- 小竹 広光
- 飯田橋総合法務オフィス
- 東京都
- 行政書士
対象:会社設立
現物出資とは
会社を設立する際、出資(資本金の払込み)が必要ですが、金銭以外のもの(不動産や自動車、パソコンなど)も出資することが出来ます(会社法34条1項)。
この、金銭以外のものによる出資のことを「現物出資(げんぶつしゅっし)」といいます。
極端なことをいえば、手元資金が0円でも資本金1000万円の会社を設立することも可能であるということです。
※なお、設立後の出資(増資)に関してもこの現物出資という制度は利用することが可能です。
もちろん、出資する財産の価値を不当に高く評価してしまうと会社の価値が損なわれ、会社債権者の保護にも欠けます。
その為、この「現物出資」を行う場合には一定の規制がなされています。
1.会社の設立においては現物出資出来るのは発起人のみ
※会社設立後の増資に際しては発起人以外の個人・法人誰でも
出資が可能です。
2.現物の価値評価に際して検査役の調査が必要
※ただし、一定の場合には、検査役の調査が不要です。
◎検査役の調査が不要な場合
1 現物出資の額が総額500万円以下である場合
※以前は総額500万円以下でかつ資本金の5分の1以内という
制約がありましたが、新会社法により、この「5分の1」という
制約は撤廃されました。
2 市場価格のある有価証券(金融商品取引法第2条第1項)で、
所定の算定方法による価格を超えない場合
3 弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理
士法人の証明を受けた場合
(ただし、不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定証明も必要です)
現物出資の注意点
現物出資した目的物の評価額が実際の市場価値に満たない場合、出資者や取締役は、価値評価や調査に過失がなかったことを証明しない限り損失補填義務を負いますので、ご注意下さい。
なお、不動産の所有権移転登記手続きや自動車の登録名義変更手続きなどは、設立または増資の登記が完了したあとでも大丈夫です。
現物出資することが可能な「モノ」とは
出資することが可能な「現物」は、「物」には限りません。
現物出資の対象とすることが出来る財産は、不動産や自動車のみならず、有価証券や売掛金、著作権や特許権、なども含まれます。
資産として計上することが可能で、かつ譲渡可能なものであれば、債権や知的財産権なども出資の目的物とすることが可能なのです。
・動産(商品や原材料)、自動車、パソコン、ソフト、周辺機器、など
・機械設備や工具、器具、その他什器備品など
・不動産(土地建物)の所有権、地上権、賃借権、など
・株式や社債、国債、地方債などの有価証券
・貸金債権や売掛債権などの債権
・特許権や実用新案権などの知的財産権
また、合名会社や合資会社の無限責任社員については、労務や''信用''も現物出資の目的物とすることが可能です。
手続きの方法
会社設立に際して現物出資をする場合、以下の事項を定款に記載する必要があります(会社法第28条1号)。
・金銭以外の財産を出資する者の氏名(又は名称)
・当該財産及びその価額
・その者に対して割り当てる設立時発行株式の数
(種類株式発行会社にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数)
そして、以下の書面を作成します。
・財産引継書
・設立時取締役(監査役を置く場合には取締役と監査役)による調査報告書
・資本金の額の計上に関する報告書
現物出資の価額が500万円以内の場合は、上記の書類を登記申請書に添付書類として提出するだけで会社設立が可能です。
現物出資の価額が500万円を超える場合には、上記の他、税理士や公認会計士、または弁護士に出資財産の価値を評価してもらい、評価証明書を発行してもらう必要があります。
そしてこの「評価証明書」を添付することで検査役の調査を受けなくても会社設立が可能です。
ただし、評価証明は500万円を超える部分だけではなく、原則として現物出資の総額について必要となりますので、ご注意下さい。
検査役の調査を受けるには裁判所に検査役選任の申立てを行わないといけません。
しかし、手続きに手間や費用も取られますし、検査役の報酬なども発生しますので設立する前の会社には非常に大きな負担となりますからあまりお薦めは致しません。