収益の計上時期(弁護士報酬事件地裁判決) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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収益の計上時期(弁護士報酬事件地裁判決)

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発表 実務に役立つ判例紹介
弁護士報酬の収入すべき時期について争われた
東京地裁平成20年1月31日判決(TAINSコードZ888-1306)
東京高裁平成20年10月30日判決(TAINSコードZ888-1376)
を検討したいと思います。

今日は、東京地裁を紹介します。

1.事案の概要
本件は、法律事務所を経営する弁護士である原告が、原告の事業所得に
係る弁護士報酬の額について、着手金、報酬金の収入時期について、
着手金の収入時期を人的役務の終了の時期に、報酬金の収入時期を
事件の処理が終了した後の合意の時期に、それぞれ計上していたところ、
税務署長は、委任契約時に着手金請求権が確定し、事件の処理が終了し
報酬金を請求したときに報酬金請求権が確定するとして、所得税及び
消費税について更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分を行った
ことから、処分の取消を求めて提訴されたものである。

2.東京地裁の判断
一.収入金額の計上時期
所得税法36条1項は、現実の収入がなくても、その収入の原因たる
権利が確定的に発生した場合には、その時点で所得の実現があったもの
として、同権利発生の時期に属する年度の課税を計算するという建前
(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される。これは
所得税が、経済的な利得を対象とするものであるから、実現された
収支によってもたらされる所得について課税するのが基本原則であり、
ただ、その課税に当たって常に現金収入の時まで課税できないとした
のでは、納税者の恣意を許し、課税の公平を期し難いので、徴税政策上の
技術的見地から、収入すべき権利の確定したときをとらえて課税する
こととしたものであり(最高裁昭和49年3月8日判決)、ここにいう
収入の原因となる権利が確定する時期はそれぞれの権利の特質を考慮
して決定されるべきである(最高裁昭和53年2月24日判決)。

二.着手金について
(1)被告は、原告の所属するA弁護士会の報酬規定によれば、着手金は
事件等の依頼を受けたとき支払を受けるものとされており、原告も、
依頼者との間で締結する民事事件又は刑事事件等の処理に関する委任契約
において、同旨の合意をしている。原告は、受任契約に基づき、受任契約
締結時において、依頼者に対して当該委任契約において定められた着手金
の全額を請求する権利を確定的に取得する、と主張する。
また、被告は、着手金が人的役務の提供の過程において発生するもの
ではなく、事件等の依頼を受けたときに支払を受ける性質の金員として
支払われるものであるから、たとえ分割払特約が付されたとしても、
それは単にその支払方法を定めたものにすぎず、委任契約締結時に既に
権利が確定しているというべきであるとも主張する。

(2)弁護士報酬のうち、着手金とは、事件等の性質上、委任事務処理の
結果に成功不成功があるものについて、その結果のいかんにかかわらず
受任時に受けるべき委任事務処理の対価をいうこと、及び、着手金は、
事件等の依頼を受けたときに支払を受けるものであることが認められる。
着手金は、ほかの種類の弁護士報酬と異なり、事件等のいかんにかかわらず、
委任事務処理が開始される前に支払を受けるものであり、その金額も受任時
に確定されることによれば、弁護士が依頼者から事件等を受任した時点で
収入の原因となる権利が確定するとみるのが自然である。

(3)これに対し、原告は、着手金は、事件の受任時に依頼者から
支払われるが、その性質は、委任事務処理の対価、すなわち、弁護士
としての人的役務の提供の対価であるから、着手金請求権は、事件等の
処理という人的役務の提供が完了するまで確定しないとして、着手金が
現実に支払われた時点で、収入として計上する慣習があり、また、
権利確定主義の解釈としても、着手金が現実に支払われた時点で収入
として計上するべきである旨主張する。

(4)本件全証拠によっても、このような会計処理が原告のみに
とどまらず弁護士全般によって行われている形跡はうかがわれない。
着手金について分割払の定めがあったとしても、それは単に着手金の
支払方法を定めたものにすぎず、受任時に支払われる金員であるという
着手金の本質を変更するものではなく、着手金に係る権利の確定時期を
左右するものではないというべきである。

三.概算実費について
原告は、破産免責申立事件等において、受任時に概算実費の支払を
受けているところ、これは、通常の郵券、交通費、送料等に充てることが
想定される金員で、事件終了後清算を予定されていないものであることが
認められる。
原告は、これについても、着手金と同様に、現実の支払があった時点で
収入として計上すべきである旨主張するが、同金員の支払が委任契約に
おいて確定するというべきであるから、受任時に収入として計上し、
また、同時点で資産の上とがあったと解するのが相当である。

四.報酬金について
(1)被告は、報酬金について、原告が受任契約上、依頼者との間で、
依頼者は事件が終了した時に、A弁護士会報酬規定に基づいて原告が
依頼者に請求する金額を報酬金として支払う旨の合意をしていることから、
受任義務に基づき、当該事件の処理が終了した後、原告が同報酬規定に
基づいて依頼者に報酬金を請求した時に、権利確定主義に照らして、
その金額は、当該請求の日の属する年分の収入金額に算入されるべきである
旨主張する。

(2)弁護士の報酬のうち、報酬金は事件等の性質上、委任事務処理の
結果に成功不成功があるものについて、その成功の程度に応じて受ける
委任事務処理の対価をいい、事件等の処理が終了したときに、それぞれ
支払を受けるものとされており、その額は、委任事務処理により確保した
経済的利益の額をそれぞれ基準として算定することが原則とされている
ことが認められる。
このことによれば、報酬金請求権は、委任事務処理が終了し、原告が依頼者
に対し報酬金を請求した時に、権利として確定するというべきである。

(3)原告は、報酬金は、成功結果が得られない限り取得できない報酬
であり、通常の場合、事件を着手する段階では確定しておらず、しかも、
多くの場合には「A弁護士会規定に基づく額」等の抽象的な定めしかなく、
事件が終了したからといって直ちに金額が自動的に確定するものではない
ため、事件完結時において、弁護士と依頼者との間で、事件の難易、
経済的利益、労力の程度、依頼者との関係等を踏まえ、成功結果の評価を
巡り報酬内容を確定するための協議が必要であり、報酬金額に関する合意
が成立しない限り、報酬金債権が確定したといえない旨主張する。

(4)しかし、証拠によれば、当時、各単位弁護士会において報酬規定
を定め、その中で、報酬金の原則的な算定方法を定めており、原告と
依頼者との契約で同規程を引用していたことが認められる。
報酬金は委任事務処理の成功の程度に応じて、同事務処理により確保した
経済的利益の額を基準として算定されるものであり、受任時にあらかじめ
具体的な金額を定めることが性質上困難であることを併せ考慮すると、
受任契約に報酬金額として具体的な金額を明示していなかったとしても、
当事者間には報酬金額を上記算定方法に従って決められた相当額にする
旨の合意があるというべきであり、したがって、報酬金請求権の内容は、
委任事務処理が終了し、弁護士が依頼者に対し報酬金を請求した時点で
確定されたものと考えられる。

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