米国特許判例紹介: ターミナルディスクレーマーと再発行(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介: ターミナルディスクレーマーと再発行(第1回)

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米国特許判例紹介: ターミナルディスクレーマーと再発行(第1回)

~ターミナルディスクレーマーは再発行特許では解消できない~

河野特許事務所 2013年3月5日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

In re Yamazaki

 

1.概要

 特許成立後、特許内容に瑕疵が見つかった場合、再発行特許出願を行うことができる(米国特許法第251条)。

 

 本事件においては、原告は審査過程において権利存続期間の一部を放棄するターミナルディスクレーマーを行った(米国特許法第253条)。しかしながら、後の補正により、先願との重複が回避できたため、ターミナルディスクレーマーが不要となった。出願人はターミナルディスクレーマーの取り下げを行ったが、これが受理される前に登録を受けた。

 

 原告はターミナルディスクレーマーが認められては存続期間が短くなることから、ターミナルディスクレーマーを排除すべく再発行特許出願を行った。CAFCは、ターミナルディスクレーマーを行った以上存続期間は短縮され、特許成立後はもはや再発行特許出願によっては治癒できない判断した。

 

 

2.背景

(1)特許の内容

 Yamazaki(原告)は、低濃度リンを有する改善された半導体と称するU.S. Patent 6,180,991 (以下、991特許という)を所有している。参考図1は991特許の代表図である。原告は1995年USPTOに、特許出願(以下、原出願という)を行った。原出願の出願番号は08/426,235である。

 

参考図1 991特許の代表図

 

(2)出願及び審査の経緯

 原出願の審査段階において、審査官は原告の先に登録されたU.S. Patent 4,581,476 (476特許)に基づき自明型ダブルパテントに基づく拒絶理由を通知した。本拒絶理由を回避すべく、原告は1996年11月27日ターミナルディスクレーマーを提出した。これにより、原出願に対して認められた法定の存続期間をディスクレームした。476特許の存続期間満了日は2003年12月22日であり、ディスクレーマーにより991特許の存続期間も2003年12月22日となる。

 

 その後原告は、出願係属中のクレームが476特許のクレームに対して、特許可能に区別可能となるよう、原出願の各独立クレームについて補正を行った。この補正が認められれば、ターミナルディスクレーマーが不要となる。

 

 原告は1999年4月8日、原出願が係属した状態で、PTOに記録されたターミナルディスクレーマーを取り下げることを求める規則1.182に基づく嘆願書(取下嘆願書)を提出した[1]。参考図2は出願の経緯を示す説明図である。

 

参考図2 出願の経緯を示す説明図

 

 USPTOは、原告が提出した嘆願書に対し、アクションを起こすことはなかった。原出願の審査は継続し2000年7月18日に特許許可通知が発行された。取下嘆願書が引き続き係属している状態で、原告は請求された登録費を支払い、原出願は2001年1月30日、991特許として正式に発行された。

 

 このように、ターミナルディスクレーマーは、登録日時点で、991特許に反映されるものとして、効力を有したまま残っている。その結果、991特許の存続期間は短縮された。すなわち、ターミナルディスクレーマーがなければ登録日から最長17年の期間が付与され、991特許の存続期間は2018年1月30日となる。しかしながら、ターミナルディスクレーマーが効力を有していれば、991特許の存続期間は、476特許の消滅日と同じく2003年12月22日となる。

 

 2001年5月10日、991特許登録日の約3ヵ月後、つまり、原告が最初にターミナルディスクレーマーを取り下げた2年以上も後に、USPTOは、取下嘆願書を拒否する決定をなした。USPTOは、ターミナルディスクレーマーは、対象特許が発行された以上、無効とすることができないと判断した。

 

(3)再発行特許の出願

 原告は991特許発行後の2002年1月16日ターミナルディスクレーマーの撤回を求めて再発行出願を行った。2005年1月4日審査官は既に登録された特許に係るターミナルディスクレーマーは、再発行特許では無効とすることができないとして、拒絶した。

 

 原告は2007年9月24日審判部に審判請求を行った。審判手続は、2011年1月11日、再発行特許を拒絶した審査官の判断を支持する決定をなした。原告はこれを不服としてCAFCへ控訴した。

 



[1]適時に請求されれば、記録されたターミナルディスクレーマーは、申請された出願が特許として登録される前に、取り下げることができる。記録されたターミナルディスクレーマーの無効化は、規則1.182に基づく嘆願書を提出することにより言及することができる。Manual of Patent Examining Procedure (“MPEP”) § 1490 (7th ed., 1998)

 

(第2回へ続く)

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