- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
法人税更正処分等取消請求事件、貸倒の意義、興銀事件、租税判例百選62事件
平成16年12月24日 最高裁第2小法廷 判決
破棄自判、 民集 第58巻9号2637頁
【判示事項】
1 金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として損金の額に算入するための要件及びその要件該当性の判断
2 経営の破たんした住宅金融専門会社の設立母体である銀行が放棄した同社に対する貸付債権相当額が法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として損金の額に算入されるべきであるとされた事例
【裁判要旨】
1 法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならず,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に必要な労力,債権額と取立費用との比較衡量,債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情,経済的環境等も踏まえ,社会通念に従って総合的に判断されるべきである。
2 経営の破たんした住宅金融専門会社甲社の設立母体であるA銀行が閣議決定等で示された処理計画に沿って甲社に対する貸付債権を全額放棄した場合において,当時甲社の資産からの回収見込額が甲社の設立母体以外の金融機関の甲社に対する債権の合計額を下回っていたこと,甲銀行が,甲社の経営に深くかかわり,甲社の再建計画に責任を持って対応することを明確にしていた等の事情により,上記金融機関の一部から同金融機関が甲社に対して有する債権の元本損失部分についても責任を負うように求められていて,せいぜい甲銀行の上記債権を放棄する限度で損失を負担する旨を主張してそれ以上の責任を回避することしかできない情勢にあったことなど判示の事実関係の下では,上記債権相当額は,放棄の時点でその全額が回収不能であることが客観的に明らかになっており,法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として上記放棄の日の属する事業年度の損金の額に算入されるべきである。
【参照法条】
法人税法22条3項3号
【解説】
債権の貸倒れの意義には、以下の2つの場合がある。
1、債権放棄等により、法律上も消滅する場合、
2、債権は法律上存在するが、事実上、債権の行使および実現・回収が不可能であるため、経済的に無価値の場合
本判決は、事実上の貸倒れの場合に該当する事例である。