電話による税務相談(東京高裁H19.2.27) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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電話による税務相談(東京高裁H19.2.27)

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発表 実務に役立つ判例紹介
電話による税務相談において担当職員が納税者に対して行った
回答と異なる内容の課税処分がなされた場合において、
当該回答は税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を
表示したものではなく、また、納税者自身にも慎重さに欠ける
ところがあり、当該回答に対する納税者の信頼は保護されないから、
当該課税処分は課税上の信義則に違反しないとされた
東京高裁平成19年2月27日判決(訟務月報54巻3号791頁)を紹介します。
TAINSで検索をかけたのですが、11月6日現在では見つけられませんでした。

本件は、千葉地裁平成17年12月13日判決、
東京高裁平成19年2月27日判決を経て、
最高裁に上告したが、平成19年6月26日、
上告棄却、不受理決定として納税者敗訴が確定している。


本件は、原告が租税特別措置法(平成13年改正前)41条の5の適用を
受けることができるものとして、平成11年に生じた居住用財産の
譲渡損失の金額の繰越控除を行って平成14年分の所得税の確定申告を
したところ、被告市川税務署長が、確定申告書に買換資産に係る
住宅借入金等の残高証明書が添付されていないため同条を適用する
ことはできないとして更正処分をしたことから、原告が、
被告市川税務署長に対して、上記確定申告は、事前に税務相談室に相談し、
本件繰越控除につき同条の適用がある旨の回答を得て、これを信頼して
行ったものであるから、本件処分は課税上の信義則に違反すると主張して、
その取消しを求めるとともに、被告国に対して、税務相談室による
誤った回答により、仮に本件繰越控除が認められた場合には還付を
受けることができたはずの源泉所得税の一部及び本件処分により納付
した所得税差引納付額に相当する額等の損害を受けたと主張して、
国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたものである。

本件では、原告は、東京国税局税務相談室川崎北分室に電話相談している。

1 事実の概要
(1)控訴人は、昭和62年12月24日ころ、A市所在のマンションの1室
(本件譲渡資産)を1億5144万円余で取得し、平成元年1月9日ころ、
これを九重のように供した。
(2)控訴人は、平成11年1月20日ころ、B市所在のマンションの1室
(本件買換資産)を7686万円で取得し、同日ころ、これを居住の用に
供し、その取得代金の一部5000万円(本件借入金)を借り入れた。
(3)控訴人は、平成11年7月8日ころ、本件譲渡資産を8060万円で譲渡した。
(4)控訴人は、平成11年分の所得税の確定申告の際、住所地を管轄する
緑税務署長に対し、上記譲渡について措置法41条の5を適用し、翌年以降
繰り越される居住用財産の譲渡損失に係る純損失の金額を4460万円余と
記載した確定申告書を提出した。
(5)控訴人は、平成14年7月、新しい勤務先への通勤時間を短縮するため、
本件買換資産からの転居を考え、C市所在の本件マンションの購入を検討した。
(6)控訴人は、平成14年9月12日、税務相談室に電話し、「現在、
租税特別措置法に基づく居住用住宅買換えの譲渡損失の繰越控除を受けて
3年目に当たるが、平成14年中に借入金残高を一括返済しても繰越控除を
受けられるか。」と相談した。これに対し、税務相談室の担当職員は、
「繰越控除の適用を新たに受けるには新住居の住宅ローンの存在が
要件だが、繰越控除の継続についてはローンの存在は要件とはなって
いないので、完済しても損失の繰越控除を継続して受けることができる」
と回答した。
(7)控訴人は、平成14年9月13日、電話で本件マンションの値下げ交渉
をし、同月20日に、現金一括であれば7500万円とする旨の回答を受けた
ので、同日付で購入の申し込みをし、同年10月3日、売買契約を締結した。
(8)控訴人は、平成14年10月31日、本件借入金の繰上げ一括返済を申請し、
同年11月15日、本件借入金を一括返済し、平成15年1月17日、本件マンションの
取得資金の一部5000万円を借り入れた。

2.裁判所の判断
一般に、税務相談は、税務署側で具体的な調査を行うこともなく、
相談者の申立てに基づき、その範囲内で、行政サービスとして納税申告
をする際の参考とするために一応の判断を示すものであって、仮に、
その相談が課税に関わる個別具体的なものであったとしても、その助言
どおりの納税申告をした場合には、その申告内容を是認することまでを
何ら意味するものではなく、最終的にいかなる納税申告をすべきかは、
納税義務者の判断と責任に任されていることを考慮すれば、税務相談に
おける回答ないし助言は、税務署長等の権限のある者の公式の表明と
解されるような特段の事情がない限り、信頼の基礎となる公的見解と
いうには不十分であるというべきである。
殊に、電話による税務相談は、不特定多数の者から、資料の提示を
受けることなくその申術する事実関係を前提として、納税申告につき
手続上の問題のみならず、課税要件の存否など実体上の問題についてまで、
口頭で相談され、短時間のうちに回答することを求められるものであり、
これらの判断資料や時間等の制約があることを考慮すると、その回答には
自ずと正確性に限界があることはやむを得ないものというべきであるから、
相談した者は、回答を1つの参考意見として受け止めるべきであるとする
のが相当であり、回答を絶対的なものとして信頼すべき特別な事情が
ない限り、その信頼は保護されないというべきである。


以上のような判示で納税者の主張をいずれも退けたのである。

本件のインパクトを我々税理士は重く受け止めなければならない。
おそらく本件は、近年の税務当局の税理士からの質問に対する対応の
方向性を決めてしまった判例の1つであろう。
横浜から市川に転居した納税者がなぜ川崎北税務署の税務相談室に
相談したのであろうか。
それも市川のほうが通勤に便利ということからの転居の方である。
考えられるのは、原告の顧問税理士が川崎の方だからであろう。

私が実務家として心掛けていることは、クライアントにリスクを
負わせないことである。そのために、本件のような、疑義がある
ケースでは、資料を用意して、所轄税務署に指導を仰ぐようにしている。
現在では、事前にアポを取って持参しないと、指導さえして頂けないが、
所轄で、全ての資料をお見せしての「指導」であれば、
公的見解をゲットできるからである。忙しい等の理由で電話相談を
なさる方が多かったのは事実であるが、サービスの一環として
情報提供しているにすぎない相談室への電話相談はあくまで参考意見
というのが、裁判所の見解である。

平和事件最高裁判決でも、当該事例を判決等に照らして検討しなければ
責任を免れない旨、判示されているではないか。
我々税理士はプロフェッショナルたる実力を維持し続けなければならないのである。

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