100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者 失踪の謎 - 心の病気・カウンセリング - 専門家プロファイル

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100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者 失踪の謎

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医療ニュース

宇宙に果てはあるのか?宇宙は一体どんな形なのか?人類が長年、問い続けてきた謎に大きく迫るヒントが2006年に見つかった。百年もの間、誰も解けなかった数学の難問「ポアンカレ予想」が証明され、宇宙がとりうる複数の形が初めて明らかになったのだ。世紀の難問を解いたのはロシアの数学者グリゴリ・ペレリマン。その功績により、数学界最高の栄誉とされるフィールズ賞の受賞が決まったが、彼は受賞を拒否し、数学の表舞台から消え去ってしまった。その真意をめぐって様々な憶測を生んでいる。「ポアンカレ予想」にはこれまで、幾多の天才たちが魅了され、人生のすべてを賭けて挑み、そして敗れ去ってきた。ペレリマンがその栄誉に背を向け、姿を消したのはなぜか。そもそも数学者はなぜ難問に挑み続けるのか。番組は、ポアンカレ予想が解けるまでの百年にわたる天才たちの格闘のドラマを追い、ともすれば取りつきにくい純粋数学の世界と数学者たちの数奇な人間模様を描いていく。CGと実写の合成を駆使し、“天才の頭の中”を映像化する知的エンターテイメント番組とする。
100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎〜NHKスペシャル



天才数学者ペレリマンの偉業と失踪は精神医学的にも大変、興味深い出来事です。周囲の人々と接触は最低限にし、一心不乱に数学の難問に立ち向かう。禁欲と孤独の生活の中、限界寸前の精神状態で世紀の難問は解決されました。それと引き換えに彼の精神は・・・・・・。ペレリマンの現在の様子は明らかにはなっていませんが、健康とは言いがたい状態だと思います。番組では高校時代の恩師の訪問も謝絶し、自宅にひきこもっている様子が放映されました。周囲の人々も滅多に姿を見ることなく、母親と二人で、母親の年金で生活しているともいいます。

古今東西、天才は心の病を伴うことが少なくありません。それはニュートンやアインシュタインのような科学者からトルストイやヘミングウェイのような作家まで枚挙にいとまがありません。日本国内においては芥川龍之介や川端康成が自殺に至ったことは有名なことですし、最近でも作家や芸術家の方が自殺されたニュースをしばしば耳にします。その背景には統合失調症、躁鬱病と様々な病態が考えられますが、いずれにおいても、創造性精神病とが表裏一体であったことが想像されます。

統合失調症とは幻覚や妄想を主症状とする病気です。幻聴が音楽性を帯び、まとまった形を得ると作曲につながるかもしれません。ベートーベンやシューマンといった作曲家が晩年、精神病症状を呈していたことを考えると、多くの交響曲がその種の性質を帯びていた可能性があります。誇大妄想が科学性を得て、数式に結びつくと発明や発見につながるのかもしれません。天才数学者は難問を見た瞬間に解法が頭に浮かび、後からそれを数式に書き表すと言いますから、いわゆる妄想着想に近い現象と言えるかもしれません。

もっとも統合失調症が顕在発症している状態では創作は困難と言われています。思考はまとまりを欠き、ひどい時には支離滅裂になってしまいます。更に被害的な幻覚や妄想に悩まされることが多く、落ち着いて創作に集中することはできないでしょう。従って、発症前の状態もしくは病気の遺伝子を有した人物が時として天才的な創作を行うと考えられます。アインシュタインの息子や芥川龍之介の母親が統合失調症であったことは有名な話です。本人たちも風変わりで奇妙な言動をすることがあったようです。これらについて詳しくは「天才と分裂病の進化論」デイヴィット・ホロビン、新潮社をご覧ください。

創造性と精神病の関係を表したエビデンスとして、ナンシー・C・アンドリアセンによるアイオワ大学作家ワークショップの研究があります(天才の脳科学、青土社)これによると、30名の作家と対照例を比較し、作家は有意に''気分障害の罹患歴''を認めたそうです。但し、創作時においては正常であることが必要なようで、強い抑鬱状態においては創作自体が成り立たなくなってしまうとのことでした。私の知っている作家は、抑鬱状態における苦悩の心理を、回復時に叙述し、治療的にも役立ていると言っていました。更に、薬物治療は程ほどにしたい、適度な気分の揺れが創作につながるとも言っていました。

「天才の脳科学」によりますと、創造的な人々の特徴として以下のような記載もあります(一部改変)。

・世界に対して新鮮・独特な方法で接する
・冒険を好む、探索が好き
・慣例に無頓着だが、感受性・敏感さを共存している
・繰り返し拒絶されても、やり通す
・非常に好奇心に富んでいる

要するに、開放的、進歩的、反抗的、個人主義的、敏感・鈍感、好奇心旺盛ということです。神経伝達物質のドパミン活性による新規探求性に富んだ人物と言ってもよいでしょう。しかしこのような性格特徴は社会の規範とは折り合わないことも少なくなく、天才と言われる人々が異端視され、時に排除され、その業績は後世において再評価されれることがよくあることからもうなずけます。精神を侵されることなく、社会から逸脱することなく、創造性を発揮していくにはどうすればよいのか、その方法は引き続き考えてまいりたいと思います。

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