早わかり中国特許:第25回 特許行政訴訟 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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早わかり中国特許:第25回 特許行政訴訟

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第25回 特許行政訴訟

河野特許事務所 2013年7月2日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2013年5月号掲載)

1.概要

 第24回に引き続き特許行政訴訟について解説する。

 

2.訴訟管轄

(1)復審委員会を被告とする特許行政訴訟の管轄

 復審及び無効宣告決定に対する不服申し立ては、第1審が復審委員会所在地の北京市第一中級人民法院、第2審は北京市高級人民法院に対して行う(専利法第46条、41条)。

 

(2)国家知識産権局特許局を被告とする特許行政案件の訴訟管轄

 国家知識産権局を被告とする特許行政訴訟は、第1審が北京市第一中級人民法院、第2審が北京市高級人民法院となる。

 

(3)特許業務管理部門を被告とする特許行政案件の訴訟管轄

 司法解釈[2001]21号第[1]では、「特許業務管理部門の行政決定に不服がある案件」について人民法院が事件を受理する旨規定しており、同司法解釈第条では以下のとおり規定している。

 

 特許紛争に係る第一審の案件は、各省、自治区、直轄市人民政府所在地の中級人民法院及び最高人民法院の指定する中級人民法院が管轄する。

 

 ただし、特許行政訴訟は全ての人民法院が管轄を有するわけではなく、所定の中級人民法院のみが管轄を有する。これは特許行政訴訟が、技術的に複雑な問題を取り扱うからである。具体的には、各省、自治区の人民政府所在地の中級人民法院及び4直轄市(北京、上海、天津、重慶)の中級人民法院の内、約70程度の人民法院、深セン、珠海、汕頭、アモイの4経済特区人民政府所在地の中級人民法院、最高人民法院が指定した中級人民法院(青島、大連、温州等)に限られている。

 

3.特許行政訴訟提起の条件

 中国行政訴訟法第41条の規定に基づき、以下の条件を満たすことが必要とされる。

 

(一)原告が、具体的な行政行為によりその合法権益が侵害されたと認める公民、法人或いはその他の組織である事;

(二)明確な被告を有する事;

(三)具体的な訴訟上の請求及び事実根拠を有する事;

(四)人民法院の受理範囲に属し、訴えを受理する人民法院の管轄である事

 

 (三)に関し、原告が復審委員会の行政行為について行政訴訟を提起する場合、具体的行政行為がどのように、その合法権益を侵害するのか具体的に説明しなければならない。

 以下では特許行政訴訟の中心となる復審委員会に対する特許行政訴訟を中心に説明する。

 

4.特許行政訴訟の準備

(1)準備書類

  復審委員会の決定に対し行政訴訟を提起する場合、復審審査決定通知を受領した日から3ヶ月以内に提訴しなければならない。この間に代理人の選定、訴状の起案、証拠収集、委任状等の手配を速やかに行う。

 

 提訴時には、訴状、証拠、代理人身分証明書、委任状、代表者身分証明書及び現在事項全部証明書が必要となる。なお、中国現地法人が原告として訴えを提起する場合、現在事項全部証明書に代えて、営業許可証(営業執照)を取得する。

 

 委任状及び代表者身分証明書については、日本国における公証、日本の中華人民共和国の大使館または領事館での認証手続が必要となる。現在事項全部証明書については、公証は不要であるが、認証手続が必要となる。認証手続は1~2週間かかる場合もあり、早めの対応が必要である。

 

(2)証拠書類

 特許行政訴訟においては、証拠として特許公報の他、辞書、教科書、カタログ及び実験データ等を提出する場合がある。中国国外で形成された証拠については、公証及び認証手続が必要となる(最高人民法院行政訴訟証拠に関する若干問題規定 法釈[2002]21号第16条)。具体的には、日本の公証役場にて証拠についての公証を得ておき、その後、日本の中華人民共和国の大使館または領事館での認証手続を得る。特許公報については、特段公証及び認証は不要である。

 

 また日本企業の場合、提出する証拠が日本語であることが多い。外国語の証拠を提出する場合、中国語の翻訳文と共に提出する必要がある(法釈[2002]21号第17条)。

 

 証拠としては以下のものが挙げられ、法定の審査を受け真実であるとされたもののみが、裁判の根拠とすることができる(行政訴訟法第31条)。

(一)書証

(二)検証物(物証)

(三)視聴覚資料

(四)証人の証言

(五)当事者の陳述

(六)鑑定の結果

(七)検証記録、現場記録

 

(3)立案

 上述の資料が整った後、代理人は訴状及び証拠書類等を北京市第一中級人民法院に提出する。提出する訴状及び証拠の数は通常被告人数分に加え、さらに2部提出する。

 人民法院は訴状受理後、7日以内に立案するか否かについて裁定しなければならない(行政訴訟法第42条)。なお、原告は当該裁定に対し不服がある場合、上訴することができる。

 

 当事者は所定期間後、人民法院が送達した文書を受け取る。この際、証拠補充、証拠取り調べ調査、証人を出廷させての証言、鑑定人による鑑定申請、専門家の出廷申請が必要な場合、民事訴訟法の証拠規則に関する規定、または、人民法院が指定した期限内に手続きをしなければならない。

 

5.特許行政訴訟手続の流れ

(1)答弁書の提出

 人民法院は立案後5日以内に訴状の副本を被告に発送しなければならない。参考図1は訴訟の流れを示すフローチャートである。被告は訴状の副本を受領した日から10日以内に答弁書を提出しなければならない(行政訴訟法第43条)。

 

→続きは、月刊ザ・ローヤーズ5月号をご覧ください。



[1] 最高人民法院による特許紛争案件審理の法律適用問題に関する若干規定(2001年6月19日)

 

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