- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:事業再生と承継・M&A
第6章 延納
第1 延納の要件
相続税は、納付すべき税額を、被相続人の死亡の日の翌日から10ヶ月以内に一括で納付するのが原則です。しかし、一括納付をするのに十分な金銭がない場合、以下の延納の届出が認められるための要件を充たすことによって、相続税の延納をすることができます。後継者たる相続人に納税資金が十分でなく一括納付できない場合に有用です(相続税法38条)。
(ⅰ)相続税額が10万円を超えていること
(ⅱ)金銭で納付することが困難な金額の範囲であること
(ⅲ)申請書および担保提供関連書類を期日まで提出すること
(ⅳ)延納税額に対する担保を提供すること
ただし、(ⅳ)について、延納税額が50万円未満で、かつ、延納期間が3年以下の場合は担保を提供する必要はありません。
なお、現金で納付する点では一括納付と同じですので、相続財産の売却等により現金を用意できない場合には、延納によることができません。
第2 延納の内容
前記の要件を充たした場合には、最高で20年まで延納することができます。
具体的には、相続財産に占める不動産や非上場株式等換価しにくい資産の割合により延納できる期間が異なります。ここで、相続財産に占める不動産等とは、不動産や不動産の上に存する権利、立木、事業用の減価償却資産、特定同族会社の株式等をいいます(相続税法38条1項、相続税法施行令13条)。
延納期間中は、資産の内訳・割合に応じた料率の利子税が課されます。延納が認められるということは、国に借金を抱えているようなものだからです。利子税については原則的な利率のほか日本銀行が定める基準割引率(公定歩合)に年4%を加算した割合が年7.3%未満である場合、延納税額にかかる利子税の割合には特例があります(相続特別措置法70条の10、70条の11、93条2項)。
利子税や利子税の特例割合も課税相続財産に占める不動産等の割合により、以下の通り異なります。
課税相続財産に占める不動産等の割合 |
延納の区分 |
延納期間 |
利子税の割合(年利率) | |
原則 |
特例 | |||
50%未満 |
‐ |
5年 |
6.0% |
3.9% |
50%以上70%未満 |
不動産等に係るもの |
15年 |
3.6% |
2.3% |
その他の部分に係るもの |
10年 |
5.4% |
3.5% | |
75%以上 |
不動産等に係るもの |
20年 |
3.6% |
2.3% |
その他の部分に係るもの |
10年 |
5.4% |
3.5% |
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