早わかり中国特許:第26回 特許行政訴訟 (第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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早わかり中国特許:第26回 特許行政訴訟 (第1回)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第26回 特許行政訴訟 (第1回)

河野特許事務所 2013年7月30日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2013年6月号掲載)

 

1.概要

 第25回に引き続き特許行政訴訟について解説する。

 

2.司法鑑定

 訴訟係属中に、専門的な問題について鑑定する必要がある場合、人民法院は法定の鑑定部門に鑑定を依頼しなければならない(中国行政訴訟法第35条)。中国行政訴訟法第31条第6号により、鑑定結果も証拠の一つとして認められている。従って請求項に係る発明の技術的効果を客観的に立証する必要がある場合等は、司法鑑定を請求するのも一つの手である。なお、司法鑑定は中国行政訴訟法第35条に規定するとおり、訴訟係属中に人民法院を通じて行う必要があり、訴訟前に当事者自身で鑑定人に依頼して取得した鑑定結論は証拠として採用されない。

 

3.証拠保全

 特許行政訴訟においても、証拠保全が認められている。証拠が消失する可能性があり、または、消失した後の取得が困難な状況においては、訴訟参加人は、人民法院に証拠の保全を申し立てることができ、人民法院も自ら保全措置をとることができる(中国行政訴訟法第36条)。ただし、実務上は特許行政訴訟において証拠保全が必要となるケースは少ないであろう。

 

4.判決

 口頭審理の後、裁判官合議体による審理が行われ、数ヶ月後に判決が下される。なお口頭審理後に争点を整理すると共に、意見を補充的に主張する場合、代理詞と称する意見書を合議体に提出することができる。

 

 判決は、原則として立案の日から3ヶ月以内に下される(中国行政訴訟法第57条)。ただし、特別な状況により延長する必要がある場合、高級人民法院がこれを承認する。

 

 判決は以下の4種の形態で下される(中国行政訴訟法第54条)。

(1)原審維持の判決

 具体的な行政行為の証拠が確かで、法律、法規の適用が正確であり、法定の手続に適合していると認められる場合は、維持判決を下す。

 

(2)原審判決の取り消し

 具体的な行政行為が以下に掲げる状況のいずれかに該当する場合には、取り消しまたは一部取り消しの判決を下し、併せて被告に改めて具体的な行政行為を行うよう判決を下す。

(i)主な証拠が不足している場合

(ii)法律、法規の適用に誤りがある場合

(iii)法定手続に違反した場合

(iv)職権を超えた場合

(v)職権を濫用した場合

 

(3)履行を求める判決

 被告が法定の職責を履行せずまたは履行を引き延ばしている場合には、一定期間内に履行することを命じる判決を下す。

 

(4)変更を求める判決

 行政処罰が明らかに公正を逸している場合、変更を求める判決を下す。

 

(第2回へ続く)

 

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