未成熟子がいる有責配偶者からの離婚請求が認容された事例 - 離婚問題全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2024年04月25日更新

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未成熟子がいる有責配偶者からの離婚請求が認容された事例

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最高裁判決、平成6年2月8日、家庭裁判月報46巻9号59頁、最高裁判所裁判集民事171号417頁、判例タイムズ858号123頁

 

 【判示事項】

未成熟子がいる有責配偶者からの離婚請求が認容された事例

 

【判決要旨】

有責配偶者である夫からされた離婚請求であっても、別居が13年余に及び、夫婦間の未成熟の子は3歳の時から一貫して妻の監護の下で育てられて間もなく高校を卒業する年齢に達していること、夫が別居後も妻に送金をして子の養育に無関心ではなかったこと、夫の妻に対する離婚に伴う経済的給付も実現が期待できることなど判示の事実関係の下においては、右離婚請求は、認容されるべきである。

 

 

  原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

   (1) 上告人(昭和13年9月生)と被上告人(昭和11年9月生)は、昭和39年2月婚姻の届出をし、同40年8月に長女Aを、同42年8月に長男Bを、同45年7月に二男Cを、同50年12月に三男Dをもうけた。

   (2) 被上告人は、会社の経営に行き詰まり、昭和54年2月に家出して行方をくらました。上告人は、4人の子を育て、被上告人の帰りを待っていたが、子らが幼いため仕事も思うようすることができず、自宅も競売に付され、ついに生活保護を受けるに至った。

一方、被上告人は、昭和56年ころ二児を抱える乙野月子と知り合い、同58年に同女と同せいを始め、現在勤務している会社には同女を妻として届け出ている。

   (3) 上告人は、昭和60年6月ころ、被上告人が乙野及び同女の子らと同居している事実を知り、被上告人に対して再三にわたり手紙や電話で積年の恨みの気持ちをぶつけ、自分のもとに戻ってくるよう強く求めたが、被上告人は、かえって上告人への嫌悪感を募らせ、離婚して乙野と正式な婚姻生活に入りたいとする意思を一層固めるようになった。

   (4) 昭和63年9月に被上告人に対し婚姻費用として毎月17万円(ただし、毎年7月は53万円、12月は65万円)の支払を命ずる家庭裁判所の審判がされた。その後、被上告人は、上告人に対し、毎月15万円(毎年7月と12月は各40万円)を送金している。

   (5) 被上告人は、いまや上告人との同居生活を回復する意思を全く持っておらず、強く離婚を望み、離婚に伴う給付として700万円を支払うとの提案をしている。上告人は、三男Dを養育していく上では父親の存在が欠かせないとの理由で離婚に反対している。長女Aは平成元年3月に婚姻し、長男B及び二男Cも既に成人して独立している。

有責配偶者からされた離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって右請求を排斥すべきものではなく、前記の事情を総合的に考慮して右請求が信義誠実の原則に反するとはいえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。

  これを本件についてみるのに、前記事実関係の下においては、上告人と被告人との婚姻関係は既に全く破綻しており民法770条1項5号所定の事由があるといわざるを得ず、かつ、また被上告人が有責配偶者であることは明らかであるが、上告人が被上告人と別居してから原審の口頭弁論終結時(平成5年1月)までには既に13年11月余が経過し、双方の年齢や同居期間を考慮すると相当の長期間に及んでおり、被上告人の新たな生活関係の形成及び上告人の現在の行動等からは、もはや婚姻関係の回復を期待することは困難であるといわざるを得ず、それらのことからすると、婚姻関係を破綻せしめるに至った被上告人の責任及びこれによって上告人が被った前記婚姻後の諸事情を考慮しても、なお、今日においては、もはや、上告人の婚姻継続の意思及び離婚による上告人の精神的・社会的状態を殊更に重視して、被上告人の離婚請求を排斥するのは相当でない。

  上告人が今日までに受けた精神的苦痛、子らの養育に尽くした労力と負担、今後離婚により被る精神的苦痛及び経済的不利益の大きいことは想像に難くないが、これらの補償は別途解決されるべきものであって、それがゆえに、本件離婚請求を容認し得ないものということはできない。

  そして、現在では、上告人と被上告人間の4人の子のうち3人は成人して独立しており、残る三男Dは親の扶養を受ける高校2年生であって未成熟の子というべきであるが、同人は三歳の幼少時から一貫して上告人の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており、被上告人は上告人に毎月15万円の送金をしてきた実績に照らしてDの養育にも無関心であったものではなく、被上告人の上告人に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると、未成熟子であるDの存在が本件離婚請求の妨げになるということもできない。


 

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