対象:経営コンサルティング
わたくしは,A社(完全親会社)から不動産管理業務を受託しているB社の不動産管理部門の管理職です。
A・B社間では,これまで当該業務に係る直接人件費や事務処理に要する費用等を全額負担するような委託費の体系になっていますが,A社は,どうやら,親子間の受委託費の透明性・妥当性を検討しており,この体系の見直しを考えているようです。
この委託費の体系の「一般管理費」の扱いについて質問です。
どうも,この体系を初めて構築した際,直接人件費・諸経費の全額負担はよしとして,「一般管理費」も全額負担でしたが,一定額を限度(頭打ち)としていました。
当初はこの一般管理費に関しても特段の問題なかったようですが,当社B社で社内不祥事が発生し(不動産管理部門ではない部門で発生),これに伴い業務品質部を設定し,間接部門の費用が増額しました。また,当初想定していなかった業務も発生しましたが,A社は直接人件費等を全額負担することから委託費に影響がないとしています。
このようなことなどから,当社B社の各部門に配賦される「一般管理費」も増額し,先の一定額(頭打ち)を突破しました。
しかし,当初の約定どおり,超過額は請求していません。
そして,このような状況の中で,委託費の見直し体系の問題が発生しました。
委託費の体系の見直し,例えば,現行の全額補填方式を見直す方向(例えば,事務処理に要する必要人役を算定し,これに人件費単価を乗じて算定する積上方式)ならば,「一般管理費」の不足額を請求するという考えもあります。
また,全額補填方式は当社B社として魅力的ですので,当社B社の「不動産管理部門」以外で発生した不祥事により一般管理費が増額したのであれば,何らかの尺度で「不動産管理部門の一般管理費」を算定して,それにもとづきA社(親会社)と協議するということも考えられます。
なお,A社は,親子会社間の受委託業務について,子会社B社に利益が出ることはないとの考えがあります。
どのような方向がよろしいか悩んでいるところです。
何かアドバイスいただければ,よろこびます。
また,参考となる書籍等の紹介をいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
しまったヨッシーさん ( 広島県 / 男性 / 49歳 )
回答:1件
合理的な方法で一般管理費を算定し、交渉してはどうでしょう
しまったヨッシーさん、こんにちは。
親会社様からの委託費の体系見直しに際して、販売費・一般管理費の請求方法についてのご質問ですね。
(1).請求の基本方針について
親会社様としては、委託費の体系の見直しは、内外に内部取引が合理的に行われていることを示すことが目的と思われます。したがって、B社様としても合理的な説明により妥当な金額を親会社様に請求することが良いと思います。受託業務に関わる経費は直接原価と間接原価(販売費・一般管理費)から構成されますが、B社が利益を出さないとは、売上(つまり受託額)から直接原価と販売費・一般管理費を差し引くと営業利益がゼロになるという意味なのでしょうか。いずれにしろこの考え方に沿って直接原価、販売費・一般管理費とも合理的な算定方式を親会社と協議の上明確にしておくことをお勧めします。
(2).請求のタイミングについて
合理的な算定で請求するとすれば、事後ではなく、年度末に次年度の販売費・一般管理費分の請求金額または算定方法をあらかじめ合意しておくことになるでしょうか。この方法ですと、いままでの上限のみを決めておく方法に比べ、親会社様には金額を確定できるメリットがあり受け入れられやすいと思います。その反面、B社様はより厳密な予算管理が求められます。しかし、何に対してどのような費用が発生しているかを明確にすることは今後の企業の施策立案の基本情報になりますので、今回の見直しはその好機とも考えられます。
(3).販売費・一般管理費の請求の単位
今回の場合、固定費的な社内の管理業務の増大が販売費・一般管理を押し上げているようですので、固定費として親会社様に請求できるのであればそれが望ましいでしょう。
しかし、不動産管理部門にかかわる部分を切り出す必要や受託費に比例して請求する必要があるのであれば、配賦が必要になります。配賦の考え方のひとつにActivity Based Costingがあります。
(4).Activity Based Costing
Activity Based Costingとは、もともとは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のロバート・S・キャプランが1980年代に製造業の間接費をどう把握・管理するかという目的で提唱したもので、販売費・一般管理費に向けたものではありません。しかし、その後物流費など各方面に応用されている考え方で、販売費・一般管理費にも考え方は応用できます。
原価を活動原価という単位に細分化し、コストドライバーという活動原価の発生額と比例関係にある基準で製品に配賦していこうというものです。生産量が多い製品により大きな金額が配賦されてしまう伝統的な原価計算とは違い、投入された原価を投入を受けた製品に配賦することを目指しています。
ABC/ABM/活動基準原価計算などのキーワードで検索していただくと何冊かの市販の書籍がhitすると思いますのでご参考になさっててください。
しまったヨッシーさんとB社様の円滑な業務運営をお祈り致します。
補足
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次回以降の、質問時にご利用を検討下さい。
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回答専門家
- 小松 和弘
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ホットネット株式会社 代表取締役
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