- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
コロナパンデミックが粉々に叩き潰した高校留学をカナダの現場から眺めています。
「高校留学の呆れる実態」を発信し続けた30年間を振り返りながら。
音をたてて崩れた「高校留学」に傷つき、そしてやっと「真実」に目を向け始めた留学生親子たちとの貴重な出会いも続いています。
そんな中、30年間日本に向け訴え続けていた「ある一言」についてご質問をいただきました。
数多く書いた私のコラムからの一節「高校留学は『もともとの優秀な能力』のある特別な生徒のみに可能」ということ。
「もともとの優秀な能力」の定義とは?と。
「もともとの優秀な能力」とは? (脳科学、脳心理学より)
私達の持つ知的能力、Intelligence、には大きく3つの種類があります。
Triarchic theory of Intelligence(Robert Sternberg)と呼ばれるTheoryです。
それら3つのIntelligenceとは:
Componential Intelligence (Analytical Intelligence)
Experiential Intelligence
Contextual Intelligence (Practical Intelligence)
高校留学に必須の「もともとの優秀な能力」とは、特に最初のComponential Intelligence (Analytical Intelligence)を指します。
あとの2つのIntelligenceも非常に重要ですが、まだ脳が完全に発達していない10代には「高校留学」への切符にはなり得ません。
その後の大学留学成功には、実は3つのIntelligence 間のバランスがこの上なく重要となります。
Componential Intelligence は、遺伝子が大きな決定要因です。
努力や、塾通いで身につくものではありません。
環境が影響する場合もありますが、それは持って生まれた遺伝子が好ましい環境により開いていく過程を意味します。
生まれながらの高いComponential Intelligenceの遺伝子がない場合、どれほど環境を変えようとIntelligenceに大きな変化は起こりません。
残酷な事実ですが、科学で証明されていることです。
学校では常に極少数の非常に成績の良い生徒がいると思います。
幼い頃からずっと塾漬けという生徒ではなく、自分でぐいぐい動機づけをし進んでいけるタイプの秀才とでも呼んだらいいでしょうか。
「あいつには叶わない」と周りに思わせるIntelligenceです。
Componential Intelligence はAcademic Success と直結しています。
つまり、これを持っていると日本の学校での成績はかなりの上位のはずです。
(日本の学校制度で優秀でない場合は高校留学は勧めませんというのはこのためです)
具体的には:
自分の思考過程をよく理解しており、学習する際にどれだけ理解できているかを自身で把握でき、うまく理解できていない場合は、学ぶプロセスを自ら変え、コントールすることができます。
自分が学んだことを脳が記憶し、必要があればその情報を呼出し、読んだこと学んだことへの次なる問題解決を考えながら進むことができます。
高校留学した場合でも、完全に異なる英語での思考プロセスを理解し、自分が理解できないことには徹底的に取り組み、どう対処すれば自分に最適な学びが出来るかを自分で探し進んで行きます。
ELL講師や、各教科の教師の言うことだけ、出した宿題だけをとにかくやって提出というパターンには決して陥りません。
「英語とクリティカルシンキングの国に生まれ育ち、Grade9までにクリティカルシンキングを基にしたReading/Writingの訓練を受けた優秀な高校生と同じレベルで、しかも外国語である英語で勉強する。」高校留学は、Componential Intelligence がないと成り立ちません。
Componential Intelligence がレベルに届かない高校留学生の典型的な行動パターンは:
英語の本のどこを、なぜ理解できないかわからない。
理解できていないこと自体も、わかってない場合が多い。
「理解していない」という実感に乏しいため、読み返すことも質問することもしない。
これが「何年もELLのまま」「ローカルのEnglishレベルに入れない」「卒業できないか、できても4〜5年はかかる」「卒業しても成績が悪くその先の一流教育は無理」の理由です。
更に悪いことには、自分の学力を自分で分析することができないため、「わかっていない」ことにも「自分はうまくやっている」と妄想のような思い込みをしてしまいます。
英語圏での学習内容が理解できていないことにも、理解が及びません。
自分で自分の問題に気がつかず、従って自分の陥る深い問題を解決することもできません。
対照的に、Componential Intelligence の高い留学生は、非常に現実的に考える能力があり、それが留学成功に結びつきます。
また、面白いことに、自分の能力を多少なり過小評価する傾向もあります。
“He who knows best knows how little he knows.” です。
数え切れないほど、高校留学生からの相談にのり、日本での直接指導時代を含めると5桁に上る数の日本の生徒を指導して来ました。
正直、その中でもComponential Intelligenceの高さが目に止まった生徒は極少数でした。
遺伝子のいたずらにより現れるIQのBell Curveグラフが見事に現している厳しい現実です。
「高校留学は誰でも希望すれば可能なものではない」と訴え続けているのは、それが最大の理由です。
高いComponential Intelligenceは、国を変えようが、教育制度を変えようが、高いお金を払おうが手に入りません。
もちろん、人間の知的能力の高さを測るのはComponential Intelligenceだけではありません。
しかし、高校留学という「魔物」ではComponential Intelligenceがすべてを決定してしまいます。
そこで結論「『もともとの優秀な能力』= 'Componential Intelligence' がない場合は高校留学はお勧めしません」に至ったわけです。
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大学留学、実社会での人間としての成功に大きな力になるIntelligenceも簡単に説明しておきます。
Experiential Intelligence
経験するごとに学びを繰り返し、前に学習したスキルを次々と新しい状況で使えるIntelligence.
新しいタスクを学習する脳のスピードが速く、プロセスを理解し自動的に反応するまでの時間が短い。
大学という専門分野のスキルを徹底的に訓練する場では、このIntelligenceなしでは前に進めません。
特にカナダの大学留学には必須です。
このIntelligenceに欠ける場合には、「決められた環境、細かい指示下という狭い範囲内でしか能力を発揮できない」「決まった期日のある宿題、教師からのリアルタイムFeedbackにしか対応できない」という行動が見られます。
カナダにいた高校留学生に普通に見られた行動です。
簡単なコースをあてがわれ、最終試験でC+程度の成績での卒業は可能かも知れませんが、大学の先にある実社会で頭を出すことは難しいでしょう。
その芽は、高校留学で完全に摘み取られたと思います。
Contextual Intelligence (Practical Intelligence)
自らのIntelligenceを周りの日常に応用出来るIntelligence.
正に、実社会、特にコロナ後New Normal社会での成功に多いに関係するIntelligenceです。
環境に適応するには自分がどう行動すべきか判断でき、環境を変えるための行動も迅速、問題があるとそれを分析し解決する方法をみつけ実行出来る。
周りを常に観察し、観察したことを使い実際的に考え行動でき、自分のゴールに向かって進める。
大学でのアカデミックな成功にも、この実際的なIntelligenceが非常に大切です。
日本では、子供が周りを観察し、それについての自分の考えを持ち行動することが非常に抑制されていると思います。
その結果、このContextual Intelligenceの潜在能力がありながらも外に現れていないケースをずいぶん見てきました。
そんな生徒には、カナダの大学を勧めて来ました。
もちろん、ある程度のComponential Intelligence, Experiential Intelligenceも必要ですが、Contextual Intelligenceは特にカナダの大学、実社会では非常に高く評価される知力です。
日本では気づかれることのなかった優秀なContextual Intelligenceが、大学教育の成功に大きく影響するカナダで、大きく自信をつけ花開くことを願ってのことです。
こうして、たくさんの日本の生徒がカナダの大学で花開いてきました。
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「高校留学」は魔物です。
うまく行かないのが普通の落とし穴です。
9月からもオンライン授業(+週1程度の学校)に授業料を払う価値はないですね。
例え、高いComponential Intelligenceを備えた優秀な高校生にも、大きくマイナスの留学となります。
周りとの接触なし、教師との話もなし、社会とも切り離された中では、ここから更に発達する潜在能力も止まってしまいます。
そして、2つ目のExperiential Intelligenceも、3つ目のContextual Intelligenceも花開く機会も全くなくなります。
ホスト宅にこもり、Social Distancingの学校に週一回出席し、カナダ社会との接点ゼロの生活。
脳が発達を止めてしまいます。
特にNew Normalでの大学留学は、3つのIntelligenceがバランス良く発達した生徒のみのものとなります。
その準備をヘルプすべく、今日もカナダと日本をむすぶ特別オンラインレッスンCanada Clubで若い能力を丁寧に育てているところです。
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Canada Club (New Normal 大学・高校留学への準備/Big History Project)
「カナダ高校留学実態2019総集編」eBook ダウンロード
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New Normal留学に生き残るための学習サイト UX English
Podcast [カナダにいらっしゃい!]
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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