ローコスト住宅の考え方4 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

増井 真也
建築部門代表
建築家

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対象:住宅設計・構造

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ローコスト住宅の考え方4

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家作りのコツ
さて、19日に公開したコラムの続きである。

日本の住宅は高すぎる。それは確かな事実である。そしてこの価格を吊り上げているの要因はだいたい明らかになっている。
まずは、ハウスメーカなどの商品化住宅について考えてみよう。私の親戚はハウスメーカーの施工の仕事をしている。だからといって別に○○ホームの看板を掲げているわけではない。普通に宮崎という苗字を使って、宮崎工務店。そのままである。でもいつも大手ハウスメーカーの仕事をしている。そしてたまに自分の仕事をしている。そのときはもちろん宮崎工務店の請負で、ハウスメーカーは関係ない。同じ人がやっているけれど、あるときはハウスメーカーの住宅で、あるときは宮崎工務店の住宅になる。もっと面白い話、2社同時に入っているときは、昨日はMハウス、今日はTホームなんてこともある。そして夜は宮崎工務店。それが今の住宅産業の実態だ。
こういうハウスメーカーは自社で工場を持っている。あらかじめ工場において運搬可能なサイズに組建てられた部材を現場に運び、それを現場で組み立てる。基礎などのコンクリートを使用する部分については、現場で在来工法と同じように創り上げるわけだが、それだって鉄筋などはあらかじめ組み立てられたユニット鉄筋を利用する。とにかく現場での作業を減らす。天候や大工さんの腕によって左右される部分を減らすことで品質に標準化が確保され、更に工期を短縮することで現場の経費を抑えられる。
現場の経費や大工さんの作業費を抑えることが出来れば、あとは工場の運営を合理化するという非常にコントロールしやすい部分だけが残るわけであるので、更なるコストダウンが図れるわけだ。
では、大工さんは一体いくらくらいでこの組み立てを請け負っているのであろう。この金額は聞いてびっくり、驚くほど安い。大工さんは約1ヶ月で組み立てを終える。(あえて組み立てという言葉を使わせてもらう。このような現場で行っている工事は決して大工工事ではない。組み立て工事だ。)1ヶ月の大工さんの標準的な給料はだいたい50万円程度。それに道具や車両の経費を入れて70万円といったところであろう。そこから算出すると自然と金額がわかる。そう、30坪の家でもせいぜい100万円といったところなのだ。
こんなに手間代が安いのにどうして商品化住宅の値段はあんなに高いのか。それは考えるまでも無く明らかであろう。住宅展示場に出店するのに一体いくらのコストがかかるか、そしてそこに営業マンを常駐させ、更にTVCMや新聞広告を出し続けることにいくらのコストがかかるか。
私の会社には営業マンはいない。もちろん展示場も無い。全員が設計をし、全員が現場管理をする。大工さんは専属で2組。それ以上の仕事はしない。材料はなるべく重層構造を壊しているルートを探し、使っている専門業者さんは全て社長が職人さんだ。遊んでベンツに乗っている社長がいる会社なんてろくなもんではない。社長が職人さん、それが一番だ。そういう会社と商品化住宅のコストの違い、それはもう誰の目にも明らかであろう。