収益計上の時期(弁護士報酬事件高裁判決) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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収益計上の時期(弁護士報酬事件高裁判決)

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発表 実務に役立つ判例紹介
昨日は、弁護士報酬の収入計上時期についての地裁判決を紹介しました。
地裁では、納税者が完全敗訴してしまいました。
高裁ではどうだったのでしょうか。
今日は、東京高裁平成20年10月30日判決(TAINSコードZ888-1376)
を紹介し、収入計上時期について検討したいと思います。

1.高裁における控訴人の主張
権利確定主義は、形式的、発生主義的に理解されてはならず、担税力を
認め得る程度に所得が実現されたかどうかを具体的に検討する必要がある。
特に本件で問題となっているのは、ほとんどが多重債務者の事案であり、
上記の観点から具体的、かつ、慎重に検討されるべきである。上記のような
観点から所得税法の関係規定を解釈適用しなければ、憲法84条、29条
違反となる。

2.高裁の判断
当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないからこれを棄却するものと
判断する。その理由は、次のように補正し、当審における控訴人の主張に
対する判断を付加するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、
これを引用する。
(1)弁護士報酬についても、報酬支払請求権が確定的に発生した時期を
基準として収入すべき金額を計上して所得を算定すべきであり、報酬支払
請求権が確定的に発生した時期については、弁護士と依頼者との間で締結
される委任契約において定められた弁護士報酬支払時期その他の支払に
関する合意に基づいて判断すべきである。

(2)A弁護士会報酬規定は、A弁護士会の会員の報酬に関する標準を
示すことを目的とし(1条)、次のとおり定めていることが認められる。
すなわち、A弁護士会報酬規定は、会員がその職務に関して受ける
弁護士報酬及び実費等の標準はこの会規の定めるところによることとし
(2条)、弁護士報酬の支払時期について、着手金は、事件等の依頼を
受けたときに、報酬金は、事件等の処理が終了したときに、その他の
弁護士報酬は、この会規に特に定めのあるときはその規定に従い、特に
定めのないときは、依頼者との協議により定められたときに、それぞれ
支払を受けることとし(4条)、弁護士は、各依頼者に対し、弁護士報酬を
請求することができる(6条1項)と明示した上で、弁護士は、依頼者に
対し、あらかじめ弁護士報酬等について十分に説明しなければならない
こととし(7条1項)、弁護士は、事件等を受任したときは、委任契約書
を作成するよう努めなければならないこととし(同条2項)、委任契約書
には、事件等の表示、受任の範囲、弁護士報酬等の額及び支払時期その他
の特約事項を記載することとし(同条3項)、依頼者が経済的資力に乏しい
とき又は特別の事情があるときは、弁護士は、A弁護士会報酬規定4条及び
第2章ないし第7章の規定にかかわらず、弁護士報酬の支払時期を変更し
又はこれを減額若しくは免除することができることとしている(8条1項)。
したがって、A弁護士会の会員である弁護士は、依頼者が経済的資力に
乏しい場合又は特別の事情がある場合に弁護士報酬の支払時期をA弁護士会
報酬規定の上記の定めと異なる時期に変更する必要があると判断したときは、
弁護士と依頼者との間で委任契約を締結し、弁護士報酬の支払に関する
合意をするに当たり、弁護士報酬の支払時期について明示した上で上記の
合意をし、その内容を委任契約書に明記しておくことが相当である。
このことにより、弁護士が依頼者に対する説明義務を十分に果たすことに
なるほか、権利確定主義により収入を計上して所得を算定すべき法制の
下で適正な税務申告を行う上でも必要、かつ、相当な措置を執ることに
なるというべきである。

(3)A弁護士会の会員である弁護士は、依頼者が経済的資力に乏しい
場合又は特別の事情がある場合に弁護士報酬の支払時期をA弁護士会報酬
規定の上記定めと異なる時期に変更する必要があると判断したときは、
弁護士と依頼者との間で委任契約を締結し、弁護士報酬の支払に関する
合意をするに当たり、弁護士報酬の支払時期について明示した上で上記の
合意をし、その内容を委任契約書に明記しておくことが相当である。
しかるに、控訴人と依頼者との間で交わされていた委任契約書には、
弁護士報酬の支払時期について上記の趣旨に沿った特約をした旨の記載は
なく、そのような特約がされたことを認めるに足る的確な証拠はない。

(4)控訴人は、前記1の主張を骨子として本件に関して詳論するが、
これらの点に関する認定、判断は、前記引用に係る原判決(前記補正部分
を含む)が説示するとおりであり、控訴人の上記主張はいずれも採用する
ことができない。控訴人の違憲の主張はその前提を欠くものである。


以上のような判断から、高裁でも納税者全面敗訴となりましたが、
本件は最高裁へ上告中である。上告が受理されるか注目したい。

さて、本件は、弁護士の報酬に関する収入計上時期を争う事例であるが、
同様のケースは、税理士等、専門職業である他士業でも起こりうる。
我々税理士であれば、相続税案件における成功報酬のケースなどである。

私の個人的見解は、本件は契約書にはっきりA弁護士会報酬規定に従う
と明記している以上、逆転は難しいであろうと思います。
しかし、契約書に報酬の計算方法を明記せず、後日精算を謳っていたら
どうであろうか。依頼者との交渉に失敗し、後日法的手段に訴えて回収する
ことは困難になる可能性がありますが、この場合には、確定できる金額が
ない以上、調査に基づく課税処分をしようにも、税務署にとっても収入金額
を確定できないであろう。

権利確定主義は、地裁判決が一で判示しているように、最高裁昭和49年
判決と最高裁昭和56年判決により、年度帰属の原則として定着している。
原告は、年度帰属の基準として例外として取り扱われている管理支配基準が
適用される事例であると主張しているように思われる。

金子宏教授によれば(所得の年度帰属「所得概念の研究」所収)、
(1)横領や窃盗による不当な利得も、課税の対象となる所得を構成すると
解すべきであるが、それらは無効な利得であり、被害者に返還しなければ
ならないものであるから、それらの利得が利得者の管理支配の下に入った
場合に、所得として実現したと解すべき。
(2)契約が成立しその履行がなされ、または継続的役務提供契約に基づいて
役務の提供がなされている場合において、その対価について争いが生じた
場合には、その争いが和解なり確定判決なりを通じて最終的に決着したときに
権利が確定すると解すべき。
(3)農地の譲渡について知事の許可が必要な場合には、権利確定主義を
適用すれば、知事の許可がなされるまでは所得の実現はあり得ないが、
知事の許可に先立ち引渡と代金の授受が完了し、譲渡人が自らそれを所得と
して申告しているような場合には、管理支配基準を適用。
といわれている。

契約書の文面を無視して管理支配基準を適用することには、法的安定性の
見地から賛成できませんし、管理支配基準を全面に出すことは、納税者の
恣意を認めることにもなりかねないので、課税の公平の見地からも疑問です。

権利確定主義における収入計上時期の判定については、法人税法では、
22条2項を巡る数多くの判例が出てきています。22条2項以外の事実
認定が争われる事例も多いですが、その中から、明確な基準が明示されて
くるかもしれませんね。

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