こんにちは。消費者考動研究所代表 消費者教育コンサルタント/消費生活アドバイザーの池見です。
前回よりシリーズでご紹介している「子どもを自分の自転車に乗せる前に」。
今回は、子どもを乗せる自転車とチャイルドシート(幼児座席)についてです。
最近は、そのデザイン性や機能性、中には高級ブランドの商品まで、本当にいろいろなタイプの自転車やチャイルドシートが市場に出回っていますね。
でもちょっと待って!
チャイルドシートを選ぶ前に確認しなければならない、もっと大事なチェックポイントがあるんです。それは…。
自転車にも「最大積載質量」があります!
突然ですが、皆さんが乗っている自転車は、果たしてチャイルドシートの取り付けが可能なタイプでしょうか?
こう尋ねられると、意外と「うーん」と考えてしまう方が多そうですね。
ひと口に自転車と言っても、いわゆるママチャリから、折りたたみ式、スポーツタイプなど、その構造と強度には種類があり、実はチャイルドシートの取り付けに向くタイプと向かないぬタイプがあります。
荷台の強度にも差があり、その構造上の兼ね合いから、自動車と同じように安全に走るために載せても良い重さの最大値=「最大積載質量」が決められています。
[表示例]
・「18」「MAX18kg」「CLASS 22」「クラス25」「C-25」
この例の場合は、数字がその荷台に載せられる最大重量を表しています。
例えば「CLASS 22」なら、その自転車の荷台には最大で22kgまで積載可能=22kg以上載せると構造上危険、という意味になります。
そしてこの最大積載質量の表示は、自転車本体にシールで貼ってあったり、購入時の取扱説明書に記載されていたりします。
この表示ルール、実はJIS(日本工業規格)によって定められている「JIS規格」なのです。
さらに平成22年5月に改訂された基準では、「CLASS 18」など最大積載質量が18kgまでの自転車はチャイルドシートを取り付けることができなくなりました。ただし、改定前に生産された自転車については適用されないことになっています。
製品の設計上は何歳まで乗せられるの?
では、自転車の設計上では、何歳の子どもまで乗せることが可能なのでしょうか。
現在のJIS規格では、CLASS 22、CLASS 25、そしてCLASS 27=27kgが最高ランクになります。
この最大積載質量の「最大」とは、子どもの体重+チャイルドシートの重さということになります。
ところで、子どもの平均体重を調べたら、次のことがわかりました。
5歳(幼稚園) 男子18.9kg 女子18.5kg
6歳(小学校1年生) 男子21.3kg 女子20.9kg
7歳(小学校2年生) 男子24.0kg 女子23.5kg
8歳(小学校3年生) 男子27.1kg 女子26.3kg
*出典:文部科学省「平成24年度学校保健統計調査(確定値)の公表について」より
チャイルドシートの平均的な重さは4kg~5kg。
そうなると、単純に子ども1人だけを乗せる場合なら、重量的に設計上は小学校1年生~2年生までとなりそうです。
でもここで注意!
前回のコラムでご紹介しましたが、交通法規上自転車に乗せて走ることができる子どもの年齢は6歳未満=5歳まででした。
ということは、CLASS 22もCLASS 27も、決してその年齢以上の子どもを乗せるための規格ではないということです。
では、なぜCLASS 27まで積載質量が拡大されたのでしょうか。
その一番の要因は、子どもを2人乗せて走っても良い3人乗り可の自転車ができたからです。ただし3人乗り自転車の場合でも、乗せる子どもの体重には十分注意が必要です。
例えばCLASS 27の自転車に子ども2人を乗せるとします。
チャイルドシートは2台が必要ですが、チャイルドシート1台の重さを仮に4.5kgとすると、2台で9kg。
すると、最大積載質量27kg-9kg=乗せられる子ども2人の体重の合計は18kgまで、となります。
そうなると、2人兄弟の場合、幼稚園・保育園のお兄ちゃんを乗せたら、年下の弟を乗せるのは厳しい可能性があります。
自転車・チャイルドシート選びのポイント=「SG」マークと「BAA」マーク
皆さんは自転車やチャイルドシートを選ぶ時、どの点をチェックしていますか?
デザインや乗り心地と一緒にぜひ確認したいのは、製品の安全性ですね。
そこでまずご紹介したいのが「SG」マークです。
「SG」マークは、乳幼児用品や福祉用具、家具・家庭用品、圧力なべなどの台所用品、ライター、スポーツ・レジャー用品、家庭用フィットネス用品、そして自転車関連用品など「消費生活製品安全法」に基づいた特定の商品について、一般財団法人製品安全協会が設けた厳しい安全性の基準に基づいた審査を受けてクリアした製品に表示が認められる、製品の安全性を保証するマークです。
この「SG」マークの特長は、その信頼性はもちろんのことですが、万一「SG」マークの製品の欠陥によって人身事故が起きた場合は、最大で1億円までの賠償保障制度が付いていることでしょう。事故の調査から示談交渉・保証対応までを同協会が担当する仕組みなので、「SG」マークが付いている製品とそうでない製品とでは、いざという時のための安心度も違います。
さらにもう一つご紹介したい安全性のマークが、「BAA」マークです。(自転車のみ)
このマークは、一般社団法人自転車協会の自主基準「自転車安全基準」をクリアしている自転車に表示されます。
特筆したい特長は、マーク認定後も協会が基準保持状況を年一回無作為で検査していること、車体番号等がはっきりしていて製造メーカーなどを確実に特定できること、輸入品でもBAAマークを貼る場合は、製造上の欠陥の際の補償のための保険に加入しなければならないこと、有資格技師によって点検整備した状態で消費者に引き渡すよう義務付けられていることです。
更にBAAマークの場合、幼児を2人乗せて走っても良い3人乗り自転車については、専用のマークを設けています。その専用マークが付いている自転車は、警察庁が求めている「幼児2人同乗用自転車」の具体的な基準などをクリアしています。
このように、自転車やチャイルドシートには、消費者にその安全性をわかりやすく選びやすいように示したマークがあります。
購入する際はぜひ確認したいですね。
乗る前に3分間、点検しましょう!
とはいえ、製品自体が安全基準をクリアしていても、ねじが緩んでいたり、タイヤの空気が抜けていたりしたら事故の原因になってしまいます。
実際、取り付けてから数年間メンテナンスしなかったチャイルドシートが、走行中に脱落する事故なども起きています。
自分だけではなく子どもの命も預ける自転車。
乗る前の「3分間点検」で、快適な安心サイクリングを楽しみましょう!
<参考・出典>
・財団法人自転車産業振興協会
・一般財団法人製品安全協会
・一般社団法人自転車協会 BAAマーク
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このコラムの執筆専門家
- 池見 浩
- (東京都 / 消費生活アドバイザー)
- 消費者考動研究所 代表
消費生活の専門家が消費者教育・啓発や消費者志向経営をサポート
消費生活アドバイザーは、消費者・企業・行政の懸け橋として、法律、生活知識、消費者志向経営や環境問題まで幅広い専門知識を持つ消費生活の専門家です。企業・自治体等で培った豊富な実務経験とノウハウで、貴方の消費者力UPと企業活動をサポートします。
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