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金融円滑化法(モラトリアム法)が終了した後のリスケはどうなるのか?

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平成25年3月31日で「中小企業の資金繰り」に大きく貢献した中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が終了することになっています。

すでにニュース等で報道されていますが、中小企業の経営者にとっては大変関心の高い問題であると思います。

報道では、「平成25年3月21日で金融円滑化法が終了!」「円滑化法対象債権の中には不良債権予備軍が多く、倒産が増えることは必死!」などと騒いでいます。

中小企業金融円滑化法によって「リスケジュール」(リスケと呼んだりします)という手法がメジャーになりましたが、「リスケジュール」とは、「返済条件を見直して貰うこと」を言います。金融機関と借り手の間で「すでに合意をした返済条件・方法を後から変更してもらう」ものですから、金融機関から「リスケには応じられない」といわれてしまうと、今までの通りの返済条件通りに返済をしなければなりません。

ただ、この「リスケジュール」という方法は、金融円滑化法が施行される前から存在した方法です。金融円滑化法以前にも、金融機関の「リスケジュール」によって資金繰りを支援するということはなされていました。

ですから、これから問題になるのは金融円滑化法のおかげで「リスケジュール」に応じてもらっていた中小企業です。

それでは、金融円滑化法がなくなると、「リスケジュール」に応じてもらえない会社というのはどのような会社のことを言うのでしょうか。以下で見ていくことにしましょう。

 1.「経営改善計画書」をきちんと作っていないような会社はリスケには応じてもらえない。

金融円滑化法の下では、金融機関にリスケジュールの申込時に「経営改善計画書」(どうやって今後、経営を改善していくかを示した書面)がなくても口頭で「リスケジュール」(=返済の方法を変えること)を依頼することができました。

今までは「経営改善計画書」は、1年以内に提出すればよいとされていたのですが、金融円滑化法が終了した後においては「事業の将来の見通し」について「経営改善計画書」で説得力をもって説明ができない会社は、金融機関に「リスケジュール」に応じてもらうことはできないと思われます。

 金融機関に「返済の条件を緩和してくれれば、必ず経営が改善されます(将来的にきち

んと返済をしてもらえる)」ということを「経営改善計画書」で説得的に説明しなければ、

金融機関にリスケに応じてもらうことはできないでしょう。

 2.事業の黒字化の見通しが全く立たない会社は、リスケに応じてもらえない。

 そもそも、「リスケジュール」というのは、「短期的に資金繰りを改善する」(語弊をおそれずに言えば、経営改善するまでの時間稼ぎ)ための方法であって、「将来的に経営が改善されれば、借入金をきちんと返してもらえる」という前提でなされるものです。

ですから、原則として、「赤字」が認められるのは2年目までとされています。3年も連続で赤字の企業であれば、その後も「黒字化の見通しが立たない」と判断をされてしまい、金融機関としてもリスケに応じることはできません。

 ですから、リスケジュールをしてもらう側としては、「経営改善計画書」において、「将来的に黒字化する」ということを、きちんと根拠を示して説明しなければならないわけです。

3.返済の再開の見通しが全く立たないような会社はリスケに応じてもらえない。

「金融機関に対する返済額がゼロ円のまま3年継続してしまった融資案件」については、銀行の担当者としても、返済計画を立てようがありません。

基本的な考え方としては、「借り入れた資金全部について10年以内に完済してもらうことができるように、経営(収益力)を改善してもらう」ことが前提になっています。金融機関は、このことを「債務償還年数を10年以内にする」とか「有利子負債のキャッシュフローに対する比率を10倍以内とする」などと言います。このような「具体的な見通し」が立たない会社を金融機関がいつまでも支援をするということはできません。

4.「債務超過」の解消の見通しが立たない会社はリスケに応じてもらえない。

リスケジュールをするための目安としては、「3年から5年以内に実質的な債務超過の解消の見通しを付けること」が大事です。

バランスシート上の「資産」(1.売掛金、2.在庫、3.不動産等)の劣化(価値の毀損)が大きく「実質的に債務超過」になっている会社で、「収益力の低い会社」は「将来における債務超過解消の見通し」が立たちません。

金融機関円滑化法の下では、「金融機関に見て見ぬふりをされて目をつぶってもらっているケース」も多かったのですが、今後は「将来の債務超過の解消の見通しが立たないこと」を理由に、金融機関にリスケジュールの更新が拒否される可能性もあります。

バランスシートの改善にどのように取り組むのかについても、きちんと考えておく必要があると思います。

5.複数の金融機関の協調支援が得られないような会社はリスケに応じてもらえない。

借主が一つの金融機関だけではなく、複数の金融機関から融資を受けている場合には、それぞれの金融機関の考え方に違いが生じることがあります。

中小企業金融円滑化法の下では、金融機関の側にもお互いに協力して支援をしていくという対応をしておりましたが、今後は各金融機関の会社への関与の程度や企業の経営改善に対する取り組み姿勢の評価の差で金融機関ごとに対応に違いが生じる可能性があります。

今までは「メインバンクがリスケジュールを受け入れるというのであれば、私どもリスケジュールを受け入れます」といったやさしい対応をとってくれる金融機関が多かったですが、今後は、「メインバンクがリスケジュールを受けたとしても、うちはリスケジュールを受けることはできない」という事態や「メインバンクであっても率先してリスケジュールの延長を拒否する」が生じることが予想されます。

6.会社の経営陣に経営改善に対する取り組み姿勢が見られない会社はリスケに応じてもらえない。

借り主が返済原資を捻出するために①販管費などの削減努力や②経営責任の明確化(役員報酬を削るなどの努力)をしないで、ただ金融機関に対する返済をストップするだけで資金繰りを何とかしている企業は、金融機関としてはリスケジュールを認めようとは思わないでしょう。このままリスケジュールを続けていたとしても、返済の見込みが立たないからです。

借り主の売上げが不調であったり、返済金額が計画の通りには行かなかったとしても、販管費等の圧縮をするなどの経営改善に取り組んでいるという理由で、金融機関がリスケジュールを継続をしてくれるということもあります。

今後、金融機関がリスケジュールに応じてくれるか否かは、「経営改善の努力をきちんとして、将来の返済見通しを説得的に示してくれる」かどうかにかかって来ると思います。

7.会社がやっている「事業」に将来性がない場合にはリスケに応じてもらえない。

これまでは、借り主に技術力、販売力、成長性がある場合には、総合的に勘案してある程度その会社の可能性に掛けて、金融機関がリスケジュールに応じてくれるということもありました。

ただ、金融機関としても今後は厳しく対処せざるを得なくなり、「不確定な可能性」に期待してリスケジュールに応じてはくれなくなってくると思われます。

借り主の事業に魅力的な技術力、販売力、成長性のどれか一つでも明確な形で認められなければ、「リスケジュールの延長」は金融機関に拒否されてしまう可能性があります。

平成25年3月以降に急に「金融機関がリスケジュールに応じるかどうか厳しくなる」という話ではないと思いますが、去年から金融機関は、既に「リスケジュールの出口戦略」をどうするかについて準備を始めています。

中小企業金融円滑化法が終了した後も「資金繰りがうまくいく」ように明確な「経営改善計画」を立てて日々の経営改善に取り組みましょう。

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