前回までは、個人の住宅に関わる現状を、国土交通省の平成26年住宅経済関係データに基づき紹介しました。
今回は、将来の推計を交えて、土地・住宅の未来を考えてみます。
■日本の人口の将来推計
下図は、日本の人口と高齢化率の推計です。
2015年の総人口は126,597千人ですが、10年後の2025年には120,659千人、20年後の2035年には112,124千人と推計されています。今後20年で人口が14,473千人≒約1,450万人も減少すると推計されています。
高齢化率も現在の26.6%≒4人に1人から2035年には33.4%≒3人に1人という事態になります。
このように現況の日本は人口の減少と高齢化が世界で最も早く進行している国です。
■人口と世帯数の将来推計
下図は住宅の必要数の基礎となる世帯数と人口に関わるデータです。
人口と高齢化の推計は前述しましたが、住宅は世帯数がベースとなります。
・2015年の一般世帯は52,904世帯と推計されています。
世帯の増加は2020年の53,053千世帯まで続くと推計されていますが、その後は減少に転じ、
2025年には52,439千世帯、2035年には49,555世帯と推計されています。
●世帯数の減少は必要住宅数の減少
2015年から10年後に465,000世帯が減少し、20年後の2035年には3,349,000世帯減少することに為ります。この世帯数の減少分だけ住宅の数が要らなくなります
■住宅ストック数と空き家率
下図に示すように2013年(平成25年)の世帯数は5,245万世帯で住宅は6,063万戸で、空家が853万戸も存在しています。
これらのことから、20年後の2035年(平成47年)には、820万戸+330万戸≒1,150万戸の住宅が不必要になります。2013住宅年の住宅数が増加しない場合でも、実に18%が空家という予測に為ります。住宅の新規着工件数は平成26年でも88万戸(持家・借家)ですので、早晩20%を超える空き家率になると予想されます。
このような住宅の現況の中で、平成26 年11 月27 日に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、本年3月から地方自治体による調査・確認が実施されています。
持ち家が、「特定空き家等」に指定されれば固定資産税の減免が無くなり、税は本税の額≒6倍となります。
従いまして、これらの土地の売却が始まることが予想され地価の低下も想定されます。
■人口の増加が見込めるのは一部の地域
その場合、全国で一律に地価下落が起きるのではなく、日本の一部の土地は上昇し他は軒並み下落という偏りに為ります。
下図は首都圏の各都県別人口増減率の推移です。
平成7年以降22年までの間は、東京都千代田区、中央区、港区3区への人口集中の様子が分かります。同じ東京都内でもこれだけ人口の移動があります。
ちなみに東京都中央区が増加率最高です。
築地・晴海・隅田川沿いのウォーターフロントの場所でもあり、銀座、日本橋、人形町等々歴史と近代が織りなす町でもあります。
また、日本銀行のある室町や、証券界のメッカ兜町・茅場町という金融の中心で、10.15k㎡という狭い地域です。
千代田区も皇居部分は広いのですが11.66k㎡、港区が多少広く20.34k㎡です。
これだけ狭い場所なので、地価や家賃の高騰はありますが、他の20区では人口減に悩む区もあります。
■放棄耕作地問題への対応
現在は住宅地の固定資産税問題がクローズアップされていますが、本年には放棄耕作地の地目変更に火がついています。
現在農地として登記されている土地は農業保護のため極めて低い資産評価が適用されています。
平成17年なので少し古い統計ですが、全国には放棄耕作地が38.6万haもあります。
その内、都市的地域だけで8.0万haあります。
この土地を空き家と同じように、地目を農地から雑種地に正し、課税しようというものです。都会にある耕作地は市街化緑地という特例で農地が存在するのですが、この放棄耕作地の地目が住宅地となれば数十倍の固定資産がかかります。このため、都会地でも売却物件が出ますので、地価の低下が予想されます。
このことがこれから審議され、正されれば、大規模農地の経営など農業改革も進みますし、都会地にある隠れ資産の問題もクリアーになり、国民の税負担の公正さも保たれることに為ります。
■ タックスアンサーの農地判定回答
平成27年7月7日現在国税庁タックスアンサーに記載されている農地の判定についてです。
原文のまま引用します。
・土地の地目の判定-農地
【照会要旨】
登記簿の地目は農地(田又は畑)ですが、現況が次のような場合には地目はどのように判定するのでしょうか。
(1) 数年前から耕作しないで放置している土地
(2) 砂利を入れて青空駐車場として利用している土地
【回答要旨】
土地の地目は、登記簿上の地目によるのではなく課税時期の現況によって判定します。
ところで、農地とは耕作の目的に供される土地をいい(農地法2 )、耕作とは土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培することをいいます。また、耕作の目的に供される土地とは、現に耕作されている土地のほか、現在は耕作されていなくても耕作しようとすればいつでも耕作できるような、すなわち、客観的に見てその現状が耕作の目的に供されるものと認められる土地(休耕地、不耕作地)も含むものとされています(平成12年6月1日12構改B第404号農林水産事務次官依命通知)。
したがって、(1)の耕作していない土地が上記のような状態に該当すれば農地と判定しますが、長期間放置されていたため、雑草等が生育し、容易に農地に復元し得ないような状況にある場合には原野又は雑種地と判定することになります。また、(2)の土地のように駐車場の用に供している土地は、雑種地と判定することになります。
【保有資格】
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宅地建物取引主任者 (東京)第188140号
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