大学等の入学在学契約への消費者契約法の適用 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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大学等の入学在学契約への消費者契約法の適用

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大学等の入学在学契約への消費者契約法の適用

 

・大学等の学納金

最判 平成181127日・民集 第6093437頁、ジュリスト平成18年度重要判例解説79頁

[判示事項]

1 大学と当該大学の学生との間の在学契約の性質(無名契約)
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金の性質
3 大学と在学契約等を締結した者が当該在学契約等を任意に解除することの可否(解除肯定)
4 大学の入学試験の合格者による書面によらない在学契約の解除の意思表示の効力(口頭でも解除は有効)
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約等を締結して当該大学に入学金を納付した後に同契約等が解除された場合等における当該大学の入学金返還義務の有無(否定)
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の性質
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約等の消費者契約該当性(肯定)
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に関する消費者契約法9条1号所定の平均的な損害等の主張立証責任
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果
10 専願等を出願資格とする大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果

 

[判決要旨]

1 大学と当該大学の学生との間で締結される在学契約は,大学が学生に対して,講義,実習及び実験等の教育活動を実施するという方法で,大学の目的にかなった教育役務を提供するとともに,これに必要な教育施設等を利用させる義務を負い,他方,学生が大学に対して,これらに対する対価を支払う義務を負うことを中核的な要素とするものであり,学生が部分社会を形成する組織体である大学の構成員としての学生の身分,地位を取得,保持し,大学の包括的な指導,規律に服するという要素も有し,教育法規や教育の理念によって規律されることが予定されている有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約である。
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情のない限り,合格者が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有し,当該大学が合格者を学生として受け入れるための事務手続等に要する費用にも充てられることが予定されているものである。
3 大学と在学契約又はその予約を締結した者は,原則として,いつでも任意に当該在学契約又はその予約を将来に向かって解除することができる。
4 大学の入学試験に合格し当該大学との間で在学契約を締結した者が当該大学に対して入学辞退を申し出ることは,それがその者の確定的な意思に基づくものであることが表示されている以上は,口頭によるものであっても,原則として有効な在学契約の解除の意思表示であり,入学試験要項等において所定の期限までに書面で入学辞退を申し出たときは入学金以外の所定の納付金を返還する旨を定めている場合や,入学辞退をするときは書面で申し出る旨を定めている場合であっても,解除の効力は妨げられない。
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約又はその予約を締結して当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有する入学金を納付した後に,同契約又はその予約が解除され,あるいは失効しても,当該大学は当該合格者に入学金を返還する義務を負わない。
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有する。
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約又はその予約は,消費者契約法2条3項所定の消費者契約に該当する。
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約に納付済みの授業料等を返還しない旨の特約がある場合,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害及びこれを超える部分については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には当該特約の全部又は一部の無効を主張する当該合格者において主張立証責任を負う。
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,国立大学及び公立大学の後期日程入学試験の合格者の発表が例年3月24日ころまでに行われ,そのころまでには私立大学の正規合格者の発表もほぼ終了し,補欠合格者の発表もほとんどが3月下旬までに行われているという実情の下においては,

(1)同契約の解除の意思表示が大学の入学年度が始まる4月1日の前日である3月31日までにされた場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となり,

(2)同契約の解除の意思表示が3月31日よりも後(すなわち4月1日以降)にされた場合には,原則として,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,上記平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。

(すなわち、解除の意思表示がされた時期を3月31日を基準として、その前後で、初年度の授業料の返還義務の有無を場合わけしている。)
10 入学試験要項等の定めにより,その大学,学部を専願あるいは第1志望とすること,又は入学することを確約することができることが出願資格とされている大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものである場合には,同契約の解除の時期が当該大学において同解除を前提として他の入学試験等によって代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情がない限り,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。

 

 

②最判 平成181127日・民集 第6093597頁、ジュリスト平成18年度重要判例解説79頁

 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において,当該合格者が入学式を無断で欠席することは,特段の事情のない限り,黙示の在学契約の解除の意思表示に当たり、合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となる。

 

 

 最判平成181127日・ 民集 第60巻9号3732頁、ジュリスト平成18年度重要判例解説79頁

 1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,その目的,意義に照らして,合格者の大学選択に関する自由な意思決定を過度に制約し,その他合格者の著しい不利益において大学が過大な利益を得ることになるような著しく合理性を欠くと認められるものでない限り,公序良俗に反しない。
2 消費者契約法の施行(平成1341日)前の事案であり、消費者契約法の適用は認められなかった。

 

 

 

 最判平成22330日・裁判集民事 第233353

専願等を資格要件としない大学の平成18年度の推薦入学試験に合格し,初年度に納付すべき範囲内の授業料等を納付して,当該大学との間で納付済みの授業料等は返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度開始後である平成18年4月5日に同契約を解除した場合において,学生募集要項に,一般入学試験の補欠者とされた者につき4月7日までに補欠合格の通知がない場合は不合格となる旨の記載があり,当該大学では入学年度開始後にも補欠合格者を決定することがあったなどの事情があっても,上記授業料等は,上記解除に伴い当該大学に生ずべき平均的な損害を超えるものではなく,上記解除との関係では,上記不返還特約は,すべて有効である。

[解説]

 上記判例①と同様の事案である。

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