「いつもスタッフには言っているんですが・・・」
この店を訪れたマネジャーが、安全衛生に関する新しいルールがキチンと実施できていない状態を見て、店長に問題点を指摘しました。その指摘に対して店長はこのように答えたのです。マネジャーは続けました。
「店長。あなたはきっと新しいルールについてスタッフに伝えたのでしょう。でも、全然出来ていない。それは、スタッフの問題なのですか?あなたの仕事のゴールは、伝えることなのですか?それとも、新ルールが運用されていることなのですか?スタッフが出来る様になるのは誰の仕事なのでしょうか?」
店長は、「自分はいつもスタッフに伝えている」と主張しています。自分は自分の仕事をちゃんとやっているように弁解しているのです。しかし、マネジャーは、それは仕事のゴールではないと指摘しました。もちろん、「スタッフに伝えること」も店長の仕事です。でも、それは「仕事の一部」に過ぎません。仕事には目的とゴールがあります。目的は「なぜその仕事をやるのか?」「やったらどうなるのか?」です。そして、ゴールは、「その仕事の目的を満たすための目標を達成すること」です。今回の場合は、新ルールを適用して、さらに安全衛生のレベルを高めることが店長の仕事だったのです。 ※目的と目標については明日またお話ししますね。
店長という立場は、その店の運営の最高責任者です。目的のための手段を講じて目標を達成するのが仕事です。その為にスタッフを教育し、実行力の高いチームに育てていくのが仕事です。しかし、仕事はそこでは終わりません。そのチームを動かして目標を達成するのが「仕事のゴール」つまり、ミッションなのです。しかし、その目標が未達の場合、店長は自分を守りたい衝動に駆られてしまいます。自分はやることはやっている・・・でも、出来なかった。それには、原因がある。だから許して欲しい・・・そう言いたいのでしょうか?
「いつも言っているんですが・・・」これは、「自分は言うことは出来るが、実行させることは出来ません。」と言っているのです。スタッフを動かすことは自分には出来ないと宣言しているのです。これでは「店長」とは言えません。ただのFAXです。ただの業務連絡書です。ただのメールです。
私のマクドナルド時代の経験をお話しましょう。店長からスーパーバイザーに昇格したときのことでした。新任の私は意気揚々と、部長からの指示や新しいマニュアルなどを部下である店長に伝えていました。「これはこう決まった。」「これについてはこうして下さい。」「ここはこうでなくてはなりません。」・・・毎日たくさんの指示をして仕事をした気分になっていました。しかし、なぜだか店長は一向に動いてくれません。指示は確かにしていたのです。店長も「はい、わかりました。」とは言ってくれていたはずなのです。でも、してくれません。業を煮やした私は店長に「なぜやっていないのか?」と、聴きました。すると、店長はこう答えました。
「忙しいですから。」
「前のやり方の方がやりやすいですから。」
「別にしなくても問題は無いんでしょ?」
店長は、その指示やマニュアルの重要性など何も理解していませんでした。つまり、私は、店長が納得して行動するような伝え方が出来ていなかったのです。ただ口うるさく言っていただけだったのです。落ち込む私に、ある先輩が、「リーダーは、『いつも言っているんですが・・・』を言ってはいけない。これは部下を持つ上司として最も恥ずかしい言い訳なんだよ。」と教えて下さいました。この言葉は、その後の私のポリシーのひとつになっています。
「いつも言っているんですが・・・」
「伝えること」は仕事のゴールではありません。伝わって、実行されてゴールを達成する事が仕事です。手段やプロセスで満足しているようでは責任者の仕事は出来ませんよ。
店長は、伝達マシンではありません。実行するリーダーなのです。
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