段階では労災の認定等級を尊重する印象です。
また、障害給付についても、特別支給金は損益相殺の対象にならない(あとで差引計算する必要がない)ので、給付を受けないと損をしてしまいます。
さらに詳しい解説は
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