離婚したとき - 保険設計・保険見直し全般 - 専門家プロファイル

田中 香津奈
かづなFP社労士事務所/株式会社フェリーチェプラン 代表取締役
東京都
CFP・社会保険労務士

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対象:保険設計・保険見直し

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離婚したとき

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かづな先生の新保険ゼミ 07.保険見直しのポイント

離婚すると、夫婦は他人となるので、保険契約が継続できない場合が生じます。加入している保険の保障内容と受取人の確認をしましょう。子どもがいるか、いないかで保険の見直し方は異なります。18歳未満の子どもがいる場合は、ひとり親になると医療費助成など公的制度が適用される場合もありますので、公的保障を確認した上で見直しましょう。子どもがいない場合は、死亡保障は基本的に必要ありませんので、生きるための保障である医療保障、介護保障、老後保障の経済的リスクに備えることが大切です。

一人親家庭は、平成23年度の調査では母子家庭が123万7,700世帯、父子家庭が22万3,300世帯(厚生労働省:平成23年度全国母子世帯等調査)となっています。母子家庭は増加傾向であり、原因の約80%が離婚によるものです。また、母子家庭の平均収入は、291万円で、全世帯の平均収入の約4割という現状から、貯蓄が十分にできない可能性が懸念されます。限られた収入の中で、子どもが独立するまでの生活費と教育費について確保する必要があり、このような場合、生命保険の最も活用するケースとなります。

今回は、末子が独立するまでの生活費は1ヵ月いくら必要なのかにスポットをあてて試算してみましょう。子どもがいる場合、2,000万円~3,000万円という高額な生命保険の加入を考えがちですが、生活費は本来、毎月の給与から捻出していますので、1ヵ月単位の金額を基準にして考えます。さっそく、4つのステップで残された子どもが必要な生活費を算出してみましょう。

STEP1:1ヵ月に必要な生活費の計算

現在の生活水準をもとに、残された子どもが1ヵ月どのくらいの生活費を必要とするかを見積もります。まずは、「残された子どもを面倒見てくれる人は誰か?」を確認することがポイントです。面倒をみてくれる人の経済状況や考え方も考慮した生活費となります。

STEP2:収入見込額の計算

遺族年金などの公的保障、残された子どもの収入を見積もります。

STEP3:生命保険で用意する金額

STEP1と2の結果から不足する額が算出でき、不足額が生命保険の保険金額となります。

STEP4:生命保険はいつまで必要か?

必要な保険期間は、最低限一番下の子ども(以下、末子)が独立するまでの期間が目安となります。末子の独立年齢は18歳、20歳、22歳、と各家庭の教育方針によって異なりますが、大学卒業時の22歳が多いです。

不足する生活費を用意する場合の生命保険は、限られた期間の保障を手厚くできる「定期保険」が適しています。ただし、一定期間、一定の金額必要というわけではなく、子どもの成長とともに、必要保障額は減少するため、「定期保険」で大黒柱が亡くなった時に、保険金を一括してもらうのではなく、定期保険の1つで、毎月一定額の保険金を分割してもらう「収入保障保険」が最適です。



シングルマザーが「収入保障保険」に加入する場合、保険金受取人については、残された子どもの面倒を見てくれる人にしておく必要があります。というのも、受取人を子どもにしてしまうと、保険金を受け取ることができないというリスクが生じるからです。
シングルマザーが亡くなった場合、その時点で受取人である子どもが未成年の場合(既婚者は除く)、受取人の親権者または未成年後見人が手続きをしなければならないからです。一般的には、親権者または未成年後見人は、申し立てにより裁判所により選任されます。血族である実母など、実際に面倒を見てくれる人が選任されれば問題ありませんが、扶養能力などを考慮して、元夫などシングルマザーの意図に反した人が財産管理をする可能性も否定できません。確実に残された子どもに保険金を渡すためには、受取人は子どもではなく、実際に面倒を見てくれる人にしておき、その事情をきちんと伝えておくことが大切です。
実際、シングルマザーが受取人を子どもにしたことによる事件が発生したこともあります。 

平成23(2011)年8月9日の新聞 <事件の概要>
母子家庭の母親が交通事故で死亡し、残された子どもに身寄りがなかったことから、母親の実兄である伯父が裁判所により男児の未成年後見人に選任され、財産管理などを担当するようになった。しかし、伯父は残された子どもの口座に振り込まれた母親の生命保険金などを平成19(2007)年に引き出し、子どもを熊本の赤ちゃんポストに預け、逃亡した。

教育費の確保としては、日々の家計のやりくりだけではなかなか追いつくことができない金額を必要なときに確実に貯めることができる「学資保険」が候補にあがります。「学資保険」とは、子どもの進学時に合わせて祝金や満期保険金が受け取れる教育費の準備を目的とした保険で、原則「保険料払込免除特約」が付加されています。保険料払込免除特約とは、契約者である親が死亡または高度障害状態になった場合には、その後の保険料の支払いが免除され、満期保険金は予定通り受け取ることができるものです。つまり、母親の生死に関係なく、子どもの教育費を確保することができるということになります。当然この機能は預貯金にはありませんので、最大の特徴ともいえます。
また、保険と名前がついていますが、保障機能よりも貯蓄機能のほうがメインであるため、実際は預貯金とほとんど変わりません。預貯金の場合は流動性が高いために、ついつい他の目的に浪費しがちです。その点、「学資保険」は保険期間の途中で解約をしてしまうと、元本割れするデメリットがありますが、逆にそのことが功を奏し、教育費を強制的に確実に貯めることができるということでもあります。
確かに、「学資保険」は、確実に教育費を準備する代表的な商品の1つですが、シングルマザーが保険加入する場合、満期保険金の受取人については、残された子どもの面倒見てくれる人にしておく必要があります。というのも、受取人を子どもにしてしまうと、満期保険金を受け取ることができないというリスクが生じるからです。
「学資保険」の満期は、18歳など子どもにまとまった教育費がかかる年齢に合わせて満期の期間を設定している場合が多く、シングルマザーが満期の期間までに亡くなっている場合、満期保険金の受取人である子どもは未成年であり、受取人の親権者または未成年後見人が手続きをしなければならないからです。一般的には、親権者または未成年後見人は、申し立てにより裁判所により選任されます。血族である実母など、実際に面倒を見てくれる人が選任されれば問題ありませんが、扶養能力などを考慮して、元夫などシングルマザーの意図に反した人が財産管理をする可能性も否定できません。つまり、満期の設定によっては、「学資保険」は子どもが未成年のときにもらう保険ですので、子どもを指定したとしても、子ども以外が手続きをすることになってしまうのです。

低い予定利率の時代において、親の死亡保障も確保しつつ、子どもの教育費にも活用できる「低解約返戻金型終身保険」もしくは「低解約返戻金型定期保険」も学資保険の代替方法として主流になっています。いずれも親が亡くなったときのための「低解約返戻金型終身保険」もしくは「低解約返戻金型定期保険」を“短期払”で加入することによって、親が万一亡くなった時に支払われる死亡保険金を教育費の保障もしくは将来の解約返戻金による教育費の準備のいずれかを目的とした保険です。シングルマザーの場合は、「学資保険」より、代替方法としての「低解約返戻金型終身保険」もしくは「低解約返戻金型定期保険」の方が向いているでしょう。ただし、「収入保障保険」の加入時の注意点と同様、保険金受取人については、残された子どもの面倒見てくれる人にして、事情を伝えて加入することが大切です。



医療保障については、ひとり親になると医療費助成など公的制度が適用される場合もありますので、公的保障を確認した上で見直しましょう。地域によって、支援内容および対象世帯の要件、所得制限等が異なる場合がありますが、代表的な制度として、「母子家庭等医療費助成」を解説していきます。「母子家庭等医療費助成」とは、18歳に達した年度末までの児童(障害状態にある場合は20歳未満の児童)と、その児童を養育している父親もしくは母親の医療費の自己負担分の一部を助成する制度です。母子家庭だけでなく、父子家庭も対象のため、「医療保険」は家計に余裕がある場合のみ検討すればよいでしょう。ただし、一生のうちがんと診断されるのは、男性は約2人に1人、女性は約2.5人に1人の確率といわれています。「母子家庭等医療費助成」でもがんへの保障はありますが、入退院を繰り返したり、入院が長期化すると経済的リスクが高くなる可能性がありますので、「がん保険」は検討しましょう。この場合、日本を代表する優秀な病院や医師を無料で紹介してくれるサービス狙いでの保険加入もコストパフォーマンスを上げる方法になります。

シングルファーザーの場合、すでに加入している保険の保障額が適正で、離婚の際、保険の見直しをしないケースも多く見受けられます。仮に保険金受取人が離婚した元妻から変更されていない状態で、死亡保険金の支払事由が発生した場合は、死亡保険金は元妻に支払われることになります。しかし、この際、親族ではない元妻が単独で死亡診断書の手配を行うことが困難で、さらに、元夫が再婚して配偶者がいる場合、死亡保険金の請求に関して、配偶者と元妻のトラブルに発展する可能性があります。シングルファーザーが保険を継続する場合、シングルマザーの保険加入の時と同様に、保険金受取人については、残された子どもの面倒を見てくれる人にしておく必要があります。また、離婚した時点で、子どもが未成年でない場合は、原則として子どもなど2親等以内の親族に変更することによって、保険契約を継続することができます。

ここがポイント!

離婚した時、子どもがいない場合は、経済的リスクは低いですが、子どもがいる場合は、高くなります。保険金額の設定とともに、受取人の設定には十分な配慮をし、限られた収入の中で賢く保険を活用しましょう。

(2015.9.10公開)  

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