労働紛争の裁判外解決手続(ADR) - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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村田 英幸
村田 英幸
(弁護士)

閲覧数順 2016年12月04日更新

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労働紛争の裁判外解決手続(ADR)

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労働紛争の裁判外解決手続(ADR)

1.行政による個別労働関係紛争解決手続 
 ①労働基準監督署
 ②都道府県労働局長による助言指導援助
③個別労働関係紛争解決促進法に基づく都道府県労働局の紛争調停委員のあっせん
④雇用均等法に基づく紛争調整委員会による調停

2.行政による集団的労働関係紛争解決手続 
・労働委員会による不当労働基準法行為審査手続
・労働関係調整法に基づく労働委員会による労働争議行為のあっせん・調停・仲裁・緊急調整

3、弁護士会などによる裁判外紛争解決手続(ADR)
 ・仲裁


◎行政による労働紛争の解決

◎労働基準監督署
・費用がかからない(無料)。
・労働基準法・労働安全衛生法・労働者災害補償保険法などの違反事件を取り締まる。
・なお、賃金や残業代の未払い、労働災害など、刑罰の適用がある案件が、対象となる。
・使用者が是正勧告される。
・客観的証拠(タイムカード、給料明細など)で残業代未払いが明確で少額の場合には、労働基準監督署の指導で、使用者が任意に支払い、事実上解決することも多い。
・集団的で悪質な賃金不払いについては、労働基準法違反(刑事事件)として強制調査され、事業者の実名や未払賃金額が公表されることもある。しかし、刑事訴追されることは稀である。
 なお,使用者は,労働基準法違反の事実を申告をしたことを理由として労働者に対し解雇等の不利益な取扱をすることはできない。

◎都道府県労働局長の助言・指導・援助
 都道府県労働局長自らが助言指導する場合は少なく、労働基準法違反をした会社の本社を管轄する労働基準監督署が実際の指導などを担当する。
 なお,使用者は,都道府県労働局長による援助の申請をしたことを理由として労働者に対し解雇等の不利益な取扱をすることはできない。

◎個別労働関係紛争解決促進法に基づく紛争調整委員会のあっせん
(1)あっせんとは,個別労働紛争解決促進に関する法律に基づき,労働者と使用者間に中立な第三者が入って間を取り持ち,紛争を解決するものをいう。
一部の地域の労働委員会や都道府県労働局(労働相談情報センター等)が行っているあっせんがある。
 労働委員会や労働相談情報センター,都道府県労働局は無料で利用できるという利点がある。
(2)手続
紛争調整委員会によるあっせん手続の流れは以下のとおりである。
 ・あっせん申請書の提出
 ・紛争調整委員会による調査の開始,当事者から事前の事情聴取
 ・あっせん期日の決定
・当事者へのあっせん期日の通知
 ・あっせん期日(通常は1回のみ。当事者間の話し合い促進,あっせん案の作成等)
 ・あっせん案の受諾、あっせんによる和解成立

(3)あっせんは、あくまで労使の話し合いにより紛争解決を図るものである。したがって、相手には話し合いに応じる義務や,あっせん案に合意する義務はない。
したがって,使用者があっせんに応じる義務はなく、使用者側が出席を拒否するケースは約4割ある,
解決率は4割弱。
あっせん案に合意しなかった場合は,あっせん手続は打ち切られる。
労使双方出席でも合意に至らないケースが約3割ある。
あっせん案に合意しない場合には、使用者があっせん案に同意しない場合だけでなく、労働者があっせん案に不満で合意しない場合(例えば、解雇を撤回してもらいたいのに、労働者の希望が認められないケース、解決金の額が不満な場合など)もある。
 他方,あっせん案を労使双方が合意すれば,和解書面を取り交わすこととなり,その内容で労使双方の権利義務が確定する。
ただし,それだけでは強制執行力までは生じないため,仮に相手が合意した義務を果たさない場合は,公正証書を別途作成するか、または裁判を提起して判決を獲得してから強制執行するしかない。
 なお,使用者は,あっせんの申請をしたことを理由として労働者に対し解雇等の不利益な取扱をすることはできない。

メリット
・費用がかからない(無料)。
・比較的時間がかからない。
・準備などに比較的労力がかからない。
・あっせん不成立の場合に30日以内に訴え提起すれば、消滅時効の中断の効力がある。

デメリット
・あっせんの結果について、裁判外の和解と同じ効力しかない。強制執行はできない。


◎雇用均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)に基づく都道府県紛争調整委員会による調停
男女差別・セクハラがからむ事案のため、個別労働関係紛争解決促進法の「あっせん」とは異なり、「調停」手続であり、担当部署も異なり、違う扱いになっている。

(特色)
・個人の労働者と使用者が当事者となる。
・労働組合が当事者になる事案については扱わない。
・労働者間の紛争については扱わないが、セクハラをした個人を呼び出して事情聴取することもできる。
・調停期日は1回だけではない。
・調停委員は学識経験者、労働事件に詳しい弁護士など。
・労使双方の対立(解決についての方針、解決金の額)が激しい事案には不向き。
・個別労働関係紛争解決促進法のあっせん手続と異なり、訴訟手続の中止制度がある。
・調停不成立の場合に30日以内に訴え提起すれば、消滅時効の中断の効力がある。
 なお,使用者は,あっせんの申請をしたことを理由として労働者に対し解雇等の不利益な取扱をすることはできない。

メリット
・費用がかからない(無料)。
・比較的時間がかからない。
・準備などに比較的労力がかからない。

デメリット
・調停の結果について、裁判外の和解と同じ効力しかない。強制執行はできない。


2、集団的労働紛争ADR
◎労働委員会による不当労働行為審査手続
・集団的労使紛争、労働組合に関する不当労働行為・労働争議、不当労働行為に関する組合員個人の救済に限られる。
・東京都にはないが、他の地方では、個別労働紛争を扱う場合がある。
・各都道府県に1つの地方労働委員会と、東京に中央労働委員会がある。
・個別の案件を扱う委員は3人(公益委員[学識経験者]、労働者委員、使用者委員の各1名)
・労働委員会による不当労働行為審査手続の対象は、労働組合法20条に定める団体交渉拒否、不誠実な団体交渉
・労働組合法が根拠法

◎労働争議行為に関する労働委員会のあっせん・調停・仲裁・緊急調整
・対象は、ストライキなどの労働争議の場合
・労働関係調整法、労働組合法20条が根拠法
・なお、公益事業(例えば、電気ガス水道など。労働関係調整法8条1項)の争議行為については特例があるが、ここでは省略する。
・個別の案件を扱う労働委員会の委員は3人(公益委員[学識経験者]、労働者委員、使用者委員の各1名)


3、弁護士会などによる裁判外紛争解決手続(ADR)
仲裁
仲裁とは,紛争の当事者労使双方が仲裁人の判断に従うという「仲裁合意」をした上で,仲裁人が当事者の言い分を聞いて判断を示す手続である。
仲裁の合意がないと仲裁手続を開始できないため、事前に「仲裁合意」がない場合、当事者は仲裁に応じる義務はなく、仲裁を拒否すれば、裁判手続を利用するしかない。
仲裁の大きな特徴としては,当事者側が仲裁人を指名する手続であるということが挙げられる。
 「仲裁合意」は,労働契約締結の前後いずれでもできる。ただし,労使の交渉力の格差にかんがみて,労働契約時に、将来の労働紛争について、仲裁合意をすることは禁止されている。
通常は,紛争が具体化した後に当事者の一方から仲裁による解決の申出がなされる。
仲裁合意書が作成された上で仲裁手続に入ることが多い。
 また,各地の弁護士会では,「仲裁センター」,「紛争解決センター」等の名称で仲裁手続を行っており,労働者側・使用人側いずれも経験している弁護士を仲裁人候補者として推薦してもらうこともできる。

弁護士会のADRを「行政による紛争解決」に分類しているインターネットのホームページを見かけたことがある。しかし、弁護士会は弁護士以外の民間人に対する行政作用を有していないので、間違いである。
弁護士会のADRは有料である。

(2)手続
仲裁手続の流れは以下のようになる。
 ①仲裁の申立て
 ②仲裁の合意書の作成
 ③(仲裁合意がない場合)仲裁予定者の指名
  (仲裁合意がある場合)仲裁人の選任
 ④当事者への通知
 ⑤和解案提示,和解期日
 ⑥和解成立,または(和解不成立の場合)仲裁人による仲裁判断   

(3)仲裁人が示した仲裁判断を当事者双方が受諾すれば,仲裁人は,「仲裁判断書」を作成する。この仲裁判断は,確定判決と同様の効力を有しているので,仮に相手が仲裁判断に基づく義務を履行しない場合は,裁判所から執行決定を得て強制執行をすることができる(仲裁法46条)。仲裁手続に重大な瑕疵や法令違反がない限り執行決定がなされることになる。
 また,相手が仲裁判断の結果に不服があった場合は裁判所に仲裁判断の取消しを求めることができる(仲裁法44条)。しかし,仲裁手続や仲裁内容に法令違反がなければ容易に取消しが認められることはない。
 ただし、裁判所は3審制を取っており慎重な判断で、不服のある当事者の手続保障がされているのに対して、仲裁手続はいわば一審限りで、しかも仲裁人の資質に左右される。その意味でも、リスクが大きい。
 このように,仲裁はその結果が両当事者を当然に拘束する調整手続であることから,大企業間の商事仲裁などを除いては、実際にはあまり利用されていないようである。


裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
(時効の中断)
第25条1項  認証紛争解決手続によっては紛争の当事者間に和解が成立する見込みがないことを理由に手続実施者が当該認証紛争解決手続を終了した場合において、当該認証紛争解決手続の実施の依頼をした当該紛争の当事者がその旨の通知を受けた日から1か月以内に当該認証紛争解決手続の目的となった請求について訴えを提起したときは、時効の中断に関しては、当該認証紛争解決手続における請求の時に、訴えの提起があったものとみなす。

(訴訟手続の中止)
第26条  紛争の当事者が和解をすることができる民事上の紛争について当該紛争の当事者間に訴訟が係属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、当該紛争の当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、4か月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。
一  当該紛争について、当該紛争の当事者間において認証紛争解決手続が実施されていること。
二  当該紛争の当事者間に認証紛争解決手続によって当該紛争の解決を図る旨の合意があること。
2  受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
3  第一項の申立てを却下する決定及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に対しては、不服を申し立てることができない。


メリット
裁判所に仲裁調書について執行決定してもらうことにより、強制執行ができる。
比較的時間がかからない。

デメリット
準備などに比較的労力がかかる。
証人尋問をできる場合が限られている。ただし、証人的な第三者に同行してもらい陳述してもらうこと、または陳述書を作成してもらい提出することは可能である。
費用がかかる。紛争の額や手紙の実施回数などによって、費用は違う。

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