日本人は戦後、長きにわたり世界一の長寿を誇ってきましたが、実際に健康を謳歌し実感している人は、意外と少ないのではないでしょうか。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病はもとより、うつ病などの精神疾患、花粉症などのアレルギー疾患が急増しています。そのような明らかな病気がない方でも、慢性的な疲労や頭痛、肩凝り、イライラ感、不眠など様々な症状に悩まされている方が著しく増えています。
その中でも「ガン」が日本人の間で急増していることは、特に強調されるべき事実です。人口10万人あたりのガンによる死者数をみると、1960年で約100人だったのが、1995年で約200人、2010年では300人近くまで増加しています。すなわちこの半世紀で約3倍という急増ぶりで、1980年以降は常に国民の死因の第1位を占めており、今や国民の3人に1人はガンで亡くなる時代に入っているのです。
ガンによる死者数が増えているだけではありません。実はガンに罹る人の低年齢化が進んでいます。他の主要な死因である心臓病や脳血管障害に比べ、ガンは比較的若い人が罹りやすい病気ですが、最近とみに目立つのは、40代や30代、さらには20代以下の若い世代の方がガンで命を落とす事例です。高齢化の進行とともに高齢者のガンも増えてはいますが、それ以上に若者のガンがたいへん多くなっています。
このようなガンの蔓延に対し、医師や病院、製薬会社、国などは様々な研究や取り組みを行なってきました。医師の集まりである医学会や医師会では、ガンに対する多角的な研究や臨床活動を続けています。「ガン検診」をはじめガンを早期に発見する取り組みは高度化し、中には世界最先端を行っている分野もあります。またガンの手術も発達し、少なくとも早期ガンに関しては非常に優れた成績を挙げています。
製薬会社も負けてはいません。ガン細胞を殺傷する「抗ガン剤」の開発に製薬各社はしのぎを削り、より効果的で副作用の少ない薬の開発に懸命に取り組んでいます。抗ガン剤というと副作用が強いばかりで効果が薄いという印象があり、まさにそれは否定できないのですが、最近では副作用が比較的軽く、一部のガンには驚くほどの効果をみせる薬剤も登場し、一定の臨床的な成果を挙げつつあります。
ガンを予防する取り組みも遅ればせながら進行しています。肺ガンの主要な原因としてタバコが挙げられており、米国を中心に「禁煙」運動が繰り広げられていますが、日本でもようやく禁煙への意識が浸透し、喫煙率は男性を中心に低下してきています。それに伴い、タバコとの関わりが特に強い肺の扁平上皮癌は減少傾向になっています。これを契機として、ガンを予防しようという機運は確かに定着してきました・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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