今どきの「電話応対が嫌な理由」で感じた悩ましさ
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私がいくつか執筆しているブログやコラムの中で、今まで何度か若手社員が電話応対を苦手としている話を書いたことがあります。
あるウェブ記事に、これらの話と少し関連するような、若手社員の電話応対に関するものがありました。私が感じていることとの共通点もありましたが、その記事の中に「若手社員が会社の電話を取ろうとしない理由」が挙げられており、そのうちのいくつかで、一概にダメ出しばかりはできない、悩ましい思いが交錯してしまうようなものがありました。
どんなことかというと、まず一つ目は、彼らにとって電話というのは、「知っている相手から自分あてにかかってくるもの」という認識であり、“知らない人” “会ったことがない人”からかかってきた電話で“いきなり話すこと”はあまりにもハードルが高いということです。
産まれた時から身の回りに携帯電話があり、幼少期からそれを使っていた世代ですから、他人の電話を取り次ぐ機会や経験はほとんどなかったでしょう。
ここまでは「なるほどそうだ」と思いますが、さらに本人たちが持っている意識として、家にある電話は基本的にセールスなどの無用な電話が大半であり、「ナンバーディスプレイを見て知らない番号には出ない」など、特に子どもは応対させないように教えている家庭もあって、そもそも“固定電話は自分が出るものではない”“勝手に出てはいけない”という認識なのだそうです。
確かに我が家でも、子供が小さい頃は「知らない番号からの電話には出なくて良い」などといっていたことがありますが、その意識を持ったまま成長すれば、よけいな電話には出る必要がない、出たくないと思ってしまうのは当たり前かもしれません。
さらに二つ目に挙げられていたものとして、電話というのは自分個人が使うか、共有するとしても家族や友人などの親しい間柄のときだけであり、会社で中高年の上司やその他の誰かが、口や耳を近づけていたものを触ることが生理的に嫌だと思ってしまう人がいるという話でした。
そう言われると、確かに会社の電話はいろいろな人が使いますし、受話器が耳に触れ、口を近づけて話すということでは、あまり清潔とは言えない気がしてしまいます。
臭いや汚れに敏感で、除菌グッズがたくさん売れる今の時代ですから、もしも自分の部下からこんなことを言われたとして、それでも「これは仕事だから我慢して電話に出ろ!」とは、少なくとも私はなかなか言えません。
こんな現状から見えるように、電話というコミュニケーションツールのパーソナル化は、これからもますます進んで行くと思います。そんな中で、会社としての電話の使い方も、今までのように「固定電話を複数の人で共用する」という方法は、考え直していく必要があるように思います。
ただこれも、「全社員に携帯電話を配る」などという単純なことではないと思います。会社に関係するコミュニケーションが、パーソナル化され過ぎてしまうことによる弊害もあるでしょう。
さらに、最近のテレビ電話機能の進歩はかなりのものですし、将来は電話機による音声通話というコミュニケーションそのものが廃れてしまう可能性があります。今までとは全く違う発想の技術が出てくるかもしれません。そうなれば電話応対という行為自体が不要になりますから、ここでの議論そのものが意味をなさなくなります。
時代の流れの速さを感じますが、こんな一見単純そうことでも、実はずいぶん工夫が必要な課題なのだと思っているところです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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