DESの債務者側の税務上の取扱 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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DESの債務者側の税務上の取扱

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債務整理

2 DESの債務者側の税務上の取扱

(1)     100%グループ内の法人間の支援に関する平成22年法人税法改正

法人がその子会社等の解散,再建等に伴い,当該子会社等のために損失負担等をした場合において,そのことについて相当な理由があるときは,その損失負担等により供与する経済的利益は寄附金に該当しないと取り扱われています(法人税法基本通達9-4-1)が,平成22年改正は,寄附金の概念を変更するものではありません。

 すなわち,相当な理由のある損失負担は負担者側の損金,子会社等の益金となり,相当の理由のない損失負担等は寄附金として取り扱われます。

 その上で,寄附金とされた場合に,損金または益金に算入されるかという問題について,今回の改正が影響をおよぼします。

内国法人が各事業年度においてその内国法人との間に完全支配関係[原則として株式・出資の100%を有していること]がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は,その支出した内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入されないことになりました(改正後の法人税法37条2項,81条の6第2項)。

 内国法人が各事業年度においてその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額を受けた内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金に算入しないこととされました(改正後の法人税法25条の2)。

(2)法令の定め

①     適格現物出資

(ア)適格現物出資の要件

法人税法2条12号の14に適格現物出資が定義されています。

次のいずれかに該当する現物出資(外国法人に国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債の移転を行うもの及び新株予約権付社債に付された新株予約権の行使に伴う当該新株予約権付社債についての社債の給付を除き,現物出資法人に被現物出資法人の株式のみが交付されるものに限る。)をいいます。

  イ その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係がある場合の当該現物出資

  ロ その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の総数の百分の五十を超え,かつ,百分の百に満たない数の株式を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係がある場合の当該現物出資のうち,次に掲げる要件のすべてに該当するもの

  (ⅰ) 当該現物出資により現物出資事業(現物出資法人の現物出資前に営む事業のうち,当該現物出資により被現物出資法人において営まれることとなるものをいう。ロにおいて同じ。)に係る主要な資産及び負債が当該被現物出資法人に移転していること(当該現物出資後に当該被現物出資法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には,当該主要な資産及び負債が,当該現物出資により当該被現物出資法人に移転し,当該適格合併により当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれていること。)。

  (ⅱ) 当該現物出資の直前の現物出資事業に係る従業者のうち,その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該現物出資後に当該被現物出資法人の業務に従事することが見込まれていること(当該現物出資後に当該被現物出資法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には,当該相当する数の者が,当該現物出資後に当該被現物出資法人の業務に従事し,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること。)。

  (ⅲ) 当該現物出資に係る現物出資事業が当該現物出資後に当該被現物出資法人において引き続き営まれることが見込まれていること(当該現物出資後に当該被現物出資法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には,当該現物出資事業が,当該現物出資後に当該被現物出資法人において営まれ,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること。)。

  ハ その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人(当該現物出資が法人を設立する現物出資である場合にあつては,当該現物出資法人と他の現物出資法人)とが共同で事業を営むための現物出資として政令で定めるもの

(イ)適格現物出資の場合の資本金等

法人税法施行令第8条1項8号は,法人の資本金等の額の算定上,法人の資本金額又は出資金の額に加算する項目として列挙されています。

8号    適格現物出資により移転を受けた資産及び当該資産と併せて移転を受けた負債の純資産価額(現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該資産の帳簿価額から当該現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該負債の帳簿価額(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には,当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)を減算した金額をいう。)から当該適格現物出資により増加した資本金の額又は出資金の額(法人を設立する適格現物出資にあつては,その設立の時における資本金の額又は出資金の額)を減算した金額

②     非適格現物出資

(ア)非適格現物出資の資本金等の額

平成18年税制改正により,DESに係る資本金等の額は,原則として時価評価説が採用されることになりました(適格現物出資の場合を除きます)。

法人税法施行令第8条1項9号は,法人の資本金等の額の算定上,法人の資本金額又は出資金の額に加算する項目として列挙されています。

9号    適格現物出資に該当しない現物出資(法人税法第52条の8第1項 に規定する非適格合併等に該当するものに限る。以下「非適格現物出資」という。)により現物出資法人に交付した当該法人の株式の当該非適格現物出資の時の価額から当該非適格現物出資により増加した資本金の額又は出資金の額(法人を設立する非適格現物出資にあつては,その設立の時における資本金の額又は出資金の額)を減算した金額

(2)債務滅失差益

 上記のとおり,適格現物出資の場合には帳簿価格で資本金等の額が増加するので,DESを実行した場合には債務滅失差益は生じません。

 しかし,非適格現物出資の場合には,時価評価により,現物出資される債権の券面額と時価評価される資本金等の額との差額が債務滅失差益として認識され,益金となります。

(3)債務者側の税務上の取扱~欠損金の損金算入~

 平成18年税制改正により,税務上,債務滅失差益に対して課税が生じることになり,企業再生等を目的としたDESについて資金的に支障をきたすことが予想されました。

 そこで,平成18年税制改正においては,それに対する手当てとして,法人税法59条(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)の適用範囲に「当該債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合でその消滅した債務に係る利益の額が生ずるときを含む。」(法人税法59条1項かっこ書き)旨を追加して,債務滅失差益についても,期限切れ欠損金について損金算入できる可能性を確保しました。

 欠損金の損金算入ができる場合は以下のとおりです。

①     会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の決定(法人税法59条1項)

②     民事再生手続開始決定(法人税法59条2項,法人税法施行令117条1号)

③     特別清算開始決定(法人税法施行令117条2号)

④     破産手続開始決定(法人税法施行令117条3号)

⑤     法人税法施行令117条4号(再生手続開始の決定に準ずる事実等)に規定する「前3号に掲げる事実に準じる」とは,次に掲げる事実をいいます(法人税法基本通達12-3-1)

(ⅰ)上記①から④までに掲げる事実以外において法律の定める手続による資産の整理があったこと

(ⅱ)主務官庁の指示に基づき再建整理のための一連の手続を織り込んだ一定の計画を作成し,これに従って行う資産の整理があったこと

(ⅲ)上記(ⅰ)および(ⅱ)以外の資産の整理で,例えば,親子会社間において親会社が子会社に対して有する再建を単に免除するというようなものではなく,債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等その決定についてし意性がなく,かつ,その内容に合理性があると認められる資産の整理があったこと。

 従って,例えば中小企業におけるオーナー社長個人単独でのDESなどは当然に非適格現物出資に該当する可能性が高いと考えられますので,DESを実行する際の債務滅失差益に対する課税は資金計画上,十分に注意する必要があります。

(4)  地方税への影響

①  DESを実行する場合には,税務上はDESに係る債権の出資の時の価額が資本金等の額となるため,「地方税の均等割額」及び「外形標準課税における資本割」の増加要因になるかどうかが,問題となります。

 地方税法の資本金等の額は,法人税法に規定されている資本金等の額と規定されています(地方税法23条1項4号の5)。

②無償減資等に係る資本割特例

 例えばA社が赤字の穴埋めのために資本金100(全額)を取り崩す場合,会計上は資本金100を減らすが,法人税法はその100を資本金等の額に加算するため(法人税法施行令8条1項9号),「資本金等の額」は変わりません。法人税法上は,その後,無償減資等を行って資本金を減額した場合でも,税務上その減額した額は資本積立金額の増加となりますから,資本金等の額に変更はないため減資前と同じ結果となります。

結果的に,赤字で無償減資したにも関わらず,資本割の課税標準である「資本金等の額」が変わらないこととなるため,外形標準課税の負担が生じてしまうおそれがありました。

 そこで,地方税法は,平成22年改正で新たに規定(無償減資等に係る資本割特例)を設け,欠損てん補のために無償減資等した場合には,その減資分を「資本金等の額」から控除することで税負担を軽減させる措置を講じています(地方税法72条の21第1項2号3号)。

③外形標準課税の適用対象の法人の場合

 外形標準課税の適用対象法人については,「資本金等の額」ではなく,資本積立金額を含めない「資本の金額又は出資金額」が1億円超か否かで判定しますので,減資後に「資本の金額又は出資金額」が1億円以下となった場合には適用対象外となります。

 つまり,外形標準課税については,対象の判定は「資本の金額又は出資金額」,資本割の計算は「資本金等の額」となることに注意が必要です。

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