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なぜ芸能界で薬物事件が続くのか

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医療ニュース

芸能界にまた薬物疑惑が浮上した。7日、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕状が出た女優の酒井法子容疑者。3日には麻薬取締法違反の疑いで、俳優の押尾学容疑者(31)が逮捕されたばかり。過去にもタレントやミュージシャンなど数々の有名人が逮捕されており、薬物事件が後を絶たない。


2000年以降でも、01年にタレントのいしだ壱成さんとカルーセル麻紀さん、田代まさしさんらが大麻取締法違反容疑や覚せい剤取締法違反容疑などで逮捕された。

06年には人気音楽グループ「ドリームズ・カム・トゥルー」の元メンバー西川隆宏さん、07年には人気アイドルグループ「光GENJI」の元メンバー赤坂晃さん、08年には俳優の加勢大周さんも逮捕されている。

産経ニュース2009.8.7引用


ここ連日残念なニュースが報道されています。子供や若者が憧れていた方々が違法薬物を使用し、逮捕されています。覚醒剤とは、狭義には覚醒剤取締法に規定されている薬物で、アンフェタミンやメタアンフェタミンという薬物が相当します。広義には脳に作用する中枢神経刺激薬、全般を指すとも言われています。メチルフェニデート、コカイン、MDMA、更には、ニコチン、アルコール、カフェインを含めることもあるようです。

共通する薬理は脳内のドパミン神経系への作用で、多幸感や爽快感などを生じます。薬物により作用の強度および中毒性や依存性が異なります。アンフェタミンやメタアンフェタミンを多用・連用すると、精神運動興奮、幻覚・妄想などの精神病症状が生じたり、動悸や発汗など交感神経刺激症状をはじめ、循環器・脳血管障害を引き起こすこともあります。

従って、心身へ影響する度合いが問題であり、煙草やお酒、珈琲なども広義の覚醒剤ながら、深刻な副作用を呈さないため合法とされているわけです。もっとも精神医療の現場においては、ニコチン・アルコール・カフェインも精神作用物質の一つとして、過剰・有害使用が認められる場合は、「治療」による減量または中止を勧告しております。

しかし誰もが薬物依存症になるわけではありません。お酒や珈琲をたしなむ程度の方もいれば、健康を害するまで飲んでしまう方もいます。その違いは上記のドパミン親性にあると言えるかもしれません。ドパミンが報酬系や新規性探求に関わる神経伝達物質と言われるよう、刺激や興奮を求めやすい方が覚醒剤を求めやすいと考えられます。小さな幸せに満足できず、強い快感を求める方が依存症になりやすいとも言えるわけです。実際、診療においても派手な服装や強い香水、大袈裟な発言などを認めることが少なくありません。誇大的・顕示型の性格傾向とも言えます。

一方、そのような性格傾向の方は元来の遺伝的な素因もさることながら、幼少期に薄幸な家庭に育った方が多いと言われています。両親が幼い時に離婚していたり、父親が酒乱・暴君だったり、母親に過剰な愛情(束縛)を受けていたりした話をよくうかがいます。いわゆる機能不全家族といわれる家庭です。

酒井法子容疑者は両親が2歳時に離婚。母はその2年後に死去。同容疑者は芸能界入り後、実母について公にすることもなく、「記憶がない」とだけ話している。小学校時代は福岡市と、父の妹が住む狭山市を数年ごとに行き来した。狭山市の小学校に通う時は親せきの姓を名乗った。小学校期間中に、父は2度目の結婚をした。

小学校卒業後、父の3度目の結婚を機に福岡市に戻り、父、継母と同居した。14歳時にスカウトされて上京。所属事務所社長宅に住み込んだ。関係者は「そのころ父親が足を洗ったと聞いています」と話しており、父は暴力団関係の仕事から離れ、継母の兄の紹介で山梨に移り住んだとみられる。父は同容疑者が活躍し始めた直後の18歳の時に交通事故で死去した。

日刊スポーツ2009.8.21抜粋


このような環境で育ち、思春期以降も「生きづらさ」を感じている方々をアダルト・チルドレンといいます。これらはアルコール依存症の自助グループにて用いられた言葉で、精神医学的には情緒不安定性パーソナリティ障害が近似しています。

情緒不安定性パーソナリティ障害とは感情の不安定さ主徴とし、結果を考慮せず、衝動的に行動するパーソナリティとされます。暴力や攻撃的な言動をするタイプ(衝動型)と空虚感や孤独感から不安定な対人関係や自殺・自傷行為を行うタイプ(境界型)とに分類されます。いずれも衝動性と自己制御の困難を認めます。また上記のように、空虚感や孤独感を代償するかのごとく、誇大的・顕示型の言動を生じることもあります。大袈裟な言動をすることで周囲の注目を集めたり、不適切な異性関係な繰り返したり、自分の利益のために他人を利用したりします。このようなタイプは演技性や自己愛性のパーソナリティに相当します。

演技性や自己愛性と呼ばれるパーソナリティの「傾向」は職業として人目を引き、人並み外れた活躍を期待される芸能人や政治家の方などにしばしば見受けられます。人気や業績を上げ、脚光を浴びている間は問題が目立ちませんが、高齢化や不祥事などから低迷すると、酒や煙草、薬に頼るようになるわけです。なお「障害」と医学的な診断をするには、本人が苦痛を覚えたり、社会適応の困難な状態が持続している場合に限定されます。

では、パーソナリティ障害と診断されるほど、本人が苦痛を生じたり、周囲を混乱させてしまう方が回復するにはどうすればよいでしょう。自傷行為を行ったり、違法薬物を乱用したりすることなく、つつがない穏やかな生活を送るにはどうすればよいのでしょう。それにはまず、自分を冷静に見つめることです。自分の良い点も悪い点も平等に観察し、正当な評価を行います。認知行動療法では「セルフモニタリング」といいます。問題点は紙に書き出したり、信頼できる人に相談したりして、日々改善に努めます。そして、お手本となる人を「ロールモデル」とし、「ロールプレイ」を繰り返すと良いでしょう。できれば、家族や友人にご協力していただき、「フィードバック」を受けるとベターです。良くなった点も積極的に褒めていただき、「セルフエスティーム」を高めていけるとベストです。

セルフエスティーム・自己評価は高すぎても低すぎてもいけません。高すぎる自己評価は周囲と軋轢を起こしますし、低すぎる自己評価は不全感や劣等感に悩まされます。華々しい活躍をされていた芸能人や政治家が、実は人知れず悩みを抱き続け、突然、手記や告白を発表したり、事件や事故に巻き込まれたりすることがあるのは、そのような問題を内在していたからでしょう。表面上は何事もないかのように笑顔で振る舞っていても、心の内ではずっと泣いていたわけです。感情をそのまま表に出すべきではありませんが、本当の気持ちを穏やかに表現することは精神的な健康を送る上で必要な行為です。そしてあるがままの自分を素直に受け入れ、背伸びをせず、卑屈にもならず、自然体で生きることが望まれます。問題を一人で抱えきれない時は臆せず周囲の方々や心の専門家に相談しましょう。

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