DESの債権者側の税務上の取扱 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2016年12月02日更新

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DESの債権者側の税務上の取扱

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債務整理

(2) DESの債権者側の税務上の取扱

DESの課税関係は次のとおり整理できます。例として,10億円の債権が,時価3億円の株式と評価される場合を例に,債権者側の税務処理は次のようになります。

① 子会社に対して100%の支配関係があるなど,適格現物出資の要件が存する場合なら,債権の簿価が承継され,株式の簿価は10億円になります(法人税法施行令119条1項7号)。

②支配関係にある子会社等へのDESなら,株式の簿価は10億円になります。法人税基本通達9-1-12(増資払込み後における株式の評価損)に該当し,9-1-15(企業支配株式等の時価)だからです。DES実行の直後に出資金の評価損を計上することは認められません。東京地判平成元年9月25日判例時報1328号22頁およびその控訴審である東京高判平成3年5月25日行裁例集42巻5~7号1033頁も同旨です。

 株式を簿価以下で第三者へ譲渡した場合の譲渡損については,以下の裁判例があります。関連法人に対する額面金額(発行価額)を超えた新株払込みについて,当該超過部分は,対価がなく,後に生ずる有価証券売却益に見合う株式売却損を発生させ,法人税の課税を回避することを目的としたものであり,経済取引として十分に首肯し得る合理的理由もないから,「資産又は経済的利益の無償の供与」として,法人税法37条の寄附金に当たるとされた福井地判平成13年1月17日訟務月報48巻5号1550頁およびその控訴審である名古屋高金沢支判平成14年5月15日公刊物未登載があります。

 参考として,法人税基本通達を掲げます。

法人税基本通達9-1-12(増資払込み後における株式の評価損)

 株式(出資を含む。以下,9-1-12において同じ。)を有している法人が当該株式の発行法人の増資に係る新株を引き受けて払込みをした場合には,仮に当該発行法人が増資の直前において債務超過の状態にあり,かつ,その増資後においてなお債務超過の状態が解消していないとしても,その増資後における当該発行法人の株式については法人税法施行令第58条第1項第2号ロ≪上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実≫に掲げる事実はないものとする。ただし,その増資から相当の期間を経過した後において改めて当該事実が生じたと認められる場合には,この限りではない。(昭54直法2-31により追加,平21課法2-5により改正)

法人税基本通達9-1-15(企業支配株式等の時価)

法人の有する企業支配株式等(法人税法施行令第119条の2第2項第2号≪企業支配株式等の意義 に規定する株式または出資をいう。以下,9-1-15において同じ。)の取得がその企業支配株式等の発行法人の企業支配をするためにされたものと認められるときは,当該企業支配株式等の価額は,当該株式等の通常の価額に企業支配に係る対価の額を加算した金額とする。(平12課法2-7により改正)

 

③法的整理またはそれに準ずる債権者集会の決議など,会社の再建のために行われるDESなら,3億円相当の出資金の取得と,7億円の貸倒損失の計上になります。法人税基本通達9-5-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)に次の通り規定されるところです。

法人税基本通達9-5-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)。

法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には,その金銭債権のうち次に掲げる金額は,その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。

(ⅰ)会社更生法若しくは金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定又は民事再生法の規定による再生計画認可の決定があった場合において,これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(ⅱ)会社法の規定による特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において,この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(ⅲ)法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

ロ 行政機関又は金融機関その他第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

(ⅳ)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し,その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において,その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

 

④合理的な整理・再建計画に基づくDESの場合は,出資金の簿価は3億円になり,差額の7億円の損金処理が可能になります。それが法人税基本通達2-3-14(債権の現物出資により取得した株式の取得価額)であり,9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等),9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息資付け等)の取り扱いだからです。寄附金に該当するかどうかの検討は後に詳しく述べます。

⑤ 上記のいずれにも該当しない場合でも,実際には,3億円しか回収できない債権のDESなら,出資金の帳簿価額は3億円になり,差額の7億円は貸倒損失になります。法人税法基本通達9-5-2が次の通り定めるところです。 

法人税基本通達9-5-2(回収不能の金銭債権の貸倒れ)

法人の有する金銭債権につき,その債務者の資産状況,支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には,その明らかになった事業年度において,当該金銭債権について担保物があるときは,その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることができないものとする。

(注)保証債務は,現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象とすることはできないことに留意する。

 ⑥ さらに,以上のいずれの要件も満たさない場合は,取得した株式の時価と債権額の差額について,寄附金と認定されるリスクがあり,株式を第三者に処分した場合でも譲渡損の計上が否認される可能性があります。

東京地判平成19・5・12公刊物未登載では,原告が,私的整理ガイドラインに従い,子会社の倒産防止(再建)のために行ったと主張する(ただし金融機関は債権放棄していないので私的整理ガイドラインの要件は満たしていない)金銭債権の放棄は寄付金に該当するとして税務署長が行った更正処分は,子会社が決算書上債務超過の状態にあったことを考慮しても,子会社が倒産の危機にあったとまではいえないことを理由に,適法であるとして原告の更正処分取消請求を棄却しました。

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