市場で、個々の消費志向のマニア化が無視できなくなったことを表した、ひとつのキーワードでしょう。
こんな造語と同様に、いま日本人の“個”としての在り方を意識させる現象がいくつか思い当ります。
たとえば、多くの日本人の人生設計のよりどころであった終身雇用制度が崩壊したことは、組織や集団の中で浮遊させていればこと足りた、個々の人生観や職業意識といったものを、あらためて見つめ直すきっかけとなってはいないでしょうか。
あるいは、インターネットを代表とする電子ネットワーク社会では、既存のヒエラルキーのない自由な表現の場が形成され、個々の才能に充分なチャンスが発生し、すでに大きな組織に対抗しうるパワーとなってはいないでしょうか。
このような現象は、組織や集団からの“個”の復権、といった図式に見えてなりません。
思えば、我々戦後生まれの日本人は、あまりにも一方的な価値観をしいられてきたように感じます。
いかに偏差値の高い学校へ入学し、どれだけ大きな企業や官庁に所属しているのか…。
人物を評価するメジャーは、ほとんどひとつでした。組織の中でどのような肩書きが与えられ、どれだけ経済的・物質的な豊かさを獲得できたのか…。
皆、ほとんどひとつの価値観を追及しておりました。しかし本来、個々の人の目的は各々独自のものであるはずです。
と、皆がようやく気が付きはじめ、上手に表現できるようになってきたのかもしれません。
マイ・ブーム…
メディアの中の、耳ざわりのいいニュアンスのある造語の裏側に、まだ少々あやうげではありながらも、これからの社会の様相を予感しております。
東京建築士会『建築東京』98年7月号 掲載
このコラムの執筆専門家
- 岩間 隆司
- (東京都 / 建築家)
- 株式会社ソキウス 代表取締役
スマートに シンプルに 住う。 都市型住宅・集合住宅
都市の厳しい条件のもとでも、住宅や集合住宅を実現させてきました。住宅計画における制約は、生活空間に個性が生まれる、ひとつの契機として、ポジティブにとらえております。
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