- 松下 雅憲
- 株式会社PEOPLE&PLACE(ピープルアンドプレイス) 代表取締役
- 東京都
- 店長育成・販売促進ナビゲーター
対象:人材育成
「店長・・・私やっぱりダメです。出来ません。難しすぎます・・・・無理です・・・」
新人アルバイトKさんが入店して、早3週間。ようやく仕事にも慣れ、先輩スタッフとも仲良くなり、順調に成長していたかのように見えていたのに・・・・Kさんの突然の「もう無理」宣言・・・
店長は、ビックリしましたが、すぐに落ち着いて、静かに聴き始めました。
「わかったわ。じゃあ、ちょっと話を聴こうか。」
ふたりはスタッフルームに入りました。
「さあ、どうしたの?何でも好きなだけ話して頂戴。」
「てんちょうううううう~。私やっぱり無理なんです。出来ません!なんか、こうしっくりいかないし・・・苦しいんです。」
「ふ~ん、なるほど・・・苦しいのね。」
「そうなんです、できっこないんです、私には・・・」
「出来ないのね・・・」
「まあ、出来ないというか、やりにくいというか・・・」
「そうなんだ。」
「そうなんです。」
店長は否定をせず、慰めもせず、励ましもせず、アドバイスもしませんでした。
ただただ、Kさんの話をずっと聴いていました。
そして、10分ほどひとしきり話した後、Kさんは・・・
「私、がんばるんです。せっかくあこがれのこのお店に採用されたんです。やります。」
「お!やるのね!」
「はい!あきらめずにがんばります!」
「いいね!じゃあ、がんばろう!」
「はい!」
何と単純な会話なんだと思われるかも知れません。
しかし、これで良いのです。
通常、「一生懸命がんばるぞ!」と言う意気込みで入店してきた新人が、急に「ダメです。無理です。出来ません。」と言い始めるとビックリして,説得やアドバイスや励ましを始めてしまいます。
時には、相手があまりにネガティブなことを言っていると、それを否定してしまうことがあります。
ところが、一見「もうダメだ・・」と言う話の裏には、「今壁にぶつかっているけれど、私は必ず乗り越えてみせる。だからがんばる!」と言う、自分への叱咤激励が含まれていることがあるのです。
ネガティブな言葉を発しているのに「自分への叱咤激励」ってなんだか変な感じがするかも知れませんが、部下から見て「この人は何でも話を聴いてくれる」という信頼感がある上司には、思いっきりネガティブなことを言う事があるのです。これを見逃して、説教モードに入ってしまうと、ネガティブなことを言うだけ言ってから、「よしやっぱりがんばろう!」と切り替える予定が、そのままネガティブな状態を維持してしまうことになるのです。
部下が、落ち込んでいるときに、説教したり励ましたりすると逆にどんどん落ち込んでいく時があります。そんな時は、ネガティブをはき出してから切り替える決意に水を差したときかも知れません。
部下が、あなたは何でも聴いてくれると信頼して「ネガティブなことやぼやき」を言い始めたときは、うん、うんと最後までしっかり聴く様にしましょう。全部はき出したら、「あああ~スッキリした!」と言って、切り替えますよ。きっと。
相手の発言は、たとえそれが本音であっても、それを乗り越える助走の場合があります。そこをよ~く聴くように致しましょう!
「相手軸!相手軸!」
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