- 河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権
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審査指南改正のポイント
2013年12月6日
執筆者 河野特許事務所
弁理士 河野英仁
1.概要
国家知識産権局は2013年11月6日改正審査指南を発表した。実用新型特許出願及び外観設計特許出願に対しては無審査制度が採用され、実体審査を経ることなく、方式審査のみが行われ、特許権が付与される。
方式審査においても、新規性(専利法第22条第2項、23条第1項)を有するか否かを審査することとなっているが、審査官は明らかに新規性を有しない場合を除き、検索(先行技術調査)を行うことなく、特許を付与する。2012年、実用新型特許出願は74万件、外観設計特許出願は65万件を突破し、膨大な数の特許権が付与されている。
しかしながら、この中には新規性を有さない多くの権利も含まれており、権利を付与する特許についての質を高める必要がある。
そこで、国家知識産権局は、審査官が検索を行い、新規性の有無を判断できるよう、以下のとおり審査指南の改正を行った。本改正審査指南は2013年10月15日から施行されている。
2. 審査指南第1部分第2章第11節の改正
実用新型特許出願の方式審査において審査官は、新規性の有無を判断するに際し検索を行う必要はなかった。今回の改正により審査指南の文言「一般的に、検索を介しては」及び「検索をせずに得られた」の部分が削除された。審査官は実用新型特許出願についても、適宜先行技術調査を行った上で審査を行うことができる。
改正前 |
改正後 |
11. 専利法22条2項に基づいた審査 方式審査において審査官は一般的に、検索を介しては、実用新型に明らかに新規性を具備しないものかを判断しない。審査官は、検索をせず得られた先行技術又は抵触出願に関わる情報に基づき、実用新型が新規性を明らかに具備しないものかを判断して良いとする。 但し、実用新型が正常でない出願に関わる場合、例えば、明らかに先行技術を盗作し、又は内容が実質的に明らかに同じである特許出願を重複して提出する場合は、審査官は検索で得られた対比書類、又はその他の方法で得られた情報に基づいて、実用新型が明らかに新規性を具備しないものかを判断しなければならない。 新規性に関する審査は本指南第二部分第三章の規定に参照する。 |
11. 専利法22条2項に基づいた審査 方式審査において審査官は実用新型特許出願に対し、明らかに新規性を具備しないか否か審査する。審査官は、その獲得した先行技術又は抵触出願に関わる情報に基づき、実用新型特許出願が新規性を明らかに具備しないものかを審査することができる。実用新型が正常でない出願に関わるかもしれない場合、例えば、明らかに先行技術を盗作し、又は内容が実質的に明らかに同じである特許出願を重複して提出する場合は、審査官は検索で得られた対比書類、又はその他の方法で得られた情報に基づいて、実用新型特許出願が明らかに新規性を具備しないものかを審査しなければならない。 新規性に関する審査は本指南第二部分第三章の規定に参照する。 |
3. 審査指南第1部分第2章第13節の改正
専利法第9条はダブルパテントの禁止について規定している。方式審査においても専利法第9条の要件を具備するか否かが判断される。
改正前の審査指南では、「一般的に、検索による審査を行わない」と規定されていたが、当該文言は削除された。改正後審査官は適宜検索を行い、同一発明の後願を拒絶することができる。
改正前 |
改正後 |
13. 専利法9条に基づいた審査 専利法9条1項の規定によると、同一の発明創造には1件の特許権だけを付与することができる。専利法9条2項の規定によると、2名以上の出願人が同一の発明創造について別々に特許出願する場合、特許権は一番先に出願した者に付与する。 方式審査において、実用新型特許出願が専利法9条の規定に基づくと、特許権を取得できるものかについては、一般的に、検索による審査を行わない。但し、審査官は同一の発明創造に対して特許出願した出願人がいることを知った場合、審査を行うべきである。 同一の発明創造についての処理は、本指南第二部分第三章第6節の規定を参照する。 |
13. 専利法9条に基づいた審査 専利法9条1項の規定によると、同一の発明創造には1件の特許権だけを付与することができる。専利法9条2項の規定によると、2名以上の出願人が同一の発明創造について別々に特許出願する場合、特許権は一番先に出願した者に付与する。 方式審査において、審査官は実用新型特許出願が専利法第9条の規定に合致するか否かを審査する。審査官はその獲得した同一の発明創造の特許出願または特許に基づき、実用新型特許出願が専利法第9条の規定に合致するか否かを審査することができる。 同一の発明創造についての処理は、本指南第二部分第三章第6節の規定を参照する。 |
4. 審査指南第1部分第3章第8節の改正
外観設計特許出願に対しては、方式審査にて新規性を有するか否かの判断が行われる。改正前は実用新型特許出願と同じく、審査官は検索を行う必要は無かった。今回の改正により審査指南の「通常は検索を行わず」の文言が削除され、単に
「方式審査において、審査官は、外観設計特許出願が明らかに専利法第23条第1項の規定に合致していないかについて審査を行う。
審査官はその獲得した現有設計或いは抵触出願の情報に基づき、外観設計特許出願が専利法第23条1項の規定に明らかに合致していないか否かを判断することができる。
」と規定された。
改正前 |
改正後 |
8. 専利法第23条1項に基づいた審査 外観設計特許出願に係わる方式審査において、通常は検索を行わず、審査官はただ出願書類の内容及び一般消費者の常識から、保護を求める外観設計特許出願が専利法第23条1項の規定に明らかに合致していないか否かを判断するだけでよい。 ただし、審査官は検索を経ずに獲得した現有設計又は抵触出願に関する情報に基づき、外観設計が専利法第23条1項の規定に明らかに合致していないか否かを判断することができる。 明らかに現有設計を剽窃し、または明らかに内容が実質的に同一である特許出願など、非正常的出願に係わる外観設計については、審査官は検索により取得した引例文献またはその他のルートにより取得した情報に基づき、外観設計が専利法第23条1項の規定に明らかに合致していないか否かを判断するものとする。 同一または実質上の同一に関する審査は本指南第四部分第五章の関連規定を参照する。 |
8. 専利法第23条1項に基づいた審査 方式審査において、審査官は、外観設計特許出願が明らかに専利法第23条第1項の規定に合致していないかについて審査を行う。 審査官はその獲得した現有設計或いは抵触出願の情報に基づき、外観設計特許出願が専利法第23条1項の規定に明らかに合致していないか否かを判断することができる。 明らかに現有設計を剽窃し、または明らかに内容が実質的に同一である特許出願を重複して提出するなど、非正常的出願に係わるかもしれない外観設計については、審査官は検索により取得した引例文献またはその他のルートにより取得した情報に基づき、外観設計特許出願が専利法第23条1項の規定に明らかに合致していないか否かを審査するものとする。
同一または実質上の同一に関する審査は本指南第四部分第五章の関連規定を参照する。 |
5. 審査指南第1部分第3章第11節の改正
外観設計特許についても専利法第9条によりダブルパテントが禁止される。改正前は、「一般的に検索による審査は行わない」と規定されていた。法改正により、当該文言が削除された。
改正前 |
改正後 |
11.専利法9条に基づいた審査 専利法9条1項の規定によると、同一の発明創造には1件の特許権だけを付与することができる。専利法9条2項の規定によると、2名以上の出願人が同一の発明創造について別々に特許出願する場合、特許権は一番先に出願した者に付与する。 方式審査において、外観設計特許出願が専利法9条の規定に基づくと、特許権を取得できるものかについては、一般的に検索による審査を行わない。但し、審査官は同一の外観設計に対して特許出願した出願人がいることを知った場合、審査を行うべきである。 |
11.専利法9条に基づいた審査 専利法9条1項の規定によると、同一の発明創造には1件の特許権だけを付与することができる。専利法9条2項の規定によると、2名以上の出願人が同一の発明創造について別々に特許出願する場合、特許権は一番先に出願した者に付与する。 方式審査において、審査官は外観設計特許出願が専利法第9条の規定に合致するか否かについて審査を行う。審査官はその獲得した同一の外観設計特許出願または特許に基づき、外観設計特許出願が専利法第9条の規定に合致するか否かについて審査を行うことができる。 |
6.コメント
毎年、膨大な数の実用新型特許及び外観設計特許が出願されているが、本審査指南により明らかに新規性のない特許が排除され、登録される特許件数はある程度減少すると思われる。
ただし、実用新型特許に対する創造性(進歩性)のレベルは低いため、少しの差異が認められ一旦特許となってしまえば無効とすることが困難になるという問題がある。競合他社の実用新型特許権に対してはこれからも十分な注意が必要であろう。
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