「老朽化のため建て直し」ってどういうこと? - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

森岡 篤
有限会社パルティータ 代表
建築家

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対象:住宅設計・構造

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「老朽化のため建て直し」ってどういうこと?

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家の寿命を科学する
よくニュースで「○○は、老朽化のため建て替えが決まりました」と流れることがあります。
この「老朽化」とは、どんな状態を指すのでしょう。

辞書で「老朽化」とは、「古くなり、役に立たなくなること」とあります。
「役に立たなくなる」とは抽象的ですね。ここでは、物理的耐久性として考えてみます。
「古くなり、もう耐久性が限界」とは、どんな状態か。

・仕上
クロス:貼り替え、ペンキ:塗り替え、フローリング:貼り替え又は削り出し(ムク)、
このように、通常の仕上は、やり替えることで蘇ります。
仕上をやり替えれば、建物の機能も蘇るはずです。

・設備機器
エアコン、湯沸器等の機器は、個体差がありますが、耐用年数があり、いずれ交換が必要となります。
交換すれば、もちろん役に立ちますね。

・構造体
「耐久性が限界」とは構造体の状態をさすのでしょう。

RC(鉄筋コンクリート)構造で考えてみましょう。
健全なRC構造体でも、年月と共に表面からアルカリ性が抜けて(中性化)きます。
中性化は、進行を遅らせることはできますが、直す(戻す)ことはできず、放置すればいずれ鉄筋が錆び始め、構造体としてダメージを受けます。

木造ではどうでしょうか。
材料自体の耐久性は100年以上あるのは、私のコラム「木造の耐久性」のとおりです。
木材の弱点は、白アリや腐食です。変形することも弱点の一つでしょう。

木造の場合、部分的に腐食したり、白アリ被害にあっても、被害にあった部分だけ新材と交換することができます。
1000年級の寺社仏閣も、このような修繕を経て、現存しています。
木造では、「悪い部分を交換する」を繰り返せば、老朽化、寿命は無い、とも言えます。

つまり、「老朽化」とは、耐久性ではなく、「修繕する価値がない」とか「修繕する気がない」ということを意味しているのです。