相続前に預貯金をおろしておくと相続税が安くなる?

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公開日時
2009/04/03 16:07
相続がおきそうになります。私はいろいろなことが不安になり、近所の友達に相談しました。「あなたすぐ預貯金を引き出しておいた方がいいわよ。そうでないと全部税務署に見つかって相続税がたんと取られることになるわよ。」こんな伝説が巷では残っています。親族が死の危険におかれているとき、家族は不安でしょうがありません。「これから何が起きるのだろうか・・・?税金はいくらかかるのかしら?」
もし相続が起きたときにはまずやらなければならない大きな仕事は、お葬式をあげることです。葬儀には多大な費用がかかりますし、お寺へのお布施や戒名も納めなければなりません。一般的にはご夫婦の貯金はご主人の名義で貯められていることが多いでしょう。しかし名義人が亡くなった場合、金融機関は管理保全をしてむやみに亡くなった人のお金をおろすことが出来ないように口座を停止します。そしてこの預貯金はその亡くなった人の財産について、相続人間の遺産分割が決まり、所定の手続きをとって相続人に名義が変わるまでおろすことはできません。さて困った、葬式費用も払えないということになるわけです。普段から緊急避難の資金として、一部配偶者名義、子供名義に預貯金を分散していればこのような心配は要りませんが、ご主人が亭主関白だとさてどこの銀行に預金があるのやらということになります。そのため例えば奥様名義の預貯金が僅少であれば、まずお葬式の費用と、当面の生活費に充てるお金くらいは下ろしておいた方がいいでしょう。またお葬式でいただくお香典は喪主の固有の財産とされ、これには税金はかかりませんので、自由に使えるお金です。
相続税は亡くなった人(被相続人と言います)が亡くなった、そのときの財産を基に計算されます。生前に預金をおろしておけば、確かになくなった日の預金残高はその分減ります。しかしおろしたお金が被相続人の生前の病院への支払に充てたものでない限り、そのお金は手元にあるべき現金という財産ということになります。近年金融システムも電子化されていますので、取引軌跡や口座の存在もあまり労をかけずに調べることができますので、おろしておけば安心ということはありません。
しかし相続税には基礎控除があり、その金額は5,000万円と1,000万円に相続人の数を乗じた金額の合計額です。例えば相続人が配偶者と子供2人の場合は8,000万円となります。財産について相続税の評価額から債務と葬式費用を差し引いた金額が、この基礎控除額以下である場合には相続税はかかりません。また配偶者のうちいずれか一方の方が先に亡くなった相続(一般的に一次相続と言います)では、自宅の敷地の評価が最大8割減額になったり、配偶者が全部相続する場合には相続税は先送りになりかからないことになっています。
相続税を試算する等のことは必要かとは思いますが、小手先で税額を減らせるということはあまりありません。まずは必要資金を準備したら、税額の心配よりも、弔問客の名簿を作成するとかお墓の準備をするとか葬儀社に相談するなりして、心温まる葬儀をあげるご準備をしてください。
このコラムの執筆専門家

薬袋 正司(税理士)

薬袋税理士事務所 

適正な資産評価で節税を!税の町医者として中小企業を支援します

10年間の資産税専門事務所での経験をもとに事業承継までを見据えた長期的視点からの経営・会計コンサルティングを行います。主に中小企業様を対象に、「納税」を常に意識した事業戦略・自計化のアドバイスを行い、課題の根本を解決することを目指しています。

薬袋 正司
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