民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(8) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(8)

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税制改正 平成22年度税制改正
今日は、中小企業対策を中心に検討します。
「中小企業支援税制」
「特定非営利活動法人支援税制等の拡充」
の2点を見ていこう。

「中小企業支援税制」
中小企業は団塊世代がリタイア時期を迎える中で事業承継に不安を
抱えており、これを重点的に支援することによって安定的な活動を支えます。
中小企業に係る法人税の軽減税率は当分の間11%とします。
「一人オーナー会社(特殊支配同族会社)」の役員給与に対する損金不算入措置
は廃止します。
中小企業はわが国経済の基盤であり、地域経済の柱であり、雇用の大半を
支える存在です。
このような観点から税制により、中小企業の規模に応じて、その活性化や
競争力の向上を支援することは必要です。

「特定非営利活動法人支援税制等の拡充」
官に過度に依存することなく、国民それぞれが公益実現に直接貢献する社会を
創造するために、税制で大胆な支援を行います。
認定特定非営利活動法人制度については、要件緩和、認定手続等の簡素化、
みなし寄附の損金算入限度額引き上げ、寄附の税額控除制度創設など、
支援税制を拡充します。
所得税の寄附優遇税制については、税額控除制度を創設し、現在の所得控除
制度との選択制とします。


中小企業支援税制については、事業承継対策の重視、特殊支配同族会社の
役員報酬に対する損金不算入制度の廃止、中小企業の税率軽減が柱である。
また、昨日取り上げなかったが、時限的に凍結が今春から解除された
欠損金の繰戻還付制度の凍結解除も取り上げられ、中小企業にとっては、
大きな減税効果が期待できるところだ。
しかし、これは儲かっている中小企業にとっての話で、赤字続きで青息吐息の
中小企業にとっては、殆ど効果がない減税であり、中小企業対策は、減税よりも
経済対策によって仕事を創設することの方が急がれるところだ。

麻生さんが秋に解散をしなかったお陰でようやく経済対策の効果が出てきた
と主張していましたが、まさにその通りなのかもしれません。
しかし、国民の選択は民主党。
民主党は生活重視、ということは企業優遇による経済浮揚効果よりも
弱者救済のための政策が優先されるのだから、最初は経済浮揚効果を
もたらさないかもしれない。
多くの庶民は将来不安の方が大きく、バラマキをしても消費行動には
なかなか動かない可能性は高い。
その結果景気が再び下降する危険があるだけに、その対応策をしっかりと
考えて頂きたいところだ。

まず、中小企業に対する軽減税率については、麻生さんが22%から18%に
下げていますが、民主党はさらに11%まで下げるという。
従来からすると半減ですね。
11という中途半端な数字はそういう理由でしょう。
ただ、法人所得が800万以下の部分の減税措置ですから、大きく利益を
出しているところは、大企業と同様、800万を越えた部分については
30%で課税されるわけですね。

悪名高き特殊支配同族会社の役員給与に対する損金不算入措置は、安倍さんの
ときに導入して、福田さんが法人所得+業務主催役員給与が800万円を
超えると適用だったところを1600万円まで適用を引き上げていますが、
問題は全くといっていいほど解消されていません。
(この点、当時の国士舘と独協の学生は覚えているかもしれませんが、
4月時点で安倍さんは6月以降尽きると言っていたんですよね。
まさか本当に投げ出すとは思いませんでしたが。
その根拠にしていたのが、この規定だったんですよね。)
例えば月額報酬を100万円貰っている中小企業オーナーの会社が400万の
利益を出したらもう適用なんですね。
そうすると、大企業のオーナーはその程度貰っていても法人税に全く関係が
ないのに、中小企業のオヤジはダメなんてバカな話が出来上がるわけです。
民主党政権にはまずこの規定の全廃を早急にお願いしたいところだ。

団塊世代のリタイアとともに、中小企業の事業承継問題が大問題に
なりつつあります。
オーナー一族の財産を保全することを相続税対策として打つだけなら、
後を誰も継がないと判っているならば、ムリに継がせるのではなく、
タイミングを見て廃業を選択するのがベストでしょう。
私は家が残せるタイミングなら廃業するのが家族のためと考えています。

しかし、その会社の従業員にとってはどうでしょう。
廃業されてしまえば再就職先を探さなければならなくなってしまうのだ。

従業員のことを思えば、早いうちから誰があとを継ぐのか、決めて頂く
必要があるんですね。
相続税対策・事業承継対策の意味でも、事業後継者は早く決めておくべきです。

私は円滑な事業承継を成功させるには10年の余裕を見るべきだと思います。
後を引き継ぐ方の心の準備も必要ですし、対外的な信用を短期間で築きあげる
ことが困難だからです。
また、ムリな形で財産を引き継がせようとするので、税務署からはオイシイ話
になってしまうケースが散在しています。
さらには、役員退職金についても、本当に退職しているのであればともかく、
実際には退職していないケースでは、役員退職金の損金算入が否認される
だけではなく、ご自身の退職所得も否認されるので、法人税・所得税の
ダブルパンチです。
だからこそ、時間をかけてじっくりと対策を立てていくべきなんです。

民主党案の詳細が不明なので、事業承継対策がどのようなものになるのか、
非常に注目しています。

特定NPO法人については、その認定基準が非常に厳しく、一般NPO法人
として優遇税制の対象になっていないケースも多いのではないでしょうか。
民主党には、その認定基準の軽減化を是非お願いしたいところだ。
また、NPOは寄付で成り立っているだけに、寄付金控除を含め、優遇税制を
導入することは検討すべきだと思います。
これは政治家の皆さんにも自分の懐に関わってくるわけで、企業献金を廃止し、
個人献金のみに切り替えることになると、寄付の文化が根付いてこないと、
政治資金が枯渇する危険もあろう。
ただし、故人献金などという不正行為はお断りだ。
この辺も含めて、個人の寄付については、じっくり検討して頂きたいですね。