- 吉本 彰夫
- 医療法人社団 吉翔会 吉本歯科医院 院長 歯学博士
- 香川県
- 歯科医師
-
087-818-1118
対象:一般歯科・歯の治療
- 赤岩 経大
- (歯科医師)
- 赤岩 経大
- (歯科医師)
親知らずが写っているレントゲンです。
わかりやすく手前の7番目の歯の後ろ側の根と神経血管部分にラインを引いています
(本来は右の歯のように神経血管が通っているトンネルの状態ですので、黒い線となって写ります)。
「親知らず」⑧が⑥、⑦に対して横にむいてきてるわけですね。
今後どうなると思いますか?
神経が圧迫され痛み出すのです。
横に倒れていますから、自然に待っていても絶対生えてきませんね。
ほっといても上向きに出てこないですから、生えてきたら抜きましょう、
歯茎に隠れてるから抜くのたいへんですから、
腫れますからっていって置いておくと、
こんな風になってしまうのです。
どうなってしまったか?わかりますか?
親知らずによって、手前の歯の神経がちょんとブチ切られていますよね。
昔のゲームに「パックマン」ってありましたよね。
そんなイメージでしょうか。
食べられてしまっています。
ものすごく痛がりますよね、この患者さんは。
とても痛いと思います。
歯の神経血管は顎の後ろから顎骨の深い部分中を通って歯の根から入っていきます。
ここをちょんと切られるわけですから、とんでもなく痛いのです。
「何とか歯を残してください、親知らずを抜きますから」と患者さんはおっしゃいました。
しかし、すでに⑦の神経が切れていますから、指が切れて落ちてるわけですから、
死んだ人をよみがえらせてって言われても残念ながら手遅れなのです。
無理なのです。なので親知らずは他の歯に影響が出る前に抜いたほうが良いと私は思っています。
また、磨けない磨きにくいということも分かると思います。
磨けないということによって何が起こるんでしょうか。
8番目と7番目の歯の間に汚れが溜まっていきます。
そこが磨けないので腫れていきます。
これを智歯周囲炎と専門用語では言います。
「親知らずが腫れて痛いんです!」と言われる方のほとんどがこれであります。
ですので親知らずを抜かないといけないという診断になるわけです。
これが、この時に抜けばいいんです。
けれども実はそうなった時には抜けないんです。
腫れてますから。
腫れてる時って歯は抜いてはいけない、抜けないんですね。
なぜかといいますと、麻酔が効きません。
麻酔をパンパンに腫れているところにしますと、パンパンの風船にさらに空気を入れ込んだらどうでしょう、
バーンと弾け飛びますよね。
圧力がかかって、バイ菌がさらに奥に押し込められてしまいます。
そのようになりますので、そんな弾けてるところに麻酔薬を注射したら、ものすごい激痛になります。
…読んでいるだけでも痛そうでしょう?(泣)
麻酔という名の下にものすごい痛みになってしまうわけです。
このような状態では痛くない麻酔はできません。
我慢していただくしかないのです。
「こんなに痛いのに先生ひどい!なんとかしてよ!」と言われても、痛み止めのお薬を処方するしか
方法がないのです。
ですから通常腫れているときには、腫れを薬で抑えて2、3日から1週間待ってから歯を抜く必要があります。
また、腫れてると言うことは、つまりうっ血している状態ですから、そんな状況で歯を抜いたらどうでしょうか?
ダムの決壊と一緒です。
血が止まりません。
健康な歯茎ではないわけですから、一気に血が溢れ出してしまうわけです。
抜いた後に血が止まるか止まらないか、これも大事な問題です。
ただ抜けばいいという問題ではありません。
その抜いた後キチンと血が止まるのか、痛くないのか、きれいに傷が治っていくのかどうか、
それも抜くということにおいては大事なことです。
ですから、そのように腫れてしまった場合には、化膿止めや胃薬や痛み止めや腫れ止めなどを飲んで
腫れを引かせて、それから抜く。
ということが身体にやさしい治療となります。
また抜くにあたっては親知らずの根っこの場所、位置によっては、その根っこの先が神経や血管に近い場所にあったり、鼻の部屋に潜り込んでいたり、することがあります。
この場合には口腔外科の専門医において抜くことをお薦めしております。
レントゲン上では透けて見えますから、神経血管の位置と根っこの位置がズレていても、
重なっていてもすべて同じ写真に見えてしまいます。
神経、血管の位置と根っこの位置がまったく外れていても、右にいようが左にいようが、重なっていようが、
神経と根っこが絡みついていようがレントゲン上では全く同じ写真に見えてしまうのです。
レントゲン写真を見て、それでもって歯を抜きやすいのか、抜きにくいのか、
そういう正確な診断はつかないのです。
ですので、そういう風にたまたま当たる人、1%とか何千人に1人とかかも知れません。
しかしながら、それに当たった人は残念、不幸なことになります。
ここで「平面写真」と「現実の立体物体」の差について、写真を交えて説明します。
下の写真をご覧下さい。
正面から撮影した手ですが、指が2本見えています。
そして次の写真をご覧下さい。
違う方向から撮影したら指は3本うつっています。
さらに一本目と二本目との間隔は開いていますが、二本目と三本目との間隔はほとんどないことがわかります。
このようなことが現実に歯科の治療現場で起きているのです。
このように平面画像で見た場合だけでは、実際の物体がどうなっているのかを
正確に診断することができないということが言えます。
平面写真やパノラマレントゲンの写真だけでは「抜いてみないとわからない」
ということが現状です。
親知らずを抜いた後はどうなるのでしょうか?
ズラされてしまった7番目や6番目、はたまた正面の小さな前歯たち、どうなると思いますか?
元の位置に戻ってくれると思いますか?
これ以上倒れないでそのまま残ってくれると思いますか?
イメージしてくださいね。
家にトラックが突っ込んできました。
大黒柱にぶつかって、大黒柱が傾いて今にも倒れそうです。
トラックはさらに加速しようとエンジンをふかしています。
大黒柱が、6番目7番目の歯に相当し、トラックが親知らずだとお考え下さい。
8番目の親知らずを抜きました。
トラックを除けました。
いかがでしょうか?
大黒柱は元のまっすぐな位置に戻るでしょうか?
大黒柱は重い屋根を支えています。
大黒柱が傾いた家で、地震が来たらどうなるでしょうか?
常に噛む力がかかる訳です。
当然、傾いた大黒柱が元の真っ直ぐな状態に戻ることもなく、倒れていきます。
倒れないようにするために補強が必要です。
場合によっては、起こし上げることが必要になることもあります。
ただトラックが常に押し続けるという状況は回避されていますので、倒れるスピードは緩やかになります。
早めの抜歯をお勧めします。
また、親知らずが手前の歯の骨を溶かしていた場合、手前の歯を押し壊して穴を開けていた場合、
抜いた後はどうなるのでしょうか?
寒い朝、寝起きに布団を引っ張りはがされた状態をイメージしてみてください。
私も真冬の朝に「起きなさい!遅刻です!」と言われ布団をはがれる瞬間に、
「ひ~~」と叫びたくなるほどつらいのですが、すごく寒いですよね。
腫れた歯茎があったことによって、冷たい水や空気に触れずに済んでいたのですが、
悪いものがなくなりますので、当然しみたり痛んだりします。
それは抜いた傷が治ってから検討することになります。
残念ながら、神経を取らなければ日常生活が困難になられる方もいらっしゃいます。
しかしそのようなデメリットを考えてもそのまま置いておくデメリットよりも将来的に手前の歯が残るというメリットは大きいと思います。
大きいパノラマレントゲン写真で現状を確認しておくということが本当に大切なことなんですね。
親知らずって抜いた方がいいの?抜かないほうがいいの?
http://www.youtube.com/watch?v=CrTvHSGAZxo
噛み合わせ専門歯科医院 香川県高松市 吉本歯科医院
このコラムの執筆専門家
- 吉本 彰夫
- (香川県 / 歯科医師)
- 医療法人社団 吉翔会 吉本歯科医院 院長 歯学博士
噛み合わせ専門歯科。インプラント、矯正など質の高い治療を行う
香川県高松市にある歯科医院。四国ではかみ合わせ専門歯科医院の先駆け。インプラント治療に関しては世界3大メーカーのノーベルバイオケア社、スリーアイ社より、功績、実績をたたえトロフィーを授与。高度な医療を患者さんに提供するよう努めます。
「親知らず」のコラム
親知らずが噛み合わせを悪くするってご存知でしたか?(その4)(2014/02/06 11:02)
親知らずが噛み合わせを悪くするってご存知でしたか?(その3)(2014/02/06 11:02)
親知らずが噛み合わせを悪くするってご存知でしたか?(その2)(2014/02/06 11:02)
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