- 鮫川 誠司
- 慶友綜合リーガルサービス 司法書士(簡裁訴訟代理等関係業務認定)
- 神奈川県
- 司法書士
対象:法律手続き・書類作成
- 安井 大樹
- (司法書士)
- 折本 徹
- (行政書士)
東日本大震災から,早一ヶ月余りが経過しました。
しかし,被災地における復興は緒についたばかりであり,被災された方々が従前の生活環境を取り戻されるにはまだまだ長い時間を要されることと思います。
そのような中で,被災地において多くの方が現に直面している問題,あるいはこれから直面されるであろう問題について,これから数回に渡って,コラムとして取り上げたいと思います。
第1回は,まずは,被災された世帯の生活再建支援についてです。
自然災害の被災者支援に関する法律としては,阪神・淡路大震災をきっかけに制定された「被災者生活再建支援法」があります。
この法律は,自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受け,生活を再建することが困難な場合に,その自立した生活の開始を支援することを目的として,「被災者生活再建支援金」(以下,単に「支援金」)を支給するものです。
支援金の対象となるのは,次のような被災世帯です。
1) 全壊世帯
2) みなし全壊世帯(住宅が半壊,又は,敷地に被害が生じたため,やむを得ず住宅を解体した場合)
3) 長期避難世帯(災害による危険な状態が継続し,住宅に居住不能な状態が3年間継続している場合)
4) 大規模半壊世帯(住宅が半壊し,大規模な補修を行わなければ居住が困難な場合)
なお,これらは,いずれも「住宅」が一定の被害を受けた「世帯」を対象としており,法人(会社)には適用がありません。
また,借家の場合には,建物を所有・賃貸している賃貸人ではなく,現に居住している借家人(賃借人)に対して支給されることに注意が必要です。
そして,住宅の被害の程度に応じて,上記1)~3)の世帯に対しては金100万円が,上記4)の大規模半壊世帯に対しては金50万円が,支援金として支給されることとなっています(基礎支援金)。
また,阪神大震災当時にはなかったものですが,住宅の再建方法に応じて,建設・購入の場合には金200万円が,補修の場合には金100万円が,民間の賃貸物件を賃借した場合には金50万円が,それぞれ基礎支援金に加算して支給されることとなっています(加算支援金)。
(なお,一人暮らしの単身世帯の場合には,基礎支援金・加算支援金ともに,それぞれ4分の3の金額となります。)
東日本大震災にかかる支給金制度の適用対象は,以下の地域です。
A) 3月11日の東北地方太平洋沖地震に関しては,青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・千葉県の全域。
B) 3月12日の長野県北部地震に関しては,長野県栄村,新潟県十日町市及び津南町の各区域。
具体的な申請手続きは,「市町村」の窓口において行うこととなります。
その際,「り災証明書」が必要となりますが,被災地の各役場も復興関連の事務で混乱・混雑しており,速やかな「り災証明書」の交付が難しいことが予想されます。
東北地方太平洋沖地震にかかる支援金については平成24年4月11日(加算支援金については平成26年4月11日)までに申請しなければなりませんので,「り災証明書」は,余裕をもって,あらかじめ準備しておかれるとよいでしょう。
被災された方が生活を再建されるに当たって,上記の支援金制度は決して十分なものではないと思いますが,様々な支援制度を十分に活用され、一日も早く,落ち着いた生活を取り戻されるよう祈ります。
このコラムがその一助となれば幸いです。
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