- 平 仁
- ABC税理士法人 税理士
- 東京都
- 税理士
対象:会計・経理
税制改正であるが、今日が最後。
これまで検討していない課題として
「相続税・贈与税改革の推進」
「国税不服審判のあり方の見直し」
「徴税の適正化」
の3点を検討します。
まずは、「相続税・贈与税改革の推進」について、こう記載していた。
相続税については、「富の一部を社会に還元する」考え方に立つ
「遺産課税方式」への転換を検討します。
相続税の課税ベース、税率の見直しについては、わが国社会の安定や活力に
不可欠な中堅資産家層の育成に配慮しつつ検討します。
税収を社会保障の財源とすることも検討します。
さらに、相続税の課税方式の見直しに合わせて、現役世代への生前贈与による
財産の有効活用などの視点を含めて、贈与税のあり方も見直します。
相続税改革については、福田さんのときに遺産課税方式への転換を閣議決定まで
していたにもかかわらず、麻生さんが無視した経緯があるんですよね。
民主党案は、新しい議論ではなく、麻生さんが無視した従来からの政府税調で
検討してきた改正案をベースに考えればいいのではないでしょうか。
ただ、民主党らしいには、相続税収も社会保障財源化しようということを
考えているところでしょうね。
相続税改革は、相続税の体系の変更にとどまらず、贈与税も含めて検討
せざるを得ない。
贈与税が相続税の補完的な機能を果たしているからだ。
現行の相続税は、なくなった方の遺産の合計額を計算した上で、相続人の
人数によって控除額が変わるという仕組みになっています。
基礎控除が5000万円あって、相続人1人につき1000万円の控除がある。
そうすると、奥さんが健在で子どもが2人という方が亡くなった場合、
相続財産の評価額が8000万円を超えないと相続税の申告義務がないんです。
また、各種の特例措置を使いたい場合には、特例措置を使った評価額が
控除額を超えなくても申告が必要です。
ところが、福田さんのときに閣議決定した内容では、遺産の取得者が相続税の
申告義務と納付義務を負うことになっています。
具体的な改正案まで至らないうちに政権を投げ出されてしまったために、
詳細は決まっていませんでしたので、不明な点も多いのですが、遺産課税方式
をベースにしていた現行法から遺産取得課税方式に切り替わるとなると、
相続税に対する考え方はまったく変わってしまいます。
そういう意味では、民主党案が早急にまとまってくれることを期待しています。
次に「国税不服審判のあり方の見直し」について見てみよう。
納税者の権利を重視し、国税不服審判所のあり方や手続きを見直します。
税が議会制民主主義の根幹であることを考えれば、個別の課税事案に対して
納得できない納税者の主張を聞く国税不服審判所は極めて重要な機関です。
しかし現状は、この重要な役割を果たすには十分ではありません。
特に、その機能を果たすために最も重要な審判官の多くを財務省・国税庁の
出身者が占めていることは問題です。
そのほかにも証拠書類の閲覧・謄写が認められていないなどの問題がある
ことから、国税審判のあり方やその手続きについて、納税者の権利を
十分に確保することを基本に見直します。
これについても近年、行政不服審査について、水野武夫弁護士・龍谷大学教授を
中心に検討がなされてきたところですが、麻生さんの時代には、結局法案が
可決されることはありませんでした。
近年、税務訴訟における勝訴率が高くなっているものの、国税不服審判所が
国税庁の外局の扱いである以上、審判所独自の判断を下しにくい事情もあるが、
民主党が指摘するように、審判官の圧倒的多数(というよりもほぼ全員)が
国税からの出向者で占められているというのは、審判所の設立趣旨からしても
おかしな異常事態といえよう。
日大の松沢教授が、「君たちのような法律をしっかり学んだ税理士に
頑張ってもらいたい」と仰られていたことが思い出される。
審判所が裁判前手続としての機能を本当に持っているならば、税務訴訟の
勝訴率が20%を超えるなどという暴挙はあり得ないはずなのだ。
機能していないからこそ、裁判までやらざるを得なくなり、納税者も
国税当局も時間の浪費をすることになるのだ。
行政不服審査制度検討委員会では、現行の異議申立→審査請求という手続を
審判所への審査請求一本にする方向で法案を作成したと聞く。
それが機能するためには、審判所の組織が開かれたものとなる必要があろう。
最後に、重要な問題ですが、従来はあまり議論されていない点である
「徴税の適正化」について見てみたい。
毎年、1兆円弱の新規滞納が生じている現状にかんがみ、徴税の適正化を図ります。
また個人・法人合計で1000億円近くも加算税が生じている状況を是正する
ため、罰則の強化や重加算税割合の引き上げを行います。
消費税の還付額が年間3兆円にも達していますが、その中に相当額の
不正な還付が存在します。
これを防止するため、還付に係わる調査機能を強化します。
企業活動の国際化に伴い、「移転価格税制」が課題となっています。
企業活動の円滑化を図るため、速やかに関係各国と調整を行う体制を整えると
同時に、一部に見られる租税条約の乱用等不適切な事案の摘発を強化します。
滞納者が多くなっても、徴税機能を強化しないとなると、真面目に納税する方が
不利になりかねない、まさに正直者がバカを見る社会になってしまう。
加算税の発生については、脱税がなくならないのは、逃げ得の可能性が高い
からではないのか。
徴税と相まって、推計課税の強化も検討するべきだと思う。
推計における第一義的な立証責任を課税当局に置くわが国の制度では、懲罰的な
推計課税を実施することは困難である。
重加算税の強化とともに、懲罰的推計課税の実行可能性を模索してもらいたい。
不正還付事件が横行しており、不正還付に対する懲罰の強化も必要であろう。
還付の適正性を確認するための税務調査部門の強化は、還付請求をすれば
税務調査が来ることを嫌がり、国に不当利得が残り続けるという弊害を生む
危険性がある。
私は、税務調査の強化ではなく、罰則の強化と推計課税の強化が必要だと思う。
国際取引を使った課税逃れも多くなっているように思う。
租税条約の濫用等の不適切事例の摘発の強化という方向もあるが、どこまで
やりきれるのだろうか。
一罰百戒ではないが、罰則の強化が徴税の適正化に繋がると思うのだが。
さて、以上が民主党政策集INDEX2009に記載された税制の内容である。
民主党政権が誕生し、従来の既成概念の枠を外して様々な改革がなされる
ことが期待されるだけに、税制改革についても思い切った改革を
行ってもらいたいものである。