- 増井 真也
- 建築部門代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
9坪ハウスというのは1952年に増沢洵氏が自邸として建設した3間×3間の最小限住宅に由来している。近年の土地の高騰の中で都市にすまうひとつの手段としてこの9坪ハウスというものが見直されている。正方形のプランには12尺×9尺の吹き抜けがあり、階高は最低限に抑えられている。水周りは非常にコンパクトに抑えられ、いかにもローコスト住宅の代表者のような作品だ。
このローコスト住宅の代表者のような作品を見ると、ひとつの大きな特徴として建築に使用する材料の種類の少なさに気がつく。ラワン合板、杉板、ふすまに張られている紙、家具や手すりを支える金物、あとは構造の一部になっている松材くらいのものだろう。とにかく種類が少ないのである。
最近の住宅ではなかなかここまで材種を少なくすることはできないだろう。断熱性、防火の問題、メンテナンス性、こういった問題を解決するためには適材適所、さまざまな材料を使用した方が住まい手にとって良い結果を生み出すことが容易に想像できる。だから普段設計している中では、タイルも使えばメラミンなどの新建材も利用する。しかし、9坪ハウスを造るに当たり、今一度材料の選定の思考を研ぎ澄ませ、この住宅の優れた気品高き庶民性を再現できるように務めてみたい。
(写真は当社で設計施工した川口市の9坪ハウス)