事業承継における生命保険の利用 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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事業承継における生命保険の利用

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相続

第3章 生命保険の利用

第1 事業承継における生命保険の利用

 事業承継が問題となる中小企業の経営者(被相続人)の財産は、換金困難な非上場株式や切り売りしてしまうと事業の継続が困難となるような不動産で構成されている場合が多いです。このような場合には、相続人において納税資金の確保が問題となります。

納税資金の確保という観点から生命保険を利用することは、次の意味で有効です。第一に、生命保険金には非課税枠があるので、非課税枠の分だけ節税効果が期待できます。第二に、生命保険金を支払う保険会社が倒産しない限り、保険金受領者とされている者は、確実に保険金額を手にすることができます。そして、第三に、生命保険金は現金で受け取るため、代償分割の際に代償交付金とするなど、非上場株式や不動産に比べてその使途に柔軟性があります。

 

 また、生命保険金は、保険料の支払者、保険金の受取人等が誰であるかによって死亡時の課税関係が異なります。

●【生命保険金の課税関係の図表】

保険契約者

被相続人

相続人

相続人A

被保険者

被相続人

被相続人

被相続人

保険金受取人

相続人

相続人

被相続人B

死亡時の課税関係

相続税

(非課税枠)

所得税

贈与税

 以上のうち、保険契約者および被保険者が被相続人で、本人の死亡を原因として相続人が保険金を受け取った場合には、以下の算式により算出される相続税の非課税枠が設けられています。そのため当該非課税枠の限度で相続税が軽減されることになります(相続税法12条1項5号)。

非課税枠=法定相続人数×500万円

例えば、相続人が妻と子供1人の合計2人の場合には、非課税枠は2×500万円=1000万円となります。

 また、上記の表のうち、保険契約者と保険金受取人を両方相続人である子供にした場合には、相続人である子供が受け取った生命保険金には所得税が課せられます。そうすると、当該生命保険金は、受取人固有の財産とされるということになり、相続の対象とならないため遺産分割の影響を受けることなく、相続人である子供の納税資金とすることができます。この手法は、子供が2人以上いる場合で、そのいずれかに事業を承継させたいときに有用です。後継者となるべき子供の納税資金の確保につながるからです。また、所得税の最高税率は25%であるのに対して、相続税や贈与税の最高税率は50%です。税率の面では、所得税が最も有利といえるでしょう。

 では、保険契約上の受取人以外の者が保険金を受け取った場合には、どのような課税関係になるでしょうか。この場合には、まずは保険契約上の受取人がその保険金を取得したと認定して相続税が課された上、さらに保険契約上の受取人がその保険金を現実の取得者に贈与したと認定して贈与税が課されることになります。

第2 法人における生命保険の利用と退職手当金等

1 法人における生命保険の利用

(1) 納税資金確保のため、法人が生命保険契約を締結し、死亡保険金を原資として経営者の相続人に退職手当金または弔慰金を支給することができます。

(2)法人契約の生命保険の経理および税務処理について

 

①    生命保険の種類

 生命保険の種類は、大きく分けて3つあります。養老保険、定期保険、終身保険の3つです。

(ⅰ)養老保険

 養老保険とは、被保険者が死亡したときまたは保険期間が満了したときに、それぞれ死亡保険金または満期保険金が支払われる生命保険をいいます。

 保険期間が満期になれば満期保険金が支払われるので、貯蓄性が高いのが特徴です。

(ⅱ)定期保険

 定期保険とは、一定期間内に被保険者が死亡した場合にのみ保険金が支払われる生命保険です。養老保険とは異なり、満期保険金の支払いはありません。

(ⅲ)終身保険

 終身保険とは、生命保険のうち契約期間の終了がなく、死亡したときに所定の保険金がいつでも支払われる保険をいいます。当初は、養老保険と定期保険の二つしかありませんでしたが、平均寿命が伸びるにつれて、いずれも老後を迎える前に保険期間の満了が来てしまうこと欠点でした。この欠点を補うために販売されるようになった保険が終身保険です。

 

②    税務上の取り扱い

 法人が役員や従業員を被保険者として、保険契約をした場合の税務上の取り扱いは以下のとおりです(法人税基本通達9-3-4、9-3-5、9-3-6)。

 

保険金受取人

税務上の取り扱い

 

死亡保険金

満期保険金

主契約保険料

特約保険料

養老保険

法人

法人

前払保険料として資産計上

損金参入

遺族

被保険者

役員または使用人に対する給与

損金算入

遺族

法人

保険料の1/2を前払保険料として資産計上

損金算入

保険料の1/2を福利厚生費として損金算入

損金算入

定期保険

法人

なし

福利厚生費として損金算入

遺族

なし

福利厚生費として損金算入

 

 

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