計画案をはじめてみたときとは、うらはらに Tさんの顔が曇ります。
Tさんは、自身で作成されたという事業収支の計算を取り出し、分析。
“建設コスト の 部分が高いですよ。”
Tさんが、御自身の考える事業収支から 逆算された 建設コストは、
仕様のグレードをいくらおとしても、とても追い付かないとみえました。
思いめぐらし、わたしはこんなふうに 説明したことを覚えてます。
“Tさん。
余分な脂肪を落としてダイエットするこは、必要なことですよね。
ただ、これ以上 体重を減らすには骨や筋肉を削がなくてはいけません。
私は そのような計画の お手伝いはできませんよ。
しかし Tさん は がんとし 聞きいれようとしない様子でした。
そして
そんなやり取り があってから 数カ月後です。
Tさん から 丁寧な mail をいただきました。
内容は
残念ながら 岩間さん(わたし)の計画案での建設は諦める とのこと。
そして、Tさん自身が想定した 建設コスト で建築を請負ってくれる、
という業者さんを ようやく見つけた とのこと…
コスト・ダウンへのプレッシャーがあった。
構造計算書を偽造した 設計者 のせりふです。
設計者としての情熱どころか、技術者としての良心すら捨てた者の話題には、
正直、ふれたくもありません。
ただ、この一連の構造計算書偽造事件の発覚以来、
わたしには あのときの Tさんとのことが 頭に よぎってなりません。
信念のある 建築家 とは
依頼者には、ときとして 耳障りな存在になるときがあるのかもしれません。
ただ、それこそが 信頼の証 と、お考えになっていただきたい。
Tさん の計画は その後どうなったのか。
知るよしは、ありません。
このコラムの執筆専門家

- 岩間 隆司
- (東京都 / 建築家)
- 株式会社ソキウス 代表取締役
スマートに シンプルに 住う。 都市型住宅・集合住宅
都市の厳しい条件のもとでも、住宅や集合住宅を実現させてきました。住宅計画における制約は、生活空間に個性が生まれる、ひとつの契機として、ポジティブにとらえております。
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