金融円滑化法(モラトリアム法)が終わるけど大丈夫? - 返済リスケジュール・財務改善 - 専門家プロファイル

鈴木 祥平
弁護士
東京都
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金融円滑化法(モラトリアム法)が終わるけど大丈夫?

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平成20年の秋以降「リーマン・ショック」と言われる世界的な金融危機の影響によって、「中小企業の資金繰り」(=資金の調達)が大きく悪化しました。そのため、多くの中小企業が銀行からの融資を受けることができず、資金繰りに困って倒産の危機に見舞われました。金融庁は中小企業が金融を得やすくするための臨時的な措置として、平成2112月に「中小企業金融円滑化法」(モラトリアム法)を施行しました。

この「中小企業金融円滑化法」が施行されることによってどうなったのかというと、金融機関は「中小企業の借り手から申し出があった場合には出来る限り貸付条件の変更等を行う」という努力義務が課されました。

この「貸付条件の変更等」というのは、いわゆる「リスケジュール(リスケ)」のことです。「貸付条件の変更等」の具体例としては、(1)元本の返済猶予(利息だけ返済をして元本の返済を待ってもらう)、(2)返済期間の延長(5年で1000万円を返済するという条件を10年で1000万円を返済するという条件に変えてもらう)、(3)旧債務の借り換え、(4)デット・エクイティー・スワップ(DES、債務の株式化=貸付金を出資金という扱いにしてもらう)などの「債務の弁済負担を軽減化措置」を実施することに努めなければならないことになりました。

それに加えて、借主にとっては、セーフティーネット貸付や緊急保証制度なども整備されました。これにより、中小企業は、金融機関から新規融資を受けやすくなりました。この「中小企業金融円滑化法」(モラトリアム法)によって、「中小企業等の資金繰り」が改善したため、企業の倒産数が少なくなるなど日本経済にとって一定のプラス効果をあげることができました。

しかしながら、「中小企業金融円滑化法」は平成253月末日をもって終了することが決まっています。平成24年度の統計を見てみると、「返済条件の変更」(リスケジュール)を行っていた企業の倒産が少しづつ増えてきています。「中小企業金融円滑化法の期限終了」(=平成253月末日)は、「貸付条件変更等」が今までのようにできなくなります。そうすると、「金融機関からの資金調達」がうまくいかなくなり、今後、資金繰りに困った企業の倒産数が増えることが予想されます。また、債権分類(債権の回収見込みの程度に応じて分類化)においても、「金融円滑化法」の「貸出条件緩和債権」については「中小企業が条件変更等を行う際に、経営再建計画等がなくても、最長1年以内に計画等を策定できる見込みがあれば、不良債権とならない」とされていました。すなわち、「不良債権」としては扱われなかったわけですが、「金融円滑化法の期限終了」によって「不良債権」とみなされることになってしまう可能性があります。経営が悪化している中小企業は、「財務戦略」(=どうやって資金調達するか)や「経営戦略」(=どうやって利益を上げていくのか)を真剣に考えていかなければなりません。金融円滑化法による「金融機関が実施している貸付条件の変更」は、「債権放棄」や「単なる企業の延命」ではないという認識を新たにすることが必要です。

 今までは、「中小企業金融円滑化法」によって「事業維持ができていた企業」も、自力で事業維持をすることが難しい場合、「中小企業金融円滑化法」が終了したあとは、「市場から退場する」(=倒産)してしまうことになるか、それとも、第三者の手で「事業再生」をする道を選ぶことになる可能性が高くなります。

事業維持のために中小企業の経営者ができることとしては何があるでしょうか。事業維持のためには、(1)「事業戦略」(=どのようなビジネスをして儲けるのか)を見直して、事業からの利益(営業利益)が確保できる事業構造に変える(儲かる体質に変える)、(2)金融機関に実効性を示せる「事業計画」を立てるなどの努力をすることが必要です。

最終的に、「事業維持」することによって、「借入金の返済が可能になること」を金融機関に示せる必要があります。赤字体質のままでは、金融機関から継続的な支援を得ることはむずかしいでしょう。

既存の借入金についても見直しをし、(1)「債務の株式化」(=DES)、(2)「資本性借入金の条件に合致するように変更する」(=DDS)ことによりバランスシートを改善することが必要です。バランスシートが改善されれば、新規融資を受けられることになり、事業の継続を図ることが可能になります。また、他の会社には絶対に真似ができないようなノウハウや技術を持っていれば、借入金の返済に困っていたとしても「MA」などによって事業継続が図れる可能性があるといえます。自力での事業継続が難しいと判断された場合、早めに弁護士等の法律の専門家に相談することをお勧めします。

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