
- 西野 泰広
- REPsコンサルティング レップスコンサルティング 代表
- 埼玉県
- 経営コンサルタント
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
「集団的消費者被害回復の訴訟制度」と「その脅威」。
前回からの続きで、「消費者被害回復の訴訟制度」が “消費者にとっては有益” となる反面、“企業
(事業者)にとっては脅威” な存在になることをお伝えいたします。
この制度の骨格となる “消費者裁判手続き特例法” が、2013年12月4日に参議院本会議で全会一致
をもって可決成立しました、3年以内に施行となります。
内容をご覧になりたい方は、インターネットの検索で「消費者庁 集団的消費者被害回復の訴訟制度」
と入力し検索して頂ければ『集団的消費者被害回復に係る訴訟制度』を見ることが出来ます。
この訴訟制度の冒頭に下記の趣旨が記述されています。
……………………………………………………………………………………………………
消費者被害(特に財産的被害)は、事業者との取引により相当多数の消費者に集団的に生じる傾向にあり
ます。これに対し、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差により消費者が自ら被害
の回復を図ることには困難を伴う場合が少なくありません。
こうした状況を踏まえ、消費者に生じた被害を一括して実効的に回復するための民事裁判手続及びその
手続を追行する特定適格消費者団体の認定制度等の創設をする集団的消費者被害回復に係る訴訟制度
について検討しております。
……………………………………………………………………………………………………
特に少額被害などでは、訴訟手続の手間などから “訴訟をあきらめて、泣き寝入り” していた被害者が
多く、そのような被害者を一括救済するのがこの制度の狙いです。
被害に遭われた消費者には有益な制度となる反面、不法行為を働いた企業(事業者)にとっては大変な
脅威となる法制度です。
【消費者の有益性】
この『集団的消費者被害回復の訴訟制度』の最大の特徴は、個々の被害者に代わり国が認定した適格
消費者団体が多数の被害者の「損害賠償請求権」を代表し当該事業者に訴訟を起こすことで、被害者
の訴訟負担を大幅に軽減することができ、その結果、少額被害の回復が容易となります。
もう一つの特徴は、2段階システムを採用していることです。
■1段階:共通義務確認訴訟(簡易確定手続き)
適格消費者団体が個々の被害者からの相談を基にして事業者を提訴する。
その後、裁判所から何だかの判決(勝訴、和解)が出ます。
(債権の存否・内容を適切・迅速に判断することが困難な場合は、訴えを却下することがある)
※敗訴になれば、この段階で終了です。
この結果を基にして2段階目の手続きを行うため、不要な混乱を低減させています。
■2段階:個別の消費者の債権確定手続(誰にいくら支払うか、簡易確定を決定)
★簡易確定手続きに対象となる被害者を参加させる仕組み
【被害者の参加を募る仕組み】
当該事案内容と当該商品、サービス、行為を公告(告知)または通知することで、対象債権者を
募ります。
≪ 裁判所 ≫ → 官報で公告
官報への公告(簡易確定手続開始決定の主文、対象債権・対象消費者の範囲等)
≪ 特定適格消費者団体 ≫ → 新聞、インターネット(Web)で公告
・対象となる債権を有する消費者(被害者)に対し書面やメール等で個別に通知する
・新聞やインターネットなどで公告する
≪ 当該事業者 ≫ → 自社ホームページ、新聞、インターネット(Web)で告知
※適格消費者団体からの依頼を基に告知する
・裁判所の公告事項の公表を行う
・対象消費者の情報が記載された文書の開示する(団体の申立てや裁判所の開示命令)
※不相当な費用又は時間を要する場合を除く
≪ 消費者庁 ≫ → 消費者庁ホームページ、インターネット(Web)で公告
・確定判決の概要等を公表する(インターネット等)
上記の公告(告知)で適格消費者団体が対象債権の参加を募り、参加した被害者を代表し集団訴訟と
して損害賠償を事業者に求める仕組みです。
【当該被害者が行うことは二つ】
◆一つ目は、
当該被害者は対象債権を有することを立証(被害の立証)しなければなりません。
(被害の立証を “食材の虚偽表示” の例で言うと、当該事案の食事をしたことを立証する)
◆二つ目は、
適格消費者団体が募る、対象債権に参加することです。
※参加「する」か「しない」かは、個人の判断に任されています。
後は適格消費者団体が中心となり損害賠償請求の手続きを進めることになります。
このように被害者の負担が軽減されることで、対象債権に参加する被害者が増加し賠償額も高額になる
と容易に予測出来ます。
これが “消費者にとっては有益” となり “企業(事業者)にとっては脅威” な存在となります。
被害者(消費者)にとっては大変有益な法制度ですので、施行されれば、テレビや新聞で大きく報道さ
れると思われます。
次回は、どのような行為が、特定適格消費者団体による集団訴訟請求の対象になるかお伝えします。
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